【背景】胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia:GAVE)は胃前庭部を中心にびまん性に血管拡張所見を認める病態で,消化管出血の原因となる.アルゴンプラズマ凝固法(argon plasma coagulation: APC)は短時間に広い範囲を凝固でき,表在性漏出性出血で面積を有する病変に対する処置に有用である.今回,APCで治療したGAVEの長期経過を検討した.【対象と方法】消化管出.血所見を呈しAPCで止血治療を行ったGAVE22例で,男性10例,女性12例,平均年齢は65.8±7.7歳,内視鏡所見はdiffuse typel9例,watermelon type3例であった.週1回の治療を基本とし,初期治療(病変の消失と貧血の進行抑制を確認)後の累積非再発率,予後等を検討した.【結果】総治療回数は4.0回(2~9回)で,観察期間は23.5カ月であった(いずれも中央値).累積非再発率は1年49.7%,2年35.5%,3年35.5%であった.治療後の生存率は1年94.4%,2年75。8%,3年64.9%であった.APCによる合併症は認めなかった.【結論】APCはGAVEからの漏出出血に対する一時止血法として有効である.長期経過は必ずしも良好ではなく,薬物療法,輸血,基礎疾患のコントロールが必要である.
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