日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 2 号
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総説
  • 樫田 博史
    2012 年 54 巻 2 号 p. 235-243
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    大腸病変におけるNBI非拡大観察の病変検出能に関しては意見が分かれるが,腫瘍・非腫瘍の鑑別において特にNBI拡大観察は,色素内視鏡に匹敵することが報告されている.癌の深達度診断能も良好で,治療方針の決定に有用である.しかし,所見分類が統一されておらず,血管模様のみを評価するのか,粘膜模様を加味するのか,意見が分かれている.現在までのところ色素拡大観察によるpit pattern診断の方が若干正診率が高い.NBI拡大観察は,潰瘍性大腸炎関連腫瘍の診断にも寄与することが期待されている.
原著
  • 吉井 新二, 石垣 沙織, 塚越 洋元, 山本 桂子, 岡原 聡, 小平 純一, 松本 岳士, 奥田 博介, 高橋 宏明, 穂刈 格, 藤田 ...
    2012 年 54 巻 2 号 p. 244-252
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】外科切除例でのリンパ節転移の検討に基づいてガイドラインの内視鏡的摘除後追加治療の適応基準が示されているが,その長期予後は充分検討されていない.われわれは大腸SM癌内視鏡摘除例の予後解析を行いガイドラインの妥当性を検証した.
    【対象・方法】内視鏡的摘除後に追加治療を行わなかった大腸SM癌192例を対象とした.適応基準に基づいて根治群,非根治群にわけて検討した.
    【結果】根治群では局所粘膜内再発1.3%のみであったが,非根治群では20.0%(局所粘膜内再発2例,局所SM以深再発8例,遠隔転移4例)に再発し,非根治群のみに原癌死4例を認めた.再発までの平均期間は22.1カ月であった.
    【結論】根治群はpM癌に準じた取扱いでよい可能性が示唆された.また,非根治群を追加治療しない場合,3-5年は再発・転移のサーベイランスを考慮し,その際には特に粘膜下再発に留意すべきである.
症例
  • 遠藤 文司, 勝島 慎二, 水本 吉則, 太田 励, 江坂 直樹, 友野 輝子, 北岡 修二, 島 伸子, 前川 高天, 南口 早智子
    2012 年 54 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは多臓器を侵す原因不明の肉芽腫性疾患であるが,消化管に発生することは比較的稀とされる.今回,われわれは胃の粘膜下腫瘍様病変に対して完全生検目的にて内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し,標本の病理学的検討と臨床経過を含めてサルコイドーシスと確定診断を得ることができた症例を経験した.サルコイドーシスに対してESDで診断確定を行った既報告例はなく,完全生検が必要とされ粘膜下層までに病変が局在している病変に対してはESDが有力な診断確定の方法となると考えられた.
  • 岡本 耕一, 岡村 誠介, 井本 佳孝, 木村 哲夫, 竹内 尚, 宮本 弘志, 四宮 寛彦, 岡久 稔也, 和田 哲, 高山 哲治
    2012 年 54 巻 2 号 p. 260-266
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.検診にて異常を指摘され当科に紹介された.内視鏡検査にて十二指腸球部に細長い突起物を認め,内視鏡的ポリペクトミーを行った.この突起物は,病理組織学的に正常十二指腸粘膜で覆われBrunner腺の増生と拡張した静脈を有する粗な粘膜下組織を認め,内部に大小の嚢胞状に拡張した腺が認められた.本症例は稲本らやEzoeらにより提唱されたintraluminal duodenal protrusionやElongated non-neoplastic duodenal polypなる概念に相当するものと考えられた.
  • 高田 淳, 西脇 伸二, 林 基志, 浅野 貴彦, 岩下 雅秀, 田上 真, 畠山 啓朗, 林 隆夫, 前田 晃男, 齋藤 公志郎
    2012 年 54 巻 2 号 p. 267-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性.下腹痛・下痢にて入院し,入院翌日より血便・発熱を認めた.経肛門的シングルバルーン小腸内視鏡(SBE)を施行し,Bauhin弁から約10cmの終末回腸より口側約50cmにわたり,全周性潰瘍・びらん・粘膜脱落・粘膜橋を認めた.内視鏡下造影では,Kerckring襞消失,拇指圧痕像を認め,虚血性小腸炎と診断した.2週後にSBEを再検し,所見改善認めず,回盲部切除術を施行した.病理組織では,回結腸動脈の分枝に粥腫血栓性閉塞を認めた.急性期の特発性虚血性小腸炎を内視鏡的に観察した例はまれであるが,その診断的意義は大きく,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 藤澤 貴史, 西川 真那, 上山 茂充, 関 保道, 寺西 哲也, 大内 佐智子
    2012 年 54 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    患者は64歳女性で主訴は繰り返す下血である.糖尿病性腎症で透析導入となった際,肝硬変および肝細胞癌と診断された.入院8カ月前に下血が出現し,徐々に頻回となったが数回の内視鏡検査で原因不明であった.カプセル内視鏡所見では小腸に異常を認めなかったが左側横行結腸より肛門側に血液を認め,下部消化管内視鏡検査にて同部位に約1cmの拍動を有する発赤調小隆起を認めた.血管造影にて下腸間膜動脈から分岐する脾彎曲近傍の辺縁動脈と上腸間膜動脈から分岐する中結腸動脈の辺縁動脈の境界部にnidusを認め,早期静脈還流もあり,大腸動静脈奇形と診断した.TAEやクリップ止血を行ったが完全には止血不可能で手術を行った.
