日本消化器内視鏡学会雑誌
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50 巻, 12 号
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  • 丹羽 寃文
    2008 年 50 巻 12 号 p. 2987-3009
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     硬性胃鏡はKussmaul(1868)の検討にはじまるが,硬性胃鏡,軟性胃鏡の時代は100年にも満たない短期間であった.初期には白熱白金線を光源としたTrouve,Nitze-Leiter,Mikulicz(1881)などの胃鏡が試みられ,特にMikuliczの胃鏡はかなり良く見えたという.19世紀末から20世紀始めに掛けて,Rosen-heim(1895),Rewidzoff(1897),Kelling(1897),Kuttner(1897),Jackson(1907),LoeningおよびStieda(1908),SouttarおよびThompson(1908),Hill(1911),Rovsing(1908),Kolliker(1909)などにより多種多様の硬性胃鏡が試みられ,その後のElsner(1909)の胃鏡は,かなり有用であった.さらにSussman(1911),Steinberg(1921),Schindler(1923),Korbsch(1925),Hubner(1926)らの硬性胃鏡があるが,Schindlerのものがもっとも広く用いられた. さらに1932年になってWolfおよびSchindlerにより多少の屈曲が可能な軟性胃鏡が作られた.この胃鏡は欧米では広く用いられ消化器病医とはすなわちこの胃鏡の専門家であったが,本邦では胃鏡検査を行っていた施設は極めて少数であった. 胃鏡による観察が可能となると,生検も試みられ,Kenamore(1940),Benedict(1948),Debray(1962)らの生検用胃鏡が発表されている. 本論文では,硬性胃鏡の初期から軟性胃鏡の終わりに至るまでの各種の機器の開発,関連した事項を紹介してみた.
  • 藤沼 澄夫, 掛村 忠義, 佐藤 浩一郎, 飯田 努, 三枝 善伯, 平畑 光一, 鴫山 文子, 古畑 司, 前谷 容
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3010-3018
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    直腸粘膜脱症候群は排便時の過度のいきみにより,直腸粘膜が機械的刺激や虚血性変化を受け,直腸粘膜に隆起性病変,平坦発赤病変や潰瘍性病変を生じる疾患である.臨床的には悪性腫瘍と誤認されることがあるので鑑別が重要である.過度のいきみを行う理由として,排便習慣の他に,恥骨直腸筋の奇異性収縮も要因となっている.症状としては血便が一般的であるが,粘液排泄,会陰痛,テネスムスなどもある.隆起性病変は主に直腸下部にみられ,平坦病変や潰瘍性病変は中部または上部直腸にみられやすい.大きさは様々であり形態学的に本症を診断するが,直腸肛門機能検査や排便造影検査が診断の手助けとなることもある.病理組織学的には線維筋症(fibromuscular obliteration)が特徴であり,平滑筋線維と膠原線維の増生が粘膜固有層において著明にみられる.治療はまず保存的治療を行い,いきみ習慣の改善を第一とする.トイレで過こす時間を最小限にとどめ,排便時のいきみを控えるように指導するとともに緩下剤などの薬物治療を行う.外科的治療は保存的治療を行っても症状に悩ませ続けている患者,または難治性MPSと考えられる症例にのみ考慮されるが,種々の術式により予後は報告者によって異なっている.
  • 上田 和樹, 玉井 秀幸, 前田 浩輝, 中沢 和之, 有井 研司, 柳岡 公彦, 岡 政志, 一瀬 雅夫
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3019-3026
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】ショートガイドワイヤーを用いた治療的ERCPは,被爆,施行時間を短縮し,手狭な場所,少ない人員での施行を可能とするなどの利点を持つ.しかし,ENBDは,このシステムでは施行出来ない.そこで,ショートガイドワイヤー対応のENBDチューブの作成を試みた.【方法】チューブに側孔を空け,ショートガイドワイヤーを用いてENBD可能とした.側孔部の耐久性を調べるために,各サイズチューブに孔を空け,牽引試験を行った.さらに,チューブの使用安全性を検討するため,15例の患者に対しこの方法を施行した.【結果】検討したいずれのサイズでもJIS引張強度基準を十分満たしていた.全症例でチューブ閉塞や逸脱,破損なく,またドレナージ,造影にも問題なく施行できた.【結論】今後ショートガイドワイヤーを用いた治療的ERCPが,本ENBDチューブを使用する事により,我が国で広く普及して行くものと期待される.
