日本消化器内視鏡学会雑誌
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50 巻, 8 号
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  • 藤井 久男
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1699-1710
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    欧米では比較的古くから炎症性腸疾患が大腸癌の高リスク群であることが知られていたが,わが国においても患者数が漸増し,長期経過例が増えてくるにつれ臨床上大きな問題となってきた.潰瘍性大腸炎(UC)については,発症から8~10年経過後の全大腸炎型と左側大腸炎を対象に,癌またはdysplasiaを早期に発見する目的で,サーベイランスプログラムが提唱されている.欧米では炎症のある粘膜を背景とした平坦なdysplasiaは内視鏡で発見しがたいとして,30個を超える生検を行うrandom biopsyが行われてきた.しかし,拡大色素内視鏡によりdysplasia/cancerを認識できる可能性が増してきたので,疑わしき病変を選択的に狙撃生検する方法が検討されている.サーベイランスの結果,high-grade dysplasia(HGD)やdysplasia-associated lesion or mass(DALM)が発見されれば大腸切除が勧められるが,low-grade dysplasia(LGD)の対処については意見が分かれており,消化器病医の理解もまだ不十分である.  外科治療は大腸を亜全摘し,回腸嚢を作成して,肛門管上縁もしくは歯状線部で吻合する自然肛門温存術(IPAA)が広く行われ,成績も満足すべきものである.しかし,IPAA後にも少数例ながらdysplasia/cancerが報告されており,大腸切除後も定期検診を続けるべきである.早期癌の予後は一般の大腸癌と変わらず良好なので患者のみならず臨床医の啓発がサーベイランスを成功に導く鍵になる.
  • 宮岡 洋一, 角田 恵理奈, 多田 育賢, 深澤 厚輔, 宇野 吾一, 串山 義則, 藤代 浩史, 高下 成明, 今岡 友紀, 長岡 三郎
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1711-1717
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.発熱,全身倦怠感心窩部痛を主訴に当院受診.血液生化学検査で閉塞性黄疸,胆管炎,膵炎が疑われた.画像所見では総胆管下部から乳頭部胆管に15mm程度の腫瘤を認めた.さらに十二指腸乳頭部にはびらんを有し,生検では高分化型腺癌を認めた.胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し,術後標本から十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌と診断した.本組織型は比較的稀であり,今後の経過観察に関しても重要であるため,文献的考察も加え報告する.
  • 畑 泰司, 大植 雅之, 池田 公正, 中塚 伸一, 塚原 康生
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1718-1722
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性.16歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,近医にて経過観察されていた.右季肋部痛を自覚し精査したところ,最終的に虫垂癌+多発肝転移との確定診断を得た.潰瘍性大腸炎では大腸癌の合併が高率に見られるためサーベイランスが行われている.しかし虫垂の変化は内視鏡での観察が困難であり盲点になりやすい.早期に虫垂癌を発見するためには本疾患も念頭に置いたサーベイランスが必要と思われた.
  • 畦元 亮作, 院去 崇, 吉田 有, 秦佐 智雄, 太和田 暁之, 大部 誠道, 佐藤 恒信, 駒 嘉宏, 藤森 基次
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1723-1728
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は90歳,女性.胸痛・嘔吐を主訴に入院した.CT,上部消化管内視鏡検査で胆嚢十二指腸瘻から脱出した胆石を認め,幽門狭窄様症状を呈したBouveret症候群と診断した.送水機能付き内視鏡直視下に電気水圧衝撃波砕石術で一期的な完全砕石が可能であった.上部消化管に脱出した胆石に対する先端フードキャップを装着した送水機能付き内視鏡直視下の電気水圧衝撃波砕石術は,視野が良好にとれて安全かつ容易に処置ができ,有用性が高いと考えた.
  • 山崎 智朗, 木幡 幸恵, 森本 謙一, 佐々木 英二, 倉井 修, 根引 浩子, 平田 啓一郎, 堀 武治, 高塚 聡, 池原 照幸
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1729-1735
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性.主訴は心窩部痛と嘔気.血液検査で肝胆道系酵素とビリルビンの上昇を認め,CT検査で総胆管と胆嚢内に鏡面像を呈する高吸収域を認めた.総胆管に流出した石灰乳胆汁による閉塞性黄疸と診断し,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行い,石灰乳胆汁を排出した.若年男性に発症した石灰乳胆汁はまれであり,また今回総胆管へ流出した石灰乳胆汁の治療にESTが有用であったので報告した.
  • 千葉 秀幸, 窪田 賢輔, 米田 正人, 阿部 泰伸, 稲森 正彦, 斎藤 聡, 中島 淳, 野村 直人, 嶋田 紘, 大城 久, 稲山 嘉 ...
