【背景・目的】胃病変の鑑別診断におけるNarrow Band Imaging(以下,NBI)併用拡大観察は,専門家の間で有用性が示されつつあるものの,一般の内視鏡医にとっては所見の判断が難しい場合がある.そこで,NBI併用拡大観察の初学者(経験症例数が30例未満)を対象とし,その有用性を検討することを目的に本研究を計画した.【対象・方法】50病変(癌17例,非癌33例)につきX:通常観察のみの画像集とY:通常観察+NBI併用拡大観察の画像集を作成し,3施設24名の医師にX→Yの順番で読影を依頼し,正診率の変化を比較検討した.【結果】正診率はX:62.8%,Y:72.8%(P<0.001)で有意にYが優れており,特に非癌における診断精度の向上が際立っていた.また,施設や内視鏡経験によらずYが優れていた.【結論】胃病変のNBI併用拡大観察は初学者においてもその有用性が示唆され,汎用性も期待される.
症例は72歳男性.心窩部不快感にて受診.上部消化管内視鏡検査で胃体部小彎に多発性潰瘍を認め5カ所生検したところ,病理組織,免疫組織化学所見よりRussell body gastritisと診断された.Russell body gastritisは,1998年本邦にて第1例目の報告がなされた慢性胃炎の亜型で,日本を含め世界でも12例の報告しかない稀な胃炎である.今回このRussell body gastritisを経験したので内視鏡像,病理組織像を中心に文献的考察を加え報告する.