早期胃癌の日本消化器内視鏡学会分類は,現在広く用いられているが,その成立の経緯を詳しく述べてみた.早期胃癌の定義並びにその分類は昭和37年の第4回日本内視鏡学会総会に際し,会長であった田坂の宿題報告として発表された.この報告の為に村上を長とした多くの専門家から構成された委員会が作られ,全国主要施設より提供された早期の癌と思われる症例の摘出標本の肉眼所見,術前の胃カメラ像,X線像を詳細に検討し,厳しい討議を経て早期胃癌の定義が決定され,さらに分類が出来上がった.当初は隆起型,表面陥凹型,陥凹型という表現を主体にしたが,これらの用語は将来変更の可能性もあることから,同時に符号I,II,III型が付加された.しかしこれが便利だった為検討が進むにつれ,この用語が多用され現在に至っている. 早期胃癌の定義としては東大第2外科で根治手術が行われた連続202例の胃癌症例について,その組織所見と遠隔成績を詳細に検討した佐伯の論文をより所とし,それを元に全国から寄せられた症例を詳細に検討し,粘膜,粘膜下層までの浸潤度の胃癌を早期胃癌とすることが決められ,その様相が明らかにされた.さらに個々の症例の胃カメラ像を詳細に検討し,各型特にIICの内視鏡的特長を明らかにし,早期胃癌の胃カメラ診断の基礎が築かれた.
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