日本消化器内視鏡学会雑誌
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53 巻, 5 号
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総説
  • 田中 三千雄
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1419-1425
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    時代がファイバースコープから電子スコープの時代になり,内視鏡の画像もフィルム画像からデジタル画像に移った.デジタル画像はフィルム画像に比べて,幾多の優れた点がある.画像の解像度,画像修正,画像解析,画像の転送,画像のファイリング法などがそうである.しかしながら様々な問題も新たに浮上してきた.例えば,内視鏡検査中における内視鏡像への精神集中度の低下,内視鏡画像の詳細・綿密な把握志向の低下(内視鏡報告書が電子カルテに直結した様式へ移行したこととMSTの導入による),多様化した画像を使いこなすことの困難さ,診断する画像枚数の極端な増加,画像の改ざんの容易性,画像保管システムの故障による影響の甚大さ,画像の外部漏洩などである.これらの問題には,内視鏡医の“内視鏡像を視る能力”そのものを弱体化することをはじめ,深刻な要素を孕むものばかりである.われわれは今後,これらの問題点の顕在化を注意深く監視しなければならない.またそれと共に,新しい発想に基づいた「内視鏡画像トレーニング法」の確立と普及を期待したい.
原著
  • 森 朱夏, 横山 顕, 松井 敏史, 丸山 勝也, 大森 泰, 川久保 博文, 佐藤 靖夫
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1426-1434
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    【目的】アルコール依存症男性(ア症)では口腔咽喉癌が高頻度で診断される.そこで咽頭の視野を広くする咽頭展開法の手技について内視鏡検診での有用性を検討した.【方法】食道ヨード染色も併用した経口内視鏡検診を施行する40歳以上のア症599例に,顔を前方へと押し出す体位と咽頭観察時に発声やValsalva法を行う手技を用い検診を行った.【結果】輪状後部が開大し下咽頭の視野が広いA群,輪状後部の開大はないが正中で左右の梨状窩が前壁を含めて観察できたB群,内視鏡を左右に振って梨状窩を観察できたC群,観察困難なD群に分類し,それぞれ頻度は58%,18%,19%,5% であった.口底癌1例,舌癌+下咽頭癌1例,中咽頭癌2例,中咽頭癌+下咽頭癌1例,下咽頭癌3例を白色光で診断し,深達度はEP 4例,SEP 4例であり,中下咽頭癌ではA群4例,B群3例であった.食道癌は19例診断され,深達度はEP 10例,LPM/MM 3例,SM 3例,MP以深3例であった.【結論】ア症の口腔咽喉癌検診では咽頭展開法が有用であり食道癌に匹敵する早期の表在癌が高頻度で診断された.
症例
  • 川口 章吾, 山形 亮, 高橋 誠司, 齋藤 太郎, 村田 有志, 八木橋 操六, 福田 眞作
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1435-1440
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性.タール便を排泄後に意識消失をきたし当院へ救急搬送された.全身の皮膚にCafé-au-lait斑を認めた.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に腫瘍性病変を認め,中心の潰瘍からは出血を認めた.保存的治療後,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行されたが,腫瘍は膵頭部にまで浸潤しており,♯13aのリンパ節に転移を認めた.腫瘍は免疫組織学的検査の結果ソマトスタチノーマであると診断された.
  • 水上 博喜, 北村 陽平, 白畑 敦, 曽田 均, 後藤 哲宏, 齋藤 充生, 石橋 一慶, 木川 岳, 根本 洋, 日比 健志
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1441-1444
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.2009年12月初旬午前にS状結腸癌術前のため下部消化管内視鏡検査にて腫瘍付近にマーキングクリップを行った.夕方に腹痛が増悪し再診した.腹部レントゲン検査,腹部CT検査にてfree airを認め,マーキングクリップによるS状結腸穿孔と診断し,同日緊急手術を行った.切除検体の漿膜面に露出しているクリップ先端が確認できた.稀な下部消化管内視鏡検査の偶発症であるが,マーキングクリップの危険性を念頭に置き処置するべきと考えられた.
  • 田島 佳奈, 白井 孝之, 木嶋 麻衣子, 東 徹, 築根 陽子, 大北 一郎, 渡邊 謙一, 小池 潤, 鈴木 孝良, 松嶋 成志, 梶原 ...
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1445-1450
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性,1990年に全結腸炎型の潰瘍性大腸炎(UC)と診断され,2003年に再燃し,Prednisolone(PSL)にて再緩解導入後Salazosulfapyridine(SASP)と乳酸菌製剤の内服にて緩解維持されていた.2006年血性下痢,腹痛を生じたため大腸内視鏡施行したところ上行結腸に表面平滑な半球状の隆起性病変を多数認め,潰瘍性大腸炎に併発した腸管嚢腫様気腫症(PCI)と診断した.2009年健康診断にて便潜血陽性のため再度大腸内視鏡施行したところ,前回よりも気腫性隆起は融合増大し最大20mm大にも及んだ.UCの経過中に発生したPCIの既報告例は,2009年までで自験例を含め21例にすぎず,稀と思われたため報告する.
