日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 鼻岡 昇, 飯石 浩康, 石原 立, 上堂 文也, 竜田 正晴
    2012 年 54 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    バレット食道は胃食道逆流症の終末像の一つと考えられており,長期間経過すると腺癌発生のリスクが高まる.欧米ではバレット腺癌の増加が著しく,本邦でも報告例が増加している.近年,バレット食道の内視鏡診断において拡大観察や画像強調観察などが応用され,より精密な観察が可能となり,その臨床的有用性が多く報告されている.しかしながらバレット食道の定義が各国で異なるという問題点やスクリーニングの必要性,治療法の選択,サーベイランスの間隔など解決すべき問題が多い.
原著
  • 野中 康一, 新井 晋, 伴 慎一, 永田 耕治, 庄野 孝, 落合 康利, 外川 修, 中尾 将光, 西村 誠, 石川 恵子, 佐々木 裕 ...
    2012 年 54 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】われわれが胃のIIa様病変の診断に有用であると報告しているNBI Type分類が,胃腺腫と分化型腺癌の鑑別が必要な褪色調陥凹性病変に対しても有用であるかを検討する.【方法】2008年11月からの16カ月間に,当科にて通常観察及びNBI併用拡大観察を施行した症例の中で,生検Group IIIの褪色調陥凹性病変9例を対象とした.われわれが提唱するType分類を試み,切除標本の病理結果と比較した.同時期に観察しえた隆起型褪色調病変(生検Group III)59例との比較も行った.【結果】切除標本の病理結果は9例すべて高分化型腺癌.NBI併用拡大観察所見はType I:0例,II:0例,III:2例,IIIs:3例,IV:4例.褪色調隆起性病変の中でも陥凹を有するIIa+IIcのような病変とはNBI所見等で類似点を認めた.【結論】当院提唱のNBI Type分類が褪色調陥凹性病変の良悪性鑑別にも有用である可能性が示唆された.
症例
  • 進士 明宏, 武川 建二, 太田 裕志, 小松 健一, 小松 通治, 山村 伸吉, 中村 智次
    2012 年 54 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.主訴は咽頭痛,嚥下困難.3カ月前から咽頭痛が出現,次第に嚥下困難も生じ,当科に精査目的の上部消化管内視鏡検査を依頼された.左披裂部を中心とする潰瘍形成,周囲粘膜の浮腫を認めた.病変部からの生検で悪性所見はなく,形質細胞を主体とする炎症細胞浸潤を高度に認めた.梅毒血清反応強陽性であり,詳細な病歴聴取で梅毒の不完全治療歴が判明したことから3期梅毒に随伴した咽頭病変と診断した.アモキシシリンを投与し,治療2カ月後の上部消化管内視鏡検査では潰瘍は瘢痕化し,周囲粘膜の浮腫が消失し,自覚症状も改善した.内視鏡検査時に遭遇する梅毒病変として,咽頭病変についても注意する必要がある.
  • 上尾 哲也, 石田 哲也, 永松 秀康, 成田 竜一, 高橋 健, 小寺 隆元, 向井 亮, 米増 博俊, 福地 聡士, 清家 正隆
    2012 年 54 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例1は74歳男性.胃穹隆部前壁に粘膜下腫瘤を認めた.症例2は61歳女性.胃体上部前壁に亜有茎性の粘膜下腫瘍様病変を認めた.両症例ともEUSで,第3層に多房性無エコー域を認め,胃Hamartomatous inverted polyp(HIP)と術前診断した.内視鏡的切除にて,粘膜下層に嚢胞状に拡張した腺管群と線維筋成分の増生を認め,いずれも胃のHIPと診断した.胃のHIPは稀な病変で診断が難しいが,EUSはその術前診断に非常に有用であった.また自検例ではESDにて詳細な病理学的検討が可能となり,ESDは今後SMT typeのHIPに有用な治療法となりうると考えた.
  • 大瀬 貴之, 蓬莱 亞矢, 高取 健人, 北嶋 直人, 河野 徳之, 生田 肇
    2012 年 54 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    十二指腸深部の癌はルーチンの上部消化管内視鏡で盲点となり易く,進行した状態で発見されることが多い.今回,胃切除Billroth II法(B-II)再建後の十二指腸水平部癌の1例を腹部CT及び上部消化管内視鏡を行い診断した.周囲への浸潤と転移があり切除不能のため抗癌化学療法を開始した.原因不明の腹痛や貧血を呈するB-II法再建後の症例では,輸入脚を含めた消化管深部の積極的な検査を施行する必要がある.
