日本消化器内視鏡学会雑誌
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52 巻, 12 号
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総説
  • 田尻 久雄, 北野 正剛, 炭山 和毅, 池田 圭一, 安田 一弘
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3259-3266
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)という新概念が登場した初期の動物実験段階では機器開発をめぐる熾烈な競争が展開されてきたが,臨床応用段階に入り,様々な課題に直面している.臨床導入の安全性を担保するため,hybrid NOTESによる工夫がなされ,一方ではNOTESをきっかけに単孔式腹腔鏡下手術など硬性鏡手術のさらなる低侵襲化への動きも加速化している.医原性消化管穿孔部の閉鎖や内視鏡的消化管全層切除,粘膜下層内部での筋層観察および下部食道筋層切開などNOTESへの橋渡し技術が生み出されたことによって,NOTESを引き金に始まったより低侵襲の治療技術と周辺機器開発は,外科領域にとどまらず,内科領域にも新たな発展をもたらすと考えられる.“NOTES”という言葉や概念にとらわれず,より低侵襲の治療を目指すという共通の夢をさらに前進させるため,内科医と外科医がさらに密接に協力していくことが重要であり,この分野において欧米に遅れをとらないためにもわが国における産学官共同研究の推進と緊密な医工連携による強固な研究体制作りが望まれる.
原著
  • 山元 隆文
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3267-3275
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    上部消化管内視鏡検査時の鎮静法としてミダゾラム経口投与を実施し,臨床的有用性を検討した.対象は無作為に分けたジアゼパム10mg静注群43例とミダゾラム10mg経口投与群43例とした.両群で重篤な合併症はみられなかった.血圧低下値はミダゾラム群で有意に大きいものの,投与後に90mmHg以下に低下した症例はジアゼパム群が多かった.検査中の嘔吐反射回数,患者の鎮静スコアや苦痛スコアに有意差はみられなかったが,検査に対する健忘効果はミダゾラム群が有意に高く,同群の約8割が次回も経口投与による鎮静を希望,許容した.一方,ミダゾラム群は検査開始まで平均17分を要し,鎮静からの正常回復はジアゼパム群より長い時間を要した.ミダゾラム経口投与は簡便であることに加え,重篤な呼吸循環動態の変動はなく比較的安全に実施可能なこと,静注法と同等の鎮静効果が得られること,健忘効果が強く患者満足度も高いことなどから臨床的に有用な鎮静法と思われた.
症例
  • 島岡 俊治, 松田 彰郎, 仁王 辰幸, 鳥丸 博光, 田代 光太郎, 政 幸一郎, 新原 亨, 西俣 嘉人, 堀 雅英, 西俣 寛人, 田 ...
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3276-3281
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.下部食道に表面平滑な扁平隆起性病変および肛門側に不整形のびらんが認められた.生検では扁平上皮癌と診断されたが,X線,内視鏡所見から粘膜内にとどまる類基底細胞癌の可能性を考え,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した.腫瘍は主に上皮下で増殖しておりPAS染色陽性の硝子様物質がみられ,類基底細胞癌と診断された.
  • 佐野 明江, 伊藤 康文, 早崎 直行, 花立 史香, 池田 庸子, 佐藤 知洋, 吉田 健一郎
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3282-3289
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.2005年3月に進行S状結腸癌で結腸部分切除術を施行(高分化型腺癌Stage IIIb,CA19-9抗体染色(+)).術後正常化していた血清CA19-9値が2007年7月から緩徐に上昇.胸,腹部単純CTや大腸内視鏡検査では再発転移所見を指摘できず.2008年1月MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)のMRI画像で胃底部背側腫瘤と脾門部リンパ節腫大を確認.上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部に粘膜下腫瘍の形態をした腫瘤を認めた.生検病理組織像は切除大腸癌酷似の高分化型腺癌で,以上の臨床経過からS状結腸癌の胃転移と診断.同年2月胃全摘を行った.
