日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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52 巻, 8 号
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総説
  • 峯 徹哉
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1843-1848
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    従来膵嚢胞性病変の数はかなり少なく思われていた.しかし,最近,臨床の場でその存在が多く認められるようになってきた.その理由は画像診断の進歩・普及によるものが大きいと思われる.膵嚢性病変は仮性嚢胞と真性嚢胞に大きく分けられ,仮性嚢胞のうち,腫瘍性仮性嚢胞がその大部分を占めている.通常,これは嚢胞状変性と言われている.それに引き替え,先天性真性嚢胞は遭遇することは比較的少ない.本稿では最近,増加していると思われるIPMN,MCN,SCN等に触れながら膵嚢胞性病変の診断の仕方などについて詳述したい.
原著
  • 大野 康寛, 中村 尚志, 入口 陽介, 山村 彰彦, 大浦 通久, 池松 弘朗, 小田 丈二, 水谷 勝, 高柳 聡, 岸 大輔, 冨野 ...
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1849-1856
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    大腸がん治療ガイドラインにより,大腸pSM癌はSM浸潤距離が1,000μm未満までが内視鏡治療の適応拡大病変となった.今回,その適応病変の特徴を明らかにするために,腫瘍径別にみた臨床病理学的検討,およびSM垂直浸潤距離による脈管侵襲(ly or v)の有無,および簇出に関して検討を行った.その結果,(1)大きさが20mm以上の症例ではEMRによる一括切除率が低い,(2)SM浸潤距離が300μm超1,000μm未満の症例では脈管侵襲陽性もしくは簇出(G2/3)の割合が30.8% と高かった.以上の結果から,今後内視鏡治療の適応拡大に伴い,特に大きさ20mm以上の病変に対しては,十分かつ的確な病理組織学的診断に耐えうる切除標本を得るための,内視鏡治療による一括切除率の向上が重要であると考えた.
症例
  • 岡本 豊, 佐々木 義雄, 八木橋 法登, 山居 聖典, 佐藤 和則, 千葉 裕樹, 珍田 大輔, 齋藤 正人, 鈴木 英章, 八森 久, ...
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1857-1865
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.食道ポリープの精査のため近医から紹介となった.上部消化管内視鏡で胸部中部食道に直径12mm大の黄白色調の大臼歯様の粘膜下腫瘍を認めた.生検では顆粒細胞腫であり,超音波内視鏡では粘膜固有層を主座とするやや低エコーな腫瘍として描出され,最深部で粘膜下層浅層に及んでいた.内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し,安全かつ垂直断端も陰性で完全切除できた.食道顆粒細胞腫に対し内視鏡的粘膜下層剥離術が有用であったのでここに報告する.
  • 田口 純, 石橋 陽子, 菅井 望, 関 英幸, 三浦 淳彦, 藤田 淳, 鈴木 潤一, 鈴木 昭, 深澤 雄一郎
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1866-1873
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性.嚥下困難,食欲不振と唾液が常に流れてくる症状で近医を受診.上部消化管内視鏡検査で,逆流性食道炎と慢性胃炎の診断でプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されていた.しかし,症状の改善を認めず当科を受診.難治性かつ上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜に非連続性に地図状のびらんが散在し,易粘膜剥離も認めたため食道天疱瘡を疑った.抗デスモグレイン(Dsg)3抗体価が23 Indexと陽性であり,蛍光抗体直接法にて食道の表皮細胞間にIgG,IgA,C3の沈着を認めた.皮膚,口腔粘膜病変はないものの,食道天疱瘡と診断しプレドニゾロン(PSL)30mg/日を開始したところ,2日後より自覚症状が著明に改善し,食事も摂取できるようになった.その後はPSLを漸減し,現在はPSL 5.5mg/日投与中で再発を認めていない.本症例は,皮膚,口腔粘膜病変がなく内視鏡検査で食道天疱瘡の診断となった1例であり,また併存した胃病変もPSLにて改善したことから,食道天疱瘡と何らかの関係がある可能性も示唆される.
  • 國井 伸, 荒川 直之, 青木 孝太, 阿知波 宏一, 久保田 稔, 石川 大介, 水谷 哲也, 渡辺 一正, 後藤 啓介, 奥村 明彦
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1874-1880
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の女性.生後1週間から嘔吐を繰り返し,幽門形成術と胃空腸吻合術を受けた.30歳頃から嘔吐と背部痛が出現しSMA症候群と診断されて十二指腸空腸吻合術が施行された.その後も症状が続くため上部消化管内視鏡検査と十二指腸造影検査を行った結果,十二指腸膜様狭窄症と診断し,2チャンネルスコープに透明フードデバイスを装着し,ポリペクトミー用スネアを用いた内視鏡的膜様部切除術を行った.術後4カ月目に行った上部消化管内視鏡検査では狭窄を認めていない.
