日本消化器内視鏡学会雑誌
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51 巻, 12 号
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総説
  • 吉田 智治, 白石 慶
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3051-3062
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    高齢化につれて脳・心血管疾患を有する症例が増加している.脳・心血管疾患において抗血栓療法は大変重要であり,血管イベントの二次予防目的に抗血小板薬を投与されている症例も多い.なかでも頻用されている低用量アスピリンは,食道,胃,十二指腸,小腸,大腸にいたる全消化管の粘膜傷害を引き起こす可能性がある.この消化管粘膜傷害は,出血や穿孔を合併し時に致命的となりうるため,適切な対策が急務である.
    また,消化管出血に伴い,低用量アスピリンなどの抗血小板薬を休薬中に,重篤な血栓塞栓症を合併した症例も経験される.よって,迅速かつ適切な内視鏡的止血を達成し,早急に抗血小板薬を再開することが求められる.
    この様な抗血小板薬と消化管傷害に関する情報は,消化器科医のみならず,抗血小板薬の処方医も共有し,各診療科が連携を取りつつ症例毎に適切な抗血小板薬の投与ならびに消化管病変の発生予防,発生時の対処を行うべきであると考えられた.
原著
  • 熊野 秀俊, 冨樫 一智, 堀江 久永, 清水 徹一郎, 栗田 真紀子, 田中 宏幸, 巷野 佳彦, 濱田 徹, 鯉沼 広治, 宮倉 安幸, ...
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3063-3069
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】10mm以下の大腸SM深部浸潤癌が,内視鏡所見から診断できるか検討すること.【方法】当施設で大腸内視鏡検査が行われ,切除標本の病理組織検査で,腫瘍径10mm以下,SM深部浸潤(1,000μm以上)癌と診断された9病変を対象とし,その内視鏡写真を評価した.通常内視鏡所見では,明らかな陥凹,襞のひきつれ,表面凹凸不整,潰瘍・びらん,易出血性,緊満感の有無,拡大内視鏡所見ではピットパターンを評価項目とした.【結果】明らかな陥凹5例(56%),襞のひきつれ4例(44%),表面凹凸不整5例(56%),潰瘍・びらん2例(22%),易出血性3例(33%),緊満感3例(33%)を認めた.拡大観察では7例中4例(57%)にVN型ピットを認めた.9病変中8病変でいずれかの内視鏡所見が陽性であった.【結論】10mm以下のSM深部浸潤癌の多くは,通常内視鏡観察と拡大観察により診断可能と考えられた.
症例
  • 中谷 雅美, 藤原 靖弘, 永見 康明, 亀田 夏彦, 町田 浩久, 岡崎 博俊, 渡辺 俊雄, 富永 和作, 大澤 政彦, 荒川 哲男
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3070-3077
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代の男性.食欲低下と高熱の精査のため行われた上部消化管内視鏡検査で,厚い白苔を伴う一部隆起を伴う潰瘍性病変をみとめた.生検病理所見にて悪性リンパ腫Diffuse Large B Cell Lymphoma(DLBCL)と診断した.胸部CT検査,PET検査にて病変の主座は食道にあり,左鎖骨上,縦隔リンパ節に転移をみとめた.以上より,原発性食道悪性リンパ腫,Musshoff分類Stage II E2と診断した.標準的CHOP-R(Cyclophosphamide,Hydroxydau-norubicin,Oncovin,Prednisone and Rituxi-mab)を6クール施行し,完全寛解を得た.13カ月経過した現在も再発や転移なく,経過順調である.
    今回,われわれは比較的稀な化学療法が奏功した食道悪性リンパ腫を経験したので,本邦報告38例について文献的考察を加えて検討した.
  • 佐藤 俊大, 小林 正明, 五十川 正人, 竹内 学, 成澤 林太郎, 青柳 豊, 加藤 卓, 味岡 洋一, 柳 雅彦, 高橋 達
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3078-3084
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性,前医のドック上部消化管内視鏡検査で,胸部下部食道に強発赤を呈する粘膜下腫瘍様の小隆起性病変が認められ,生検でカルチノイドと診断された.当科に紹介受診となり,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した.組織学的にはカルチノイド,深達度は粘膜固有層,水平断端,垂直断端はともに陰性であった.また腫瘍内は毛細血管に富み,内視鏡的に強発赤を呈した原因と考えられた.文献的にも腫瘍径の小さいカルチノイドで強発赤を伴うものが報告されており,同所見が食道カルチノイドの初期よりみられる特徴的な所見の一つである可能性がある.粘膜固有層に限局した食道カルチノイドは稀であり,ESDにより背景粘膜を含めた検討を行うことができた症例である.
  • 鷺原 規喜, 宮谷 博幸, 池田 正俊, 牛丸 信也, 本田 英明, 高松 徹, 岩城 孝明, 中島 嘉之, 吉田 行雄, 山田 茂樹
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3085-3091
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男.糖尿病・深部静脈血栓症の既往があり,ステロイド及びワーファリンを内服中.腹痛で来院した.白血球数上昇,黄疸を認めた為入院した.ERCPにて十二指腸乳頭部が腫脹し,暗赤色を呈していた.ENBDにて減黄後,乳頭切開術・胆管ドレナージチューブ留置を施行した.超音波内視鏡により十二指腸乳頭部血腫と診断した.第31病日退院した.外傷,生検,治療例以外での十二指腸乳頭部血腫は極めて稀であり示唆に富むと考えられたので報告する.
  • 島村 隆浩, 佐藤 力弥, 野口 忠昭, 佐々木 邦明, 河野 洋一, 川村 武, 川村 統勇, 池上 雅博
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3092-3097
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性.大腸内視鏡検査後から右腹部の膨満感が持続していた.検査後17日目に右腹部の腹膜刺激症状と腹腔内遊離ガス像を認めたので,消化管穿孔を疑い手術を施行した.肝彎曲近傍の後腹膜に血腫を認め,血腫より口側の上行結腸が著明に拡張し穿孔しており,右半結腸切除+回腸人工肛門造設術を施行した.本症例は後腹膜血腫が契機と考えるが,大腸内視鏡検査後は遅発性大腸穿孔も考慮し,慎重な経過観察が重要である.
経験
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 中田 博也, 柳岡 公彦, 岡 政志, 一瀬 雅夫
    2009 年 51 巻 12 号 p. 3110-3122
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    経鼻内視鏡は苦痛が少なく,かつ安全性も高い故に,スクリーニングの内視鏡検査には最適である.しかし,経鼻内視鏡検査にも,留意すべきいくつかの問題点が存在する.まず世代別性能差が非常に大きいことに留意し,その弱点を念頭に観察しなければならない.前処置の方法はスプレー法とスティック法に分けられるが,使用する経鼻内視鏡の径とのバランスを考えて使い分けていく必要がある.経鼻内視鏡は,スクリーニング検査としては十分な精度があると思われるが,胃粘膜萎縮のない群より発生する胃がんに関しては,その発見率は通常内視鏡より有意に低く注意が必要である.従来いわれてきた狙撃生検能の劣る点に関しては,新しいデバイスの登場により克服されてきた.
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