ペプシノゲン(PG)法の精度や胃がん死亡率減少効果の研究を行ってきた.これまでの研究成果をふまえ,胃がん対策としての総合的な経済学的評価を行った上で,胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーによる経済的でかつ胃がん死亡減少をもたらすマネージメント方法を提案した.方法および結果;(1)PG法による胃がん検診実施地域の資料をもとに,観察的手法である症例・対照研究(13年間遡及)で,PG法単独による胃がん死亡率減少効果を確認できた.(2)PG法,X線法(DR)併用胃がん検診を行い,PG法とX線法の精度および費用対効果の検討で,PG法の精度は直接X線法とはほぼ同等であること,およびPG法とX線検査を組み合わせる検診方法の合理性・有用性が示された.(3)Helicobacter pylori(Hp)抗体価・PG法併用胃がん検診(健常人男性10年間追跡)での年率胃がん発生数およびハザード比の検討で,Hp感染のない群(A群:Hp(-),PG(-))から胃がん発生が10年間みられず,A群を低リスク群として胃がん検診対象から外し,萎縮性胃炎合併症群(B,C,D群)を選択的にスクリーニングする胃がん検診の合理性が示された.また,B群:Hp(+),PG(-),C群:Hp(+),PG(+),D群:Hp(-),PG(+)(胃がん発生リスク)別の最適な検診間隔は,研究班での検討結果からそれぞれA群で5年,B群で3年,C群で2年,D群で1年に1回が妥当と考えられた.今後は,このHp・PG併用胃がん検診(ABCD検:診)を全国的に推進・普及させることで,胃がん検診の効率化がなされ,経済的でかつ胃がん死亡減少をもたらす胃がん検診となることが強く期待される.結論;胃がん対策として推奨する胃がん検診方式は,「一次スクリーニングはHp抗体測定とPG法で行い,二次スクリーニングは内視鏡(極細径や経鼻)検査」である.
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