  • 大川 清孝, 中村 友之, 上田 渉, 佐野 弘治, 久保 勇記, 井上 健, 追矢 秀人
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1451-1456
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.腹痛が出現し,その後発熱,水様性下痢が出現した.3日後,右下腹部に疼痛が限局し痛みも増強したため入院となった.翌日の大腸内視鏡検査では盲腸に発赤を伴う多発潰瘍と著明な浮腫状隆起を認めた.生検では立ち枯れ像が認められ,細菌培養も陰性であるため,内視鏡像と合わせて虚血性大腸炎と診断した.本例は盲腸部の虚血性大腸炎で非常にまれな疾患であり,一過性型はさらにまれであるため報告した.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 江口 和哉, 仲野 明, 家本 陽一
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1457-1464
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の直腸浸潤は稀な病態で,びまん浸潤型大腸癌との鑑別に苦慮することも多い.内視鏡所見では全周性の狭窄をきたし,全体像の観察や超音波内視鏡の十分な操作も困難であることが多く特徴的所見に乏しい.また,血清PSAやCT,MRIのみから診断することも困難であるため,全周性の直腸狭窄,特に粘膜面に明かな腫隆や潰瘍を指摘できない場合は,積極的に直腸粘膜PSA免疫染色を行うことが有用であると考えられた.
  • 三池 忠, 田原 良博, 山本 章二朗, 橋本 神奈, 山路 卓巳, 安倍 弘生, 楠元 寿典, 蓮池 悟, 永田 賢治, 下田 和哉
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1465-1471
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    52歳,男性.両側下腿の紫斑,腹痛,血便を呈し,Henoch-Schönlein紫斑病と診断した.膵型優位の血清アミラーゼ,リパーゼの上昇が出現し,腹部CTでは軽度膵腫大を認め,急性膵炎を合併した.ステロイド,メシル酸ガベキサートを投与し,Henoch-Schönlein紫斑病,膵炎ともに軽快した.稀ではあるが,Henoch-Schönlein紫斑病に膵炎を合併することがあり,腹痛の原因として膵炎の可能性を念頭に,素早く適切な対応が必要である.
経験
  • 小川 貴央, 伊藤 啓, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 尾花 貴志, 洞口 淳, 越田 真介, 菅野 良秀
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1472-1479
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    【目的】近年,self-expandable biliary metallic stent留置後の偶発症発生原因の一つとされているaxial force(直線化する力)を軽減したPartially Covered WallFlex Biliary RX Stentが市販化された.このステントの初期治療成績を検討することを目的に本研究を行った.
    【方法】本ステントの留置を試みた非切除悪性胆道狭窄21例(平均年齢77±12歳,男女比1.1:1,膵癌12例,胆管癌7例,消化管癌のリンパ節転移2例)の手技的成功率,減黄効果,偶発症,ステント閉塞率を検討した.
    【結果】経乳頭的に留置を試みた19例(平均観察期間102日)は全例で留置に成功し,減黄良好であった.早期および後期偶発症発生率はそれぞれ21%(膵炎3例,胆嚢炎1例),16%(胆嚢炎2例,ステント逸脱2例,胆管内出血1例,ステント閉塞1例),閉塞率は5.3% であった.経消化管的留置を試みた2例でも留置に成功し,(観察期間124日,327日)減黄は良好で,偶発症の発生はみられなかった.
    【結論】本ステント留置での減黄効果は良好であったが,偶発症発生率の低下はみられなかった.
注目の画像
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 松田 浩二, Robert H HAWES, 田尻 久雄
    2011 年 53 巻 5 号 p. 1484-1493
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    EUS-FNAは,1992年にVilmannらにより報告されて以来,その安全性や,正診率の向上と有用性が次第に認められ,広く普及してきている.本稿では,筆者がトレーニング・プログラムに参加し,その後も繁々訪問しているサウスカロライナ医科大学消化器病センター(主任Peter Cotton教授)でのEUS-FNAの変遷と現況を述べた.具体的には,EUS-FNAの効率的研修方法という観点から,まず米国でのトレーニングの概要,次いでその適応と禁忌・必要な解剖学・麻酔法・実際の手技のコツ・穿刺針の選択・術後の管理などについて技術解説した.EUS-FNAは,EUS単体による診断と比べると高侵襲で偶発症のリスクは増加するが,正診率の向上をもたらし,患者への有効な治療の選択に貢献する可能性があると考えられ,今後,その安全性を確立すれば本邦でのますますの普及が望まれる手技であろう.また,EUS-FNAの技術を用いた超音波内視鏡治療も今後十分に期待できる分野であると思われる.
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