日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 八尾 隆史, 平橋 美奈子
    2012 年 54 巻 3 号 p. 415-423
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    特発性腸間膜静脈硬化症は比較的まれな疾患であるが,現在ではひとつの疾患概念として定着している.平均年齢60歳代で,やや女性に多く,日本人を中心としたアジア人のみが罹患している.その病変は回盲部から横行結腸までが最も多いが,S状結腸・直腸へも広がっている症例もみられる.腹部単純X線写真では右側腹部に線状石灰化像あるいはCT検査にて腸管壁および腸間膜に一致して石灰化像を認めるのが典型的である.組織学的には静脈壁の著明な線維性肥厚と石灰化,粘膜下層の高度の線維化,粘膜固有層の著明な膠原線維の血管周囲性沈着などが特徴的所見であり,びらんや潰瘍部以外では炎症所見に乏しいことも重要なその特徴の一つである.無症状の場合は保存的に管理し,自覚症状の出現や潰瘍・狭窄を伴った場合は外科的切除されるのが一般的である.
    その原因は不明であるが,漢方薬を含めた何らかのToxic agentが特発性腸間膜静脈硬化症の発症の要因の一つとして注目されている.今後,発症原因が解明され予防法が確立されることを期待したい.
原著
  • 冨永 桂, 土山 寿志, 金子 佳史, 辻 国広, 稲垣 聡子, 吉田 尚弘, 早稲田 洋平, 辻 重継, 林 宣明, 鳴海 兼太, 三林 ...
    2012 年 54 巻 3 号 p. 424-431
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】胃腫瘍は病変が多発することが多く,内視鏡検査時の見落としが問題となる.今回は,高解像度スコープ使用下での3年以内に指摘された多発胃腫瘍の偽陰性病変について検討した.【対象】当院でESDを施行した胃腫瘍501例.【結果】多発94症例は単発407症例と比し,背景粘膜が高度萎縮(0-2以上)に見られ,高齢者に多かった.多発症例は72.3%が他院からの紹介例であり,そのうち他院で30.7%が偽陰性であった.さらに当院での再検観察でも14.7%が偽陰性であった.また,当院発見26症例では29.8%が偽陰性であった.偽陰性は特に10mm以下のサイズの小さな病変に多かった.【結語】高齢で高度萎縮粘膜症例に多発病変が多く,サイズの小さな病変が偽陰性となりやすい.以上を留意した丁寧な検査が必要であり,術前の再検査により偽陰性病変を減少させる可能性がある.
症例
  • 堂垣 美樹, 住友 靖彦, 山下 幸政, 山田 聡, 松本 善秀, 船越 太郎, 木村 佳人, 高田 真理子, 三上 栄, 織野 彬雄
    2012 年 54 巻 3 号 p. 432-439
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.10年前に食道癌に対し食道亜全摘,胸骨後胃管再建術施行.胸痛を主訴に紹介受診し,精査にて胃管潰瘍の心膜穿孔による心嚢気腫と診断した.外科的心嚢ドレナージを施行し保存的加療を行ったが,ドレナージ不良部位に心嚢膿瘍を形成した.このため内視鏡的に胃管切開ドレナージを行ったところ,心嚢膿瘍は消失し,速やかに臨床症状の改善を得た.心嚢膿瘍に対する内視鏡的ドレナージは報告例がなく,貴重な症例と考えられた.
  • 松田 昌悟, 古志谷 達也, 高井 孝治, 元好 貴之, 山下 靖英, 桐島 寿彦, 吉波 尚美, 新谷 弘幸, 浦田 洋二, 吉川 敏一
    2012 年 54 巻 3 号 p. 440-444
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    びまん性胃粘膜下異所腺は切除胃の数%に認められる比較的稀な疾患である.本症は粘膜面に高頻度に胃癌が合併することが報告されており,paracancerous lesionと考えられている.今回,びまん性胃粘膜下異所腺を伴った早期胃癌に対してESDによる一括切除を施行した1症例を経験した.異所腺が嚢胞状に拡張し胃粘膜下嚢胞を形成した場合,内視鏡検査時に併存胃癌の肉眼型や深達度診断に影響を与える可能性があり,術前のEUS診断が重要である.また,本症には高頻度に多発胃癌が合併することが報告されており,併存胃癌の内視鏡治療後には厳重な経過観察が必要である.
  • 木村 吉秀, 稲垣 佑祐, 坂本 知行, 足立 和規, 山川 慶洋, 平野 敦之, 河合 宏紀, 土田 研司, 妹尾 恭司, 勝見 康平
    2012 年 54 巻 3 号 p. 445-450
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の女性.自然分娩にて4,324gの女児を出産した.分娩時にはクリステレル圧出法による腹壁の圧迫が行われた.出産翌日より盲腸から上行結腸の巨大結腸症をきたし,拡張した腸管には全周性の粘膜障害を認めたため,内視鏡を用いて経肛門的にイレウス管を盲腸に留置した.減圧術は奏功し,第12病日の内視鏡検査では粘膜障害はほとんど消失していた.患者の盲腸は腹部中央部へと遊離した移動盲腸であり,盲腸が腹壁と子宮底との間に挟まれた状態でクリステレル圧出法による圧力が加えられ,巨大結腸症が発症したと推察された.移動盲腸とクリステレル圧出法による過度の外圧は,母体側の腸管障害のリスクになると考えられた.
  • 細田 桂, 五十嵐 高広, 青木 真彦, 城戸 啓, 河島 俊文, 田村 光, 小島 正夫, 雨宮 哲
    2012 年 54 巻 3 号 p. 451-454
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    60歳女性.便秘,残便感があり近医を受診.注腸造影検査にて直腸内に75mm大の便塊があり,当院紹介.約35年前に痔瘻の手術を行っている.腹部単純レントゲン写真では,直腸内に巨大なhigh density massを認めた.大腸内視鏡検査にて直腸内に巨大な便塊があり,周囲の糞便を取り除くと中央に硬い腸