  • 橋本 哲, 小林 正明, 味岡 洋一, 竹内 学, 岡 宏光, 高野 明人, 堂森 浩二, 佐藤 祐一, 成澤 林太郎, 青柳 豊
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3290-3295
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.慢性腎不全に対し透析導入後,黒色便を繰り返すため,当科を紹介受診した.内視鏡で胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)を認め,アルゴンプラズマ凝固療法(APC)を施行した.しかし,APC後もGAVE再発を繰り返すため,胃前庭部約1/3周の粘膜をESDにより切除を行い,その後下血は消失し,貧血の改善を認めた.難治性GAVEに対しESDを試みた報告はなく,貴重な1例と考えた.
  • 向川 智英, 小山 文一, 中川 正, 内本 和晃, 大槻 憲一, 中村 信治, 藤井 久男, 榎本 泰典, 中島 祥介
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3296-3302
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性.下血を主訴に近医を受診した.注腸,大腸内視鏡検査にて上部直腸に径25mm大の腫瘤性病変を指摘され,精査,加療目的に当院に紹介された.大腸内視鏡所見で腫瘍は分葉状で,表面に数カ所の潰瘍形成を伴った亜有茎性の隆起性病変で,辺縁は正常粘膜で被覆されていた.内視鏡上は早期直腸癌と診断したが,生検病理組織検査の結果,カルチノイドとの診断を得て腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.直腸カルチノイドは典型的には10mm以下の小型で黄色調の表面平滑な半球状の粘膜下腫瘍の肉眼形態を呈するが,本例のように20mmを超えると茎が明瞭化し中心陥凹や潰瘍形成を伴うことも多く,内視鏡上癌との鑑別が困難となる.このような非典型的な肉眼形態を呈するカルチノイド腫瘍の悪性度は高く,躊躇なく癌に準じた治療を選択する必要がある.
  • 應田 義雄, 西上 隆之, 樋田 信幸, 河合 幹夫, 河野 友彰, 上小鶴 孝二, 中村 志郎, 堀 和敏, 三輪 洋人, 松本 譽之
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3303-3308
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    陳旧性腸結核を母地として発癌したと考えられる1症例を経験した.症例は62歳,男性.便潜血陽性による大腸内視鏡検査で,上行結腸近位側の瘢痕粘膜に約3cm大の平坦型腫瘍を認め,内視鏡的摘除を行った.病理所見は,一部に癌を認め,異型の弱い部位にもp53が過剰発現していたため,cancer in high grade dysplasiaと診断された.本例では,潰瘍性大腸炎と同様の炎症性発癌が考えられた.
  • 渡辺 一宏, 松川 滋夫, 川瀬 建夫
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3309-3315
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は膵癌の76歳女性.2009年2月多量の血便を認め出血性ショックとなる.原因の上行結腸静脈瘤破裂に対し大腸内視鏡下で22個のクリップをかけ止血,癌死までの2カ月間再出血なく摂食が可能であった.現在までに同疾患のクリップ単独止血術の報告は認めず,われわれは,この治療法をMulti-hemoclippingとした.治療困難な大腸静脈瘤患者に内視鏡的クリップ止血術は治療の1選択肢となり得る可能性がある.
  • 松崎 晋平, 岡野 宏, 佐瀬 友博, 馬場 洋一郎, 齊藤 知規, 向 克巳, 西川 健一郎, 豊田 英樹
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3316-3322
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    72歳男性.急性胆嚢炎に対し,経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行.胆嚢炎は軽快し,留置15日目にPTGBDを抜去したが,胆汁性腹膜炎を発症した.手術を希望されず,保存的治療を行うも増悪したため,内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージ(ENGBD)を施行し,軽快した.
    PTGBD抜去後の胆汁性腹膜炎の治療にENGBDが有用な症例を経験した.ENGBDの適応や可能性を考える上で,貴重な症例と考え報告する.