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1736-1742
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.主訴は腹痛.CTで膵頭部腫大を,内視鏡的逆行性胆管膵管造影では主乳頭は腫大し,主膵管の狭細像を認め,尾側膵管は拡張していた.血清lgG4値は601mg/dlであった.膵生検でLymphoplasmacytic screlosing pancreatitisを認め,自己免疫性膵炎と診断した.一方,上部消化管内視鏡検査で早期胃癌を認めた.胃切除を先行し術後にステロイド治療を行い画像所見,血液データの改善を認めた.また十二指腸乳頭部生検で間質にIgG4陽性形質細胞を認め,自己免疫性膵炎の補助診断としての有用性が示唆された.
  • 虻江 誠, 鈴木 雅貴, 小野寺 博義, 鈴木 眞一, 萱場 佳郎, 加賀谷 浩文, 野口 哲也, 菊地 徹, 内海 潔, 藤谷 恒明, 山 ...
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1743-1751
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.2003年6月より膵頭部のmacrocystic dominant typeの膵漿液性嚢胞腺腫の診断にて経過観察をしていた.2006年3月に嚢胞径の縮小,壁肥厚及び結節様所見を認め,悪性化も否定できなかったため幽門温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には漿液性嚢胞腺腫で悪性像を認めず,厚い線維性組織からなる嚢胞壁とコレステリン結晶及び出血を認めた.膵漿液性嚢胞腺腫において嚢胞内に出血をきたし,嚢胞径が縮小した例は稀であり,報告する.
  • 海野 洋, 中村 喜行
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1752-1753
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 斎藤 彰一, 田尻 久雄, 池上 雅博
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1754-1763
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡観察は通常観察・画像強調観察・拡大内視鏡観察・顕微内視鏡観察に分類される.そのうち画像強調観察は光学法・デジタル法・光デジタル法・色素法に亜分類され,今回詳述するNarrow Band Imaging(NBI)とAuto-Fluorescence Imaging(AFI)は光デジタル法にあたり,その他の観察法とは異なる点が重要である.NBIは光源フィルターを狭帯域に設定することでヘモグロビン吸収領域に設定され,粘膜表層の毛細血管を中心に観察される.画像の切り替えは手元のボタン操作一つで容易に行うことが可能で,複雑な手技は必要ない.観察は通常白色光から行い,色素撒布前に行うことが望ましい.観察の際に病変部の水洗で出血をさせないように注意する.また拡大観察はpit pattern観察と同様弱拡大から行い強拡大へと移行する.NBI観察の有用性は病変の拾い上げ,腫瘍一非腫瘍の鑑別に有用とする報告がなされてきている.微小血管模様から見た深達度診断においては,各施設における分類が様々で,その有用性においては,今後の更なる検討が必要である.一方,AFIは現在,電子スコープに搭載された青色励起光と緑色光を回転フィルターに設置し,粘膜面から発せられた自家蛍光像を撮像し,再構築してAFI画像としてモニター上に描出している.AFI観察もボタン操作一つで画面の切り替えが可能である.AFI画像下では腫瘍性病変および活動期における炎症性粘膜はマゼンタ(赤紫)調に描出されるのに対して,正常周囲粘膜では深緑色に描出される.以上から,腫瘍一非腫瘍の鑑別が瞬時にして把握され,AFI観察が有用と考えられる.
  • 神澤 輝実
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1764-1768
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    副乳頭に対する診断および治療を目的とした標準的な内視鏡的アプローチに付き説明した.ERCPの際主乳頭から膵管系が全くまたは一部のみしか造影されなかった時は,副乳頭からの造影は,膵管系への第二のアフローチとして有用なことがある.副乳頭のカニュレーションには,繊細な技術が必要である.副乳頭の開口部は通常小さいので,副乳頭造影には針状カテーテルが有用なことが多い.膵管癒合不全例における副乳頭造影は,重症急性膵炎を惹起する可能性があるので,細心の注意が必要である.膵管癒合不全例では,副乳頭の開ロ部が小さいことによる背側膵管内圧の上昇が起こり,急性再発性膵炎,慢性膵炎や膵炎様疼痛などの臨床徴候を呈することがある.急性再発性膵炎を呈する膵管癒合不全例は,背側膵管内圧を低下させる内視鏡的副乳頭切開術やステント留置術の最も良い適応である.
  • 責任者:永井 完治,金子 和弘
    池松 弘朗
    2008 年 50 巻 8 号 p. 1769-1771
    発行日: 2008年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
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