症例は80歳の男性.食欲不振,黒色便を主訴に上部消化器内視鏡検査施行し,胃噴門部のIII+IIc様病変(中分化型腺癌),胃前庭部には粘膜下腫瘍様隆起とそれに連続した十二指腸球部の2型病変(小細胞癌)を認めた.脳出血後遺症による左片麻痺があり,全身の衰弱によりベッド上生活が主で,手術による侵襲的な治療を希望されなかったため,S-1+CDDP療法を2クール施行し,両病変の著明な縮小を認めた.十二指腸小細胞癌(内分泌細胞癌)は非常に稀で,悪性度や転移率が高く,進行が速いため,全身状態が許せば一般的には腺癌と同様に手術による切除が第一選択とされているが,全身状態が不良な場合など手術による侵襲的治療が困難な症例に対しては,化学療法も考慮すべき有効な治療法と考えられた.
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