経験
  • 加藤 正之, 貝瀬 満, 郷田 憲一, 豊泉 博史, 池田 圭一, 吉村 昇, 炭山 和毅, 米澤 仁, 加藤 智弘, 田尻 久雄
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3323-3327
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    バルーン拡張術や粘膜切開術を用いても早期に再狭窄を呈する難治性良性食道狭窄に対し,本邦で初めてself expandable plastic stent(以下SEPS)による治療を行った.約7カ月間のSEPS留置により,患者のQOLは著しく改善した.SEPSは欧米では保険認可されており,良性食道狭窄に対する治療法の選択肢となっている.現在本邦では,難治性良性食道狭窄ではバルーン拡張術や粘膜切開術を頻回に繰り返すしかないのが現状であり,この状況を打開するためSEPSが本邦でも早期に臨床使用できるよう期待する.
注目の画像
手技の解説
  • 笹平 直樹, 伊佐山 浩通, 川久保 和道, 木暮 宏史, 佐々木 隆, 中井 陽介, 山本 夏代, 平野 賢二, 多田 稔, 小池 和彦
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3330-3336
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎に対する内視鏡治療は,体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)を含む膵石除去,膵管狭窄に対する膵管ステンティング,仮性嚢胞に対する経乳頭・経消化管的嚢胞ドレナージ,膵内胆管狭窄に対する胆道ドレナージなど多岐に及び,処置具の開発等により,さらに多くの内視鏡治療が可能となってきた.これらの多くは胆管インターベンションの応用であるが,処置に難渋することも稀ではない.不十分な処置は,膵炎増悪や仮性嚢胞感染など,重篤な合併症を来しうるため,病態に応じた適切な治療法の選択と,十分な手技の習得が必要である.
  • 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, 栗原 俊夫, 土屋 貴愛, 新戸 禎哲
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3337-3346
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    経乳頭的胆嚢ドレナージ手技について解説した.胆嚢管の分岐パターンは大きく右方頭側分岐,右方足側分岐,そして左方分岐の3つに分類することができる.これらの分岐パターンに従い,適切な処置具を用いることが大切である.特に,右方足側分岐の場合には先端湾曲型カテーテルもしくはパピロトームを用いることでうまく行く場合もある.ガイドワイヤーは基本的にラジフォーカスガイドワイヤーを用いて回転操作とループテクニックを用いた鈍的な操作を行うのが望ましい.胆嚢にガイドワイヤーを進めた後はスティッフタイプのガイドワイヤーに交換し5Fr-6F先端ピッグテイル型の経鼻胆嚢ドレナージまたは5Fr-7Frの両端ピッグテイル型ステントを留置する.
資料
  • 大浦 佳永, 黒瀬 加奈, 牧野 聖子, 住吉 徹哉, 田中 信悟, 田村 文人, 對馬 隆浩, 水島 健, 千葉 大樹, 辻 靖, 由崎 ...
    2010 年 52 巻 12 号 p. 3347-3352
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】女性が女性医師による大腸内視鏡検査を望んでいるかどうかを検討するために,当院において大腸内視鏡検査を受けた女性被験者110名に対して検査前・後にアンケート調査を行った.【結果】検査前アンケートでは,女性の内視鏡医希望56%(61名),男性の内視鏡医希望5%(6名),どちらでもよい39%(43名)と女性医師を希望する女性被験者が半数以上を占めた.内視鏡検査を被験者の希望に沿って行い,検査後アンケート調査では,女性医希望67%(74名),男性医希望5%(6名),どちらでもよい27%(30名)と女性医の希望者が増加していた.検査前アンケートでは,50歳未満の若年者(72% vs 45%),大腸内視鏡検査の未経験者で(70% vs 43%)有意に女性医師を希望する割合が高く,就業女性や無症状の女性も,女性医師を希望する傾向が強かった.【結論】女性の大腸内視鏡被験者には女性内視鏡医による検査を希望している者が多いと考えられた.
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