「生体内で生きている消化管粘膜上皮を細胞レベルで観察したい」という願いから,1996年より産学共同研究による超拡大内視鏡の開発に着手した.その結果これまでに2系統の器械の開発に至った.その1つは"Endomicroscopy"であり,レーザー共焦点顕微鏡を応用したカテーテル型プローブを作成することで,"無染色"での細胞レベルの画像の獲得に成功した.これによりプローブを粘膜面に接触させるだけで,腺管開口部(ピット)のみならず,細胞や核などの観察が可能となった.もう1つは"Endocytoscopy"であり,通常の光学レンズ系による超拡大内視鏡でcontactendoscopyの原理に基づく.当初,カテーテル型を作成した(多施設共同提案)が,現在では,endocytoscopyを通常の拡大内視鏡に搭載した一体型endocytoscopyを主に使用している.食道では,メチレンブルー単染色により細胞核のみならず核小体の観察も行え,細胞診に匹敵する高解像の明瞭な画像での観察が可能である.またこれまで画像描出が困難であった胃においても,クリスタルバイオレットとメチレンブルーによる2重染色(CM2重染色法)で,ヘマトキシリン・エオジン染色にほぼ匹敵する画像の獲得が可能となってきた.その結果,内視鏡的異型度診断が可能となり,得られた画像をECA-1からECA-5に分けて,ECA(Endocytoscopic diagnosis of tissue atypia)分類による5段階評価をおこなっている. これらの2種類の道具はそれぞれの特徴と発展の可能性を有しており,今後の展開が期待される.いつれにしても現在,生きた癌細胞の生体内での内視鏡観察は既に可能な時代となった.
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