2000年以降に出版され,胃疾患における拡大内視鏡の応用を述べた代表的な文献をレビューし,方法論的問題点について論述した.正常像については部位により微小血管構築像と粘膜表面微細構造は全く異なったパターンを呈していた.すなわち微小血管構築像については,胃体部ではregular honeycomb-like subepithelial capillary network (SECN) pattern with collecting venulesを,胃前庭部ではregular coil-shaped SECN patternを呈している.臨床応用は,Helicobacter胃炎の存在診断や胃炎の程度の診断の有用性が報告されている.早期胃癌の拡大内視鏡所見については分化型癌における微小血管構築像が特異的であった.すなわち癌部でregular SECN patternの消失,irregular microvascular patternの存在,境界部におけるdemarcation lineの存在の3つの所見が特徴像であり臨床応用可能であった.具体的には,特に従来の内視鏡で診断が困難なIIb,随伴IIb,微小癌の内視鏡診断ができる可能性が示唆された.また早期胃癌の術前範囲診断にも有用であり実際に臨床応用されている.胃粘膜の拡大観察が機器の進歩や観察法の改善により容易になった反面,さまざまな知見が報告され混乱を招いている.混乱を避けるためには,特に方法論において,胃粘膜微小血管構築像と胃粘膜鏡面微細構造(いわゆるピットパターン)を独立して解析する必要があると考えた.以上の点を整理して知見を重ねれば,胃粘膜における拡大内視鏡は新しい診断体系の一つになると考えられる.
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