  • 西田 宏二, 森田 秀祐, 阿座上 聖史, 知念 正明, 杉原 甫, 渡辺 恵子
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3027-3032
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性.貧血精査のため近医にて胃X線検査,上部消化管内視鏡検査,生検組織検査を施行され,前庭部大彎に径10mmの胃過形成性ポリープを診断された.貧血の原因となる可能性があるため,当院へ紹介となり内視鏡的粘膜下層剥離術にて切除した.切除病変は胃型高分化型管状腺癌であった.一部に異型のない過形成性ポリープ成分も認め,胃過形成性ポリープより発生したものと思われた.
  • 原田 拓, 井上 龍二, 有馬 志穂, 黒木 和男, 田原 良博, 三池 忠, 安倍 弘生, 山本 章二朗, 楠元 寿典, 蓮池 悟, 永田 ...
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3033-3039
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    87歳,女性.上部消化管内視鏡検査にて2個の柿胃石を認めた.非常に硬く内視鏡的破砕が困難であり経過観察としたところ,胃前庭部に胃石が嵌頓,閉塞症状をきたした.コカ・コーラ(R)による溶解療法を施行したところ,翌日には嵌頓した胃石は軟化し,内視鏡的に嵌頓を解除できた.残りの胃石も翌々日には消失した.内視鏡的治療の困難な柿胃石に対してコーラによる溶解療法は非常に有効な治療法であると考えられた.
  • 瀬戸口 智彦, 田中 達郎, 今野 弘之, 川端 俊貴, 山本 真義, 近藤 賢司, 太田 学, 神谷 欣志, 馬場 恵
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3040-3047
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性で主訴は黒色便.十二指腸腫瘍で外科手術を勧められたが内視鏡治療を希望し当院を受診.内視鏡検査で球部に基部を有し先端が水平部に及ぶ長径60mmの腫瘤性病変を認めた.弾性軟の粘膜下腫瘍でBrunner腺過形成と診断.スネアーを茎部にかけポリペクトミーを施行した.十二指腸腫瘤に対する外科的切除は重篤な合併症の危険性もあり,正確な診断と適応に基づいて内視鏡切除を積極的に試みるべきである.
  • 土肥 統, 十亀 義生, 谷口 淳子, 赤松 尚明
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3048-3053
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.主訴は血便.突然の大量血便を認め,救急外来を受診した.腹部造影CT検査にて,回腸末端よりやや口側の回腸に造影剤の管腔内漏出を認め,緊急下部消化管内視鏡検査を施行した.回盲弁より約30cm口側の回腸に小さな潰瘍と拍動性の出血を伴う露出血管を認めDieulafoy型潰瘍と診断し,クリップ法にて止血した.内視鏡的に止血しえた小腸Dieulafoy型潰瘍の報告は稀である.
  • 宮瀬 志保, 原岡 克樹, 森下 裕子, 浦田 淳資, 宮瀬 秀一, 伊藤 隆明, 藤山 重俊
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3054-3061
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.黄疸と体重減少で来院.CTで軽度の胆管拡張がみられたが膵腫大はなかった.ERCPで末梢胆管から総胆管に多発する狭窄と拡張,主膵管に軽度の狭細像と硬化像を認めた.膵腫大を伴わないIgG4関連硬化性胆管炎や原発性硬化性胆管炎(PSC)などを疑ったが,高IgG4血症や胆管壁のIgG4陽性形質細胞浸潤より前者と診断した.本疾患はPSCとの鑑別が問題となるが,本例はERCP,血清学的ならびに組織学的所見より診断可能であった.
  • 本橋 修, 西村 賢, 柳田 直毅, 高木 精一, 中山 昇典, 亀田 陽一
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3062-3067
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的食道粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)に求められる安全性・確実性・簡便性の向上を追及し,粘膜把持鉗子用チャンネル付き透明フードを試作し,これを早期食道癌5症例に使用してその有用性を認めた. このESD補助器具使用による利点を列挙する.(1)剥離粘膜を把持し挙上させ,さらに反転させて後方に押すことで,粘膜剥離面を直視下に観察することがより容易となり,止血および血管処理が容易となり,剥離操作時穿孔の危険性をなくした.(2)剥離面の粘膜下組織に確実なカウンタートラクションをかけることができ,剥離時間を短縮した.(3)剥離時の粘膜把持と後方に押す操作だけでフックナイフを使用することなく粘膜下層を剥離することも可能で,出血はほとんどなかった.特に,(4)この切開した粘膜把持と切開粘膜口側にフードを接着させる2点固定の操作は,呼吸や拍動の影響を減じ,剥離部と処置具の距離を一定とし,安全な食道粘膜剥離操作を可能にした.
  • 辰巳 嘉英, 原田  明子, 松本 貴弘, 谷 知子, 西田 博
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3068-3073
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    【目的】経鼻内視鏡初回受診者に対するクリティカルパス(パス)の検査理解や不安軽減に対する有用性を検討した.【対象と方法】83人の経鼻内視鏡初回受診者にパスにて説明を行い,経口内視鏡の経験別に(有69人,無14人)理解度・不安度を調査した.【結果】経口内視鏡経験に関わらず検査への理解が得られ,不安度にも差はなかった.【結語】パスは経鼻内視鏡初回受診者の説明に有用と考えられた.
  • 伊藤 正祐, 曽我 良平, 竹政 伊知朗
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3074-3075
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 辰巳 嘉英, 原田 明子, 松本 貴弘, 谷 知子, 西田 博
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3076-3088
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年,苦痛の少ない内視鏡として経鼻内視鏡による上部消化管スクリーニング検査が増加傾向にある.スクリーニング検査における内視鏡を安全で質の高いものとするため,検査前問診やインフォームドコンセントを系統的かつ確実に行うシステム確立が重要である.筆者は硝酸ナファゾリンの点鼻の後,1本スティック法による2分間鼻腔麻酔を行っている.経鼻挿入の習得には,鼻中隔の方向を記憶し,上下反転した解剖図で鼻腔や咽頭の挿入ルートをイメージすることが理解を助ける.経鼻挿入が困難な際は,無理せず経口挿入に変更する.消化管観察では,遠景で顕著となる光量や解像度の不足,視野角の狭さを認識し,適切な観察距離の保持と慎重な観察を心がける.経鼻内視鏡による上部消化管スクリーニング検査においては,できる限り検査精度の向上をはかると共に,適切なインフォームドコンセントとなるよう内容や方法に配慮する必要がある.
  • 森 昭裕, 大橋 憲嗣, 丸山 貴子, 建部 英春, 酒井 勝央, 渋谷 高志, 井上 洋, 奥野 正隆
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3089-3094
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    【目的】細径内視鏡を用いた経鼻的挿入法は,従来型内視鏡を用いた経口的挿入法と比べ身体的負担が小さい.しかし,この差は内視鏡径の違いによる結果かもしれない.本研究では同一細径内視鏡を用い患者受容性と循環動態変動を経鼻的挿入法経口的挿入法で比較した.【方法】EGD施行予定1,147例を対象とし,一部ランダム化患者重視デザインでどちらの挿入法でも良いと答えた患者をランダムに経鼻的挿入法(ランダム経鼻群),経口的挿入法(ランダム経口群)に分け,血圧,脈拍,SpO,の検査前値に対する変化値,受容性について検討した.【結果】ランダム経鼻群74例,ランダム経口群75例で検討.検査中,検査終了後ともに血圧はランダム経鼻群と比ベランダム経口群で有意に上昇した,脈拍は両群で上昇したが両群問で有意差はなかった.SpOzは両群共わずかな変動であった.受容性はランダム経鼻群で有意に高かった.【結論】同一細径内視鏡を使用しても,経鼻的挿入法は経口的挿入法と比べ検査の受容性は高く,循環動態へ与える影響は少ない検査法である.
  • 責任者:山野 泰穂
    黒田 浩平
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3095-3098
    発行日: 2008年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    2008 年 50 巻 12 号 p. 3104-3106
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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