日本消化器内視鏡学会雑誌
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51 巻, 5 号
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総説
  • 春日井 邦夫, 徳留 健太郎, 舟木 康, 米田 政志
    2009 年 51 巻 5 号 p. 1269-1283
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
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    胃食道逆流症の治療はプロトンポンプ阻害薬が第一選択薬であり有効性は高いが,症状のコントロールのためには継続投与が必要となる.一方,腹腔鏡手術などの外科療法には一定の有効性が存在するが,手術に伴う合併症などが問題とされている.このため,より低侵襲で効果的な方法として内視鏡的治療法が欧米を中心に開発され,2000年初めには縫合法,焼灼法,注入法など3種類の治療法が登場し臨床応用がなされてきた.これらの方法には共通して胸やけなどの自覚症状やQOL,内服率などの主観的所見の有意な改善が得られていたが,pHモニタリング所見や食道内圧所見など客観的指標の改善が不十分であった.さらに,サンプルサイズ,盲検化,長期効果,安全性,医療経済性などの問題が次第に明らかとなり,焼灼法や注入法などの処置具は開発中止や市場からの撤退を余儀なくされた.現在は縫合法のうち胃壁の全層縫合を行う新たな処置具の開発,研究がなされているが,内視鏡治療がGERDに対する標準的治療法として受け入れられるためには,適応を含めて質の高い臨床治験を行い有用性のエビデンスを構築していく必要がある.
症例
経験
  • 野中 康一, 新井 晋, 伴 慎一, 麻生 暁, 吉野 廉子, 中尾 将光, 角嶋 直美, 河合 めぐみ, 石川 恵子, 喜多 宏人
    2009 年 51 巻 5 号 p. 1329-1337
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】胃のIIa様病変すなわち,胃腺腫の内視鏡的特徴とされる褪色調扁平隆起を呈する病変,または生検組織でGroup IIIと診断された病変に対しNBI併用拡大内視鏡を施行した.粘膜微細構造と微小血管像を中心に観察し,内視鏡的に胃腺腫と癌の鑑別が可能かどうか検討した.【方法】2007年4月から2008年6月までに,当科にて通常観察及びNBI併用拡大観察を行ったIIa様病変26病変を対象とした.NBI併用拡大観察における粘膜微細構造の消失の程度と微小血管像の異常の程度に着目し,NBI併用拡大観察所見に基づくType分類を試み,切除標本の病理結果と比較した.【結果】切除標本の病理結果は腺腫9病変,腺癌17病変であった.またNBI併用拡大観察所見に基づき5つのTypeに分類し得た.われわれの分類上Type I,IIと診断された症例は90%(9/10)の確率で腺腫であり,Type III~Vと診断された症例は全例癌であった.【結論】NBI併用拡大観察に基づくType分類は,IIa様病変における腺腫,癌の内視鏡的鑑別に有用である.
注目の画像
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 三浦 昭順, 宮本 昌武, 加藤 剛, 出江 洋介, 江頭 秀人, 藤原 純子, 門馬 久美子
    2009 年 51 巻 5 号 p. 1342-1348
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    食道癌術後の狭窄に対する内視鏡的拡張術は,低侵襲かつ簡便に食事の通過障害を改善し,患者のQOL向上を図ることが可能な手技である.しかし,拡張手技は,狭窄の原因や種類により異なるため,現況が十分把握できずに行うと,重篤な合併症を引き起こす可能性もある.特に,拡張時の穿孔は,重篤になるケースもあり,外科的治療を要する症例も存在する.
    食道狭窄は,食道癌切除後の吻合部狭窄と内視鏡治療後の瘢痕狭窄の2つに大別される.吻合部狭窄は,自動吻合器の内翻全層一層縫合が原因とされる膜様狭窄が多く,内視鏡治療後の狭窄は,3/4周以上の粘膜欠損に伴う広範な粘膜の治癒過程で起こる瘢痕狭窄が多い.拡張法には,内視鏡下で用いるTTSバルーンによる拡張と,透視下で用いる硬性ブジーの2種類の方法があり,狭窄の種類や程度に応じて,両者を使い分けている.
    バルーン拡張は,内視鏡下に加圧していくことでバルーンが拡張し,狭窄部を拡張する方法である.拡張時に内視鏡観察が行え,拡張圧の調節が可能なことから,安全に行え,食道癌術後狭窄に対する拡張術の第一選択として用いられている.特に,膜様狭窄には効果的であるが,狭窄部が硬く高度な症例には不向きである.
    一方,硬性ブジーは,塩化ビニル製のデバイスを透視下にガイドワイヤーを用いて狭窄部に誘導し,拡張する方法であり,力が短軸方向だけでなく,長軸方向にも伝わるため強力な拡張が可能である.バルーンブジー不成功例に対し,特に効果的である.しかし,拡張時の内視鏡観察ができないため,拡張時の力加減は,術者の経験によるところが大きく,熟練が要求される手技である.
    いずれの方法も適切に行えば,簡便かつ低侵襲に拡張が可能であるが,過度の拡張や盲目的な操作は偶発症を引き起こす危険性を高めるため,常に,手技は慎重に行うことが必要である.
資料
  • 北野 正剛, 安田 一弘, 柴田 浩平, 吉住 文孝, 川口 孝二, 鈴木 浩輔, 太田 正之, 猪股 雅史, 白石 憲男
    2009 年 51 巻 5 号 p. 1349-1354
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】近年,体表面に創を作らない新しい低侵襲手術手技NOTESの研究が急速に進んでいる.動物実験ではさまざまな手術手技が可能であることが示されてきたが,臨床例は少ない.われわれは本邦で初めてNOTESを臨床応用し,膵癌患者に対する術前病期診断のための経胃的内視鏡による腹腔内観察を行ったので報告する.
    【方法と結果】胃にESDの要領で粘膜下トンネルを作成後,トンネル先端部の漿筋層に小切開を加えバルーンで拡張し,通常内視鏡を腹腔内に挿入した.腹腔内観察の視野は良好で,膵癌による腹膜播種や肝転移はなく根治手術が可能であることを確認した.その後,内視鏡を胃内に引き戻し,粘膜切開部をクリップで縫縮後,膵癌に対する標準的根治術を行った.腹腔鏡観察に伴う合併症はなく,患者の術後経過は良好であった.
    【結論】粘膜下トンネル法による経胃的NOTES腹腔内観察は膵癌に対する有用な術前病期診断法のひとつになる可能性がある.
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