上部消化管内視鏡検査は経口挿入(経口法)が一般的に行われてきたが,咽頭・喉頭部の違和感や嘔吐反射の出現などの理由から,検査を受けることに消極的な人も多い.経鼻挿入による内視鏡検査(経鼻法)は挿入率が高いうえ,嘔気・嘔吐が少なく,これらの問題点をある程度克服したと言えるが,鼻腔の疼痛や鼻出血の出現など不利益な面も存在している.しかし,鼻腔の疼痛は軽いものが多く,鼻出血の頻度は低率であるのに加え,その量も少なく,経鼻法は安全で有用な検査法になり得ると考えられる.現時点における経鼻法の位置づけは鉗子口が狭いため生検鉗子は使用できるものの治療に必要な処置具は使用出来ず診断に限られる.今後,経鼻法は胃がん検診や人間ドックへの導入のほか,イレウスチューブ挿入や胃瘻造設,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissec-tion;ESD)治療などの補助など,幅広い臨床応用が期待される.
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