  • 佐々木 邦明, 佐藤 力弥, 細野 知宏, 野口 忠昭, 島村 隆浩, 川村 武, 川村 統勇
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1881-1887
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.胃潰瘍治療中,右季肋部痛が出現し入院.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行部に魚骨と考えられる異物を認め,腹部CT検査で膵頭部やや背側への脱出を認めた.限局性炎症と考え保存的治療を行う方針とし内視鏡下に36mm長の魚骨を摘出した.術後厳重に経過観察したところ症状の増悪なく軽快した.比較的稀な魚骨の十二指腸穿通に対し内視鏡的除去後,保存的に治癒し得た症例を経験した.
  • 中山 奈那, 永田 信二, 金子 真弓, 鴫田 賢次郎, 斧山 美恵子, 本田 洋士, 桑原 健一, 木村 茂, 辻 恵二, 大越 裕章, ...
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1888-1894
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    82歳,男性.ランソプラゾール(以下LAZ)の内服開始20日後から水様性下痢が出現した.当初は大腸内視鏡検査では異常を認めなかったが,1年後の大腸内視鏡検査では全大腸にわたって散在性にごく軽度の発赤,翌年は上行から横行結腸に血管透見性低下と浮腫状の顆粒状粘膜,その翌年は前年度の所見に加え盲腸の発赤も認めた.大腸粘膜の生検でcollagen bandを認めcollagenous colitisと診断した.LAZを中止後,症状,所見ともに改善を認めた.
  • 増田 充弘, 津村 英隆, 久津見 弘, 田中 敏雄, 塩見 英之, 奥野 達哉, 佐貫 毅, 吉田 優, 伊藤 智雄, 東 健
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1895-1900
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性,左上顎洞形質細胞腫治療後に腹痛と背部痛を主訴に施行された腹部CTにて膵頭体部に70mm大の腫瘤性病変を認めた.血清IgG高値及びERCPにて同部位に膵管狭細像を認めた.悪性リンパ腫,自己免疫性膵炎との鑑別が問題となり,開腹生検にて膵形質細胞腫の確定診断に至った.膵形質細胞腫は非常に稀な疾患であるが,膵に腫瘤性病変,IgG高値,膵管狭細像を認めた際には鑑別診断の一つとして念頭に置くべきであると考えられた.
  • 中原 一有, 片倉 芳樹, 奥瀬 千晃, 小林 美奈子, 足立 清太郎, 伊澤 直樹, 野口 陽平, 小池 淳樹, 高木 正之, 伊東 文生
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1901-1907
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.吐下血を主訴に受診した.上部内視鏡検査で胃体上部後壁に頂部に出血性潰瘍を伴う外からの圧排による隆起性病変を認め,内視鏡的止血術を施行し入院となった.造影CTでは,膵体尾部に胃へ浸潤する9cm大の腫瘍性病変を認め,腫瘍は辺縁の造影効果が高く,内部が不均一な低吸収に描出された.また,肝内に転移巣と思われる多数の輪状造影効果を有する腫瘤を認め,前縦隔,右肺にも転移巣と思われる結節影を認めた.潰瘍底からの内視鏡下生検にて,多形細胞型退形成癌と診断し,塩酸ゲムシタビンによる化学療法を施行したが,全身性の発疹を認めたため1回のみの投与にて中止となり,初診より45日後に癌死した.退形成癌は稀な膵管癌の一型で,吐下血を契機に発見され,胃穿破部の生検から診断が得られた症例を経験したので報告する.
注目の画像
手技の解説
  • 野中 哲, 斎藤 豊, 小田 一郎
    2010 年 52 巻 8 号 p. 1910-1918
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    空気と比較して,二酸化炭素(CO2)は生体内での吸収・排出が速いことが知られている.近年,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の開発・普及に伴い,消化管の早期癌に対するESDが飛躍的に増加しており,それに伴い長時間に及ぶ手技や合併症の報告も増加している.CO2送気は,腸管過伸展による腹部膨満感・腹痛や穿孔による気腫・気腹を軽減できる可能性があり,大腸内視鏡を中心に普及し始めている.欧米では1980年代から使用されているが,本邦における使用施設は限定的である.筆者らは,大腸ESDおよび食道・胃ESDにおけるCO2送気の安全性・有用性を検討し,通常送気と同様に使用できることを報告してきた.将来的には,CO2送気は消化管内視鏡検査において,標準的に使用されるようになると考えている.
最新文献紹介
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