症例は86歳,女性.食欲不振,下痢で入院.大腸内視鏡検査(CS)で直腸粘膜発赤のほか,肛門から2cmの部位に腟内へ内視鏡を容易に挿入し得る程の大きな腟瘻と,8cmの部位に膀胱壁に接する大きな深い瘻孔を認めた.瘻孔からの生検標本に核内封入体を認め抗サイトメガロウイルス(CMV)抗体免疫染色も陽性で,血清抗CMV抗体IgGとIgMが高値より瘻孔合併CMV直腸炎と診断した.抗HIV抗体陰性,CD4/8比正常.入院3週後に糞尿あり,CSで肛門から8cmの瘻孔の底に2個の5-8mm大の開口を認め,それらを介して膀胱内腔が観察された.経尿道膀胱造影で造影剤が膀胱から瘻孔(2,5×4cm)を経て直腸へ,さらに直腸から腟へ流れた.ganciclovir投与と横行結腸に人工肛門造設術施行.2カ月後膀胱造影で造影剤の漏れは認めず,3カ月後のCSでは腟瘻は縮小し膀胱瘻は治癒していた.直腸腟瘻と直腸膀胱瘻を合併した健常成人発症CMV直腸炎症例は稀である.
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