  • 衣笠 秀明, 河本 博文, 野間 康宏, 園山 隆之, 堤 康一郎, 藤井 雅邦, 栗原 直子, 加藤 博也, 岡田 裕之, 山本 和秀
    2012 年 54 巻 2 号 p. 281-287
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性.前医で重症急性膵炎を加療された後,感染性膵周囲膿瘍の治療目的で当院へ搬送された.感染性膵周囲膿瘍に対して経皮的ドレナージ,経胃的ドレナージにより約2年の経過で改善が得られたものの,経過中(膵炎発症426日目),重症急性膵炎の影響による胆道狭窄で黄疸が生じた.しかし,末梢胆管拡張は乏しく炎症による十二指腸狭窄も併発し,経皮経肝胆道ドレナージ術(PTBD)も内視鏡的経乳頭胆道ドレナージ術(EBD)も困難なため,超音波内視鏡下胆道ドレナージ(ESBD)を施行した.膵炎発症874日目,炎症消失に伴い,ステント抜去が可能となった.今後ESBDのさらなる適応拡大の可能性が示唆された.
  • 土井 俊文, 趙 栄済, 藤井 恒太, 宮田 正年, 小木曽 聖, 加治 順子, 真田 香澄, 高谷 宏樹, 益澤 明, 高見 史朗
    2012 年 54 巻 2 号 p. 288-295
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.主訴は呼吸困難,全身倦怠感.慢性膵炎の既往あり.血清Amylaseは483IU/Lと高値,CTで左胸水と縦隔に進展した膵嚢胞,主膵管拡張を認めた.胸水はAmylaseが5,580IU/Lと高値で,胸腔穿刺ドレナージにより減少した.約6週間の保存的加療で嚢胞は縮小せず,経乳頭的に5Fr×12cm膵管ステントを挿入した.約4カ月後のMRCPで嚢胞は消失し,約6カ月後にステントを抜去した.その後の経過観察で再発は認めていない.保存的治療抵抗性の縦隔内膵仮性嚢胞が,内視鏡的経乳頭的ドレナージのみで消失し膵管ステント抜去が可能となった本邦報告例はなく,文献的考察を加え報告する.
経験
  • 横井 佳博, 金子 猛, 菊山 正隆
    2012 年 54 巻 2 号 p. 296-299
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は主膵管拡張を伴った肝腫瘍の精査のため,ERCPを行ったところ,胆管挿入に難渋し,膵炎予防のため,主乳頭に片側フラップステント(5Fr)を挿入した.その際,膵管内にステントが迷入した.主乳頭の浮腫が高度のため,即時の回収を断念した.可及的にガイドワイヤー下に新たに両側フラップ膵管ステント(5Fr)を追加挿入し,主乳頭の膵液流出路を確保した.経過は良好であり,15日目に迷入ステントをバスケット鉗子で回収した.膵管ステントの追加挿入は容易に施行でき,迷入ステントの回収に十分な治療体制が整うまでの間,一時的な膵炎の回避処置として有用と思われる.
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新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 熊本 正史, 江森 啓悟, 佐田 通夫
    2012 年 54 巻 2 号 p. 304-313
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤のすだれ様血管走行部は大多数のすだれ型と少数のパイプライン型に2分類される.内視鏡的巨木型食道静脈瘤は門脈造影上Pipeline stemを呈する.この巨木型食道静脈瘤即ちPipeline varixは造影検査上もすだれ様静脈を介さない一本の食道静脈瘤で内視鏡的には口側高位では多分岐するが胃噴門部小弯より連続して一条のみが大径で高位の食道静脈瘤を形成するものである.また,亜型のPipeline varixも存在する.診断は通常内視鏡検査でも可能であるが,経皮経肝門脈造影や硬化療法時の内視鏡的静脈瘤造影,超音波内視鏡検査などで確診し同時に供・排血路も把握しておく.これを術前診断せずに内視鏡治療を始めると難治であるばかりでなく危険である.しかし内視鏡的結紮術併用硬化療法(endpscopic injection sclerotherapy with ligation;EISL)の導入により安全な治療が可能になった.
資料
  • 山本 頼正, 藤崎 順子, 平澤 俊明, 石山 晃世志, 吉本 和仁, 植木 伸江, 千野 晶子, 土田 知宏, 星野 恵津夫, 比企 直樹 ...
    2012 年 54 巻 2 号 p. 314-323
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】適応拡大した未分化型胃癌に対するESDの治療成績を検討した.
    【方法】2003年-2008年に20mm以下,UL(-),粘膜内癌と術前に診断しESDを施行した58例を対象とした.
    【結果】一括切除率98%,一括完全切除率90%,治癒切除率79%,平均治療時間70分,出血8.6%,穿孔3.4%であった.非治癒切除の要因は粘膜下層浸潤が最も多かった.病理診断で適応拡大条件を満たす病変に限ると治癒切除率98%であった.切除後の肉眼所見による腫瘍径と組織所見での腫瘍径差の比較では,適応拡大条件を満たす病変の96%が±5mmの腫瘍径差で,組織所見が肉眼所見より5mm以上大きい症例はなかった.
    【結論】未分化型胃癌に対するESDは技術的には可能であり,術前の範囲診断から5mm以上離して切除すれば高い治癒切除率が得られた.非治癒切除例は粘膜下層浸潤が多く,深達度診断に課題が残った.
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