日本消化器内視鏡学会雑誌
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51 巻, 4 号
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総説
  • 鈴木 荘太郎
    2009 年 51 巻 4 号 p. 1111-1120
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    医師は医学知識と技能を有効に発揮して診断および治療を的確に行う責務を担っており,日常診療において,医の倫理規程および関連法規が医師の行動規範である事を自覚して,診療に当たらなければならない.内視鏡治療は侵襲的な治療法であり,法的には一般診療より高度の注意義務が求められている.特にinformed consentは重要で根底には法的な説明義務があり,治療の適応,治療法の選択,治療効果,合併症などの具体的な説明が必須である.説明内容の不足に関しては法的責任が発生し,説明を行った内容であっても,合併症や事故が発生した場合には,医療水準に従った対処の有無が法的責任の判断基準となる.
    わが国の医療評価は,先行する米国の手法に準じているが,現時点では医療のstructureやprocessの評価が中心であり,各専門領域において,EBM(evidence based medicine)に副った臨床評価指標(clinical indicator)による医療の本質的な評価が求められている.専門医療の質の向上ならびに医療評価として,的確な内視鏡検査および治療に対する評価指標の策定が必要である.従来の医療評価に関する研究は社会医学の領域で進められていたが,本質的な医療評価は各専門領域において研究開発するべきである.これには客観的な無作為抽出法(RCT:randomized controlled study)によって検討されることが望ましく,内視鏡治療のclinical indicatorの策定には,日本消化器内視鏡学会(JGES)が主導的な研究開発を実施することが最適と考えられる.
原著
  • 豊永 敬之, 西野 晴夫, 鈴木 康元, 辺見 英之, 森岡 香, 完山 裕基, 畠山 知昭, 土屋 博, 中条 徹朗, 高橋 敬二, 野澤 ...
    2009 年 51 巻 4 号 p. 1121-1128
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:大腸腺腫の内視鏡的摘除後の至適サーベイランス法を検討する.
    方法:1998~2001年に大腸腺腫または粘膜内癌に対して内視鏡的摘除を行い,その後2回以上のTCSを行った1,731症例を対象とした.癌および10mm以上の腺腫をIndex Lesion(IL)とし,semi-clean colon達成前後での累積IL発見率を求め,3% を越える時点を至適サーベイランスの時期とした.
    結果:semi-clean colon達成前のIL発生率が3% を越えるのは,初回治療後13カ月であった.粘膜内癌が独立した危険因子であった.semi-clean colon達成後のIL発生率が3% を越えるのは,semi-clean colon達成後36カ月であった.初回病変3個以上および60歳以上が独立した危険因子であった.
    結語:大腸腺腫切除後のサーベイランスTCSは,semi-clean colon達成までは1年に1回,達成後は3年に1回行うのが効率的である.
症例
経験
  • 結城 美佳, 数森 秀章, 駒澤 慶憲, 福原 寛之, 山本 俊, 雫 稔弘
    2009 年 51 巻 4 号 p. 1165-1169
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    われわれは,経鼻内視鏡検査時の前処置として,鎮痙剤の代替としてのPeppermint Oil Solution(以下POS)の有用性を評価するための検討を行った.健常成人8人(男性3人,女性5人,平均年齢37.9歳)を対象に経鼻内視鏡検査を施行し,POS20mlを前庭部に散布し,その前後それぞれ3分間の蠕動回数を計測した.POS散布後,前庭部の蠕動回数が有意に抑制された.その効果は散布後1分で出現し,3分まで続いた.また同時に測定した血圧,動脈血酸素飽和度,脈拍は検査有意な変動を示さず,特に副作用などは認めなかった.経鼻内視鏡検査時のPOS散布による蠕動抑制は有効であり,今後POS使用により経鼻内視鏡検査では鎮痙剤を使用せずとも,安全に十分な観察が可能である可能性が示唆された.
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 大塚 和朗, 工藤 進英
    2009 年 51 巻 4 号 p. 1172-1180
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    新しいバルーン内視鏡としてシングルバルーン内視鏡が開発された.これは,内視鏡本体にはバルーンはなく,外筒の先端にのみバルーンがあるため,セッティングや操作方法が簡明である.外筒を進めるときの腸管の把持はバルーンではなくアングル操作によって行う点に特徴がある.また外筒にツメが付いており,一人法による内視鏡操作が容易となっている.本稿では挿入の実際について解説し,さらに小腸管腔内のクリスタルバイオレットによるマーキング法や点墨方法,炭酸ガス送気や先端キャップを用いた挿入性の改善についても言及した.
資料
  • 田井 真弓, 市井 統, 渡邊 龍之, 江尻 豊, 大槻 眞
    2009 年 51 巻 4 号 p. 1181-1186
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】手術不能の悪性胆道狭窄に対する金属ステントの留置は侵襲が少なく有用な治療である.金属ステントはプラスチックステントと比較し開存期間が長いという利点はあるが,留置したステントが十二指腸側へ逸脱することもあり,このような場合のステント抜去は困難である.われわれは逸脱したステント(Wallstent;Boston Scientific社製)をアルゴンプラズマ凝固法(argon plasma coagulation;APC)を用いて焼灼・切断しようと考え,焼灼の際の至適条件を検討した.
    【方法】金属ステントはuncoverd Wallstentとcovered Wallstentを使用した.留置した金属ステントがVater乳頭開口部から逸脱している状態を想定し,Wallstentの断端から約2cmを残してブタ小腸で被覆し,ステント断端から1cmにAPCを施行した.APCではアルゴンガス流出量を2.0l/minとし,出力(30,60,99W)と照射時間(3秒,6秒)を設定し,Wallstent焼却・切断の至適条件を検討した.生体内は湿潤状態にあることから,covered Wallstentを湿潤下で追加実験を行った.
    【結果】Covered Wallstentは出力30Wで焼灼可能であったが,uncovered Wallstentでは60W以上の出力を必要とした.Wallstentに対するいずれの条件下でもWallstentを被覆していた豚の小腸には肉眼的な熱性変化を認めなかった.
    【結論】APCは30Wの低出力でWallstentの切断が可能であり,膵胆道組織への明らかな損傷を伴うことのない,有用かつ安全な方法であると考えられた.
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