  • 佐野 明江, 伊藤 康文, 早崎 直行, 池田 庸子, 吉田 健一郎
    2012 年 54 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.糖尿病で近医通院中に胸部X線の左肺腫瘤病変を指摘され当院呼吸器外科で肺癌と診断.左肺下葉切除施行.PSA高値も認め前立腺生検で前立腺癌と診断.ホルモン療法で経過観察となった.同時期に大腸内視鏡検査を当院内科で施行.S状結腸下端に限局した数個のmucosal bridgeと多数の炎症性ポリープが散在.ひとつのmucosal bridge上に炎症性ポリープとは異なるIsp病変を1個認めた.早期大腸癌を疑い内視鏡的に切除し,高分化型腺癌であった.以後同部の再発は認めていない.経過中に進行胃癌も判明し,肺癌,前立腺癌,大腸癌,胃癌の4重複癌であった.
  • 小口 貴也, 渡邉 貴之, 丸山 真弘, 伊藤 哲也, 米田 傑, 丸山 雅史, 児玉 亮, 村木 崇, 新倉 則和, 田中 榮司
    2012 年 54 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は16歳男性.テニスコートを整備中,整地用ローラと鉄柱の間に上腹部を挟まれた.1週間後より食欲不振,嘔気を認め,近医を受診.閉塞性黄疸と診断され,受傷から3週間後当院紹介となった.内視鏡的胆管造影にて中部胆管に径約10mmの平滑な狭窄と肝側胆管の拡張を認め,7F胆管プラスチックステントを1本留置した.1週間後4mm胆管拡張用バルーンにて狭窄部を拡張後,7F胆管プラスチックステントを2本留置とした.3カ月後狭窄部の拡張を確認しステントを抜去,その後9カ月再狭窄を認めていない.腹部鈍的外傷による胆管狭窄は稀であり,治療法は確立されていない.内視鏡的治療が有効であった症例を経験したので報告する.
  • 足立 清太郎, 中原 一有, 奥瀬 千晃, 大石 嘉恭, 重福 隆太, 高木 麗, 路川 陽介, 野元 雅仁, 片倉 芳樹, 伊東 文生
    2012 年 54 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.胃全摘後巨赤芽球性貧血で通院中に総胆管結石を指摘され入院となった.Roux-en-Y法(R-Y法)再建のため有効長200cmのダブルバルーン内視鏡(DBE)にてERCPを行った.乳頭到達は可能であったが,腸管の短縮が困難で汎用スコープへの入れ替えが困難であったため,DBE単独でのERCPを試みた.胆管挿管に難渋したが,カニューレとして先端加工した6Frテーパードカテーテルで挿管し,総胆管内の最大8mm径3個の結石を除去し得た.有効長200cmのDBE単独で経乳頭的に結石除去し得たR-Y法後総胆管結石の1例を経験したので報告する.
経験
注目の画像
手技の解説
  • 杉田 昭, 小金井 一隆, 辰巳 健志, 山田 恭子, 二木 了, 黒木 博介, 荒井 勝彦, 木村 英明, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2012 年 54 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    痔瘻癌は痔瘻の症状が併存するため早期診断が困難で,進行癌で発見されることから予後が不良な疾患である.本邦ではCrohn病症例に合併する肛門病変として痔瘻が最も多い.Crohn病に合併する大腸癌のうち,痔瘻癌を含む直腸肛門管癌が半数以上を占めるのが本邦の特徴であり,合併する痔瘻癌の特徴は基本的に通常の痔瘻癌と同様であるが,自験例の痔瘻癌診断までの罹病期間は平均20年,癌診断時年齢は平均39歳と通常の痔瘻癌に比べて罹病期間に差はなかったものの,若い年齢で発症していた.痔瘻癌発見の動機は粘液の増加,肛門狭窄の増強,腫瘤の出現などの臨床症状の変化であることが多く,長期に経過した痔瘻を合併するCrohn病症例では痔瘻癌の合併があることを念頭に置き,痔瘻の症状の変化,肛門所見に留意して定期的な指診,大腸内視鏡検査,積極的な細胞診,生検を行うことが早期診断と長期生存に重要である.直腸肛門管癌(痔瘻癌を含む)に対する癌サーベイランスプログラムの確立が望まれ,その可否の検討が必要である.
資料
  • 星野 洋, 後藤 秀実
    2012 年 54 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】診療所における内視鏡感染対策の現状を知り,その問題点を明らかにすることである.【方法】名古屋大学消化器内科同門会に所属し診療所開業している180名に対しアンケート調査を行った.【結果】内視鏡実施施設;99施設,内視鏡件数;月平均34件.洗浄消毒ガイドライン(GL)を読んだことがある;57%.消毒薬;グルタラール48%,電解酸性水29%.スコープの適切な洗浄消毒を行っている施設;65%.生検鉗子;再生89%,ディスポ11%,再生鉗子を超音波洗浄・滅菌して再使用している施設;22%.検査時の着用率;手袋76%,マスク29%,ゴーグル・防水エプロン10%以下.GLを既知の施設;未既知の施設に比し有意に適切なスコープの洗浄・消毒を施行.【結論】内視鏡の感染対策を進めていく上での課題としてGLの周知と理解が重要である.
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