電子スコープの進歩について,スクリーニング検査の立場から精密診断の観点を含めて,機器開発の動向と今後の新たな発展について概説した.患者の負担軽減という方向では,限りなく細径化が追求される.安全で苦痛の少ない内視鏡検査法のひとつとして,経鼻挿入可能な極細径電子スコープが開発され,広く普及しつつある.一方,超小型CCDの採用で,胆管,膵管の診断治療を目的とした超極細ビデオスコープも市販され,消化管汎用スコープ並の高画質画像が得られている. 現在,使用している拡大電子内視鏡は,汎用電子内視鏡と同様の外径と操作性を有しており,ルーチンの内視鏡検査として使用できる.とくに狭帯域フィルター内視鏡(Narrow Band Imaging;NBI)システムが開発され,拡大内視鏡と併用することにより,咽頭領域や消化管の内視鏡診断が飛躍的に進歩している.2002年に世界初のHi-Vision電子内視鏡が市場に登場し,従来の内視鏡と比較して明らかに高画質となった.Hi-Vision関連技術は,次世代技術として急速に技術開発が進んでいる. 内視鏡発展の歴史を振り返ると,内視鏡は診断から治療へとその適応が拡大されるにしたがい,広く普及してきた.処置能,操作性を向上させるための様々な電子内視鏡関連技術の開発改良が行われている.今後,治療内視鏡のさらなる普及により,内視鏡医療は多面的に発展していくが,そのためにわが国で取り組むべき重要な課題は,前向き多施設共同研究,産学協同研究の推進と医工連携の強化である.
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