日本消化器内視鏡学会雑誌
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51 巻, 9 号
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総説
  • 丹羽 寛文
    2009 年 51 巻 9 号 p. 2392-2413
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    ファイバースコープはHirschowitzらにより試作され,1957年5月アメリカ胃鏡学会で発表された.その後1960年よりACMI社からGastroduodenal fiberscopeとして発売されたが,当初は日本への輸出が禁ぜられていた.日本で使える様になったのは昭和37(1962)年6月以来である.国内での最初の試作は昭和38年3月亀谷らのもので,食道が対象で,胃内の観察は不十分であった.側視式の胃ファイバースコープは,昭和38(1963)年10月に町田製作所から発表され,翌年3月にはオリンパス社より胃カメラにファイバースコープを組み込んだファイバースコープ付き胃カメラGTFが発売された.GTFでは肉眼観察に加えて良好な写真が得られ,この器種は広く迎えられた.その後,より細く先端彎曲機構を取り入れた機器が発表され,生検機構も組み込まれた.
    胃カメラ組み込みの機器では先端にレンズ,ランプ,フィルム格納部があって構造上側視式しか出来なかったが,その後グラスファイバーによる照明が取り入れられ,撮影も接眼部に装着したカメラで行われ,視方向を前方直視式にすることが可能となった.しかし当初はこの方式では胃内観察に種々の問題があった.この欠点を補う目的で前方斜視方式の機器も作られた.その後極めて細く,先端屈曲部の短いいわゆる細径パンエンドスコープが登場した.これでは全上部消化管を一度の挿入操作で観察出来,先端屈曲部が短く,屈曲角度が大きく,広角な為観察性能は良好で,その後前方直視式スコープが一般的になった.
    その後電子スコープの登場でファイバースコープの時代もわずか50年しか続かなかった.しかし消化管内視鏡の主要課題はこの間に殆どすべて解決し,その間に果たしたファイバースコープの役割は極めて大きい.
原著
  • 永田 尚義, 矢田 智之, 西村 崇, 横井 千寿, 小早川 雅男, 秋山 純一, 上村 直実, 星本 和種, 遠藤 久子
    2009 年 51 巻 9 号 p. 2414-2425
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,免疫不全患者の増加から,CMV感染症は増えてきている.消化管は好発臓器のひとつであるが,その内視鏡像は多彩であり,診断に苦慮することも多い.われわれは生検で診断したCMV感染症32例(食道12例,胃20例,十二指腸6例)を対象に,その臨床像と内視鏡像を検討することを目的とした.結果は,HIV陽性が21例でHIV陰性は11例であった.HIV陰性患者は免疫抑制剤,抗癌剤,ステロイド剤のいずれかの使用歴があった.観察期間内でHIV陽性例では死亡例はなかったが,HIV陰性例は死亡を3例に認めた.食道病変はHIV感染者に多かった.内視鏡所見では,食道は打ち抜き潰瘍を83%(10/12)に,胃は平坦発赤またはびらんを55%(11/20)に,十二指腸は浮腫状発赤を50%(5/10)に認めた.免疫不全患者においてCMVの消化管病変を疑った場合は,典型的な食道の打ち抜き病変だけでなく,胃,十二指腸の非典型的所見にも注意すべきと思われる.
症例
経験
  • 上野 正紀, 春田 周宇介, 江原 一尚, 木ノ下 義宏, 松田 正道, 戸田 重夫, 森山 仁, 横山 剛, 的場 周一郎, 橋本 雅司, ...
    2009 年 51 巻 9 号 p. 2467-2472
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の重大な合併症の一つである他臓器損傷を防ぐ目的で,腹腔鏡補助下手術を考案した.
    【方法】レントゲンもしくはCTで胃の前面に腸管ガス像が重なっている症例,上腹部手術の既往症例,さらに右胃大網動脈をGraftとした冠動脈バイパス手術既症例を適応症例とし,局所麻酔下の腹腔鏡補助でPEGを作成した.
    【結果】安全・確実な手術が行えた.
    【結論】腹腔鏡補助PEGは他臓器穿刺の危険性の高い症例のPEG造設に有用な可能性がある.
  • 冨保 和宏, 木全 大
    2009 年 51 巻 9 号 p. 2473-2477
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    経皮内視鏡的胃瘻造設術において,スパイナル針を使用した低コストな胃壁固定法を考案した.胃壁腹壁固定には第2針刺入孔付きの第1針の過刺入を防ぐストッパーを装着したスパイナル針を使用した.手技の安定性の有無を明らかにするために,本法と鮒田式胃壁固定の施行時間の分散を比較した.本法による結紮総固定は31回施行したが,合併症は皆無であった.本法は鮒田式と比較して平均施行時間にして約50秒の差を認めたが,分散に有意差はなかった.本法は低コストで安全で,手技的に安定して施行でき,鮒田式胃壁固定法の代替固定法になり得る方法であると考えられた.
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 豊永 高史, 森田 圭紀, 東 健
    2009 年 51 巻 9 号 p. 2480-2497
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submusosal dissection:ESD)が開発され,従来では切除困難であった病変の確実な一括切除が可能になった.しかし大腸ESDの難易度・偶発症発生の危険性は高い.導入に当たっては慎重な態度が望まれる.適応はEMRでは対処困難で一括切除が必要な病変,外科手術では機能障害が問題になる症例である.臨床病理学的にESDの最も良い適応は2cmを超えるLST-NG病変と考えられる.しかしこれらは粘膜下層に線維化を伴っている事が多く代表的なESDの困難例である.安全性・難易度・機能温存の点から大腸ESDのメリットが最も顕著に示されるのは直腸病変である.
資料
  • 西野 隆義, 土岐 文武, 小山 祐康, 白鳥 敬子
    2009 年 51 巻 9 号 p. 2498-2509
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】ERCP後4時間における血清リパーゼ値およびアミラーゼ値がERCP後膵炎発症の予測に有用か否かを対比検討した.
    【方法】連続1,631例(診断的ERCP 910例,治療的ERCP 721例)をretrospectiveに検討した.
    【結果】1)膵炎の発症率は4.2%(69/1,631)であった.2)ERCP4時間後のアミラーゼおよびリパーゼのROC曲線下面積は診断的ERCPで各々0.88(95%CI:0.85-0.91)および0.94(同0.92-0.96)であり,治療的ERCPでは各々0.92(同0.90-0.93)および0.96(同0.94-0.97)であった.3)アミラーゼのカットオフ値は正常上限の5倍が最適であり,リパーゼでは10倍が最適であった.4)ROC曲線下面積の比較では,リパーゼがアミラーゼに比べて診断的ERCP(p=0.025)および治療的ERCP(p=0.035)いずれの場合も有用であった.
    【結論】ERCP4時間後の血清リパーゼ値はERCP後膵炎の予測に有用な検査法である.
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