:1991年より食道粘膜下腫瘍(平滑筋腫)27例に対して,食道内視鏡下に粘膜切開を先行させて水圧を利用して切除する方法を考案し,切除を行った.術前に超音波内視鏡を行って,粘膜下層由来の腫瘍で腫瘍外側に粘膜下層の高エコー層が存在することを確認しておく.処置用2チャンネル内視鏡を,オーバーチューブを介して食道内に挿入し,まず最:初に高周波針状メスで腫瘍直上の粘膜を十分切開し,腫瘍の表面を完全に露出する.その後に粘膜切開口を介して腫瘍を把持し,生理食塩水をフラッシュして,水圧により腫瘍と粘膜下結合組織を剥離し,腫瘍を食道内腔に完全に露出してから,腫瘍を把持鉗子で牽引し,高周波スネアで切除する.その後内視鏡クリップで切開粘膜を縫縮する.切除した腫瘍の大きさは0.8~4.5cm,平均1.8cmで,最大径4.5cmの紡錐形腫瘍を含め25例(92.6%)で1括完全摘出できた.切除後の潰瘍は粘膜をほとんど切除しないため全例1週間以内に治癒した.完全切除できた25例では再発を認めていない.合併症は長径2.4cmの1例に縦隔気腫を生じたが,5日間の絶食で治癒した.食道粘膜下腫瘍に対する内視鏡下核出術のポイントは,超音波内視鏡により腫瘍外側と固有筋層の間に高エコー層を確認しておく必要があり,必ず粘膜切開を先行させて腫瘍表面を十分露出しておくことが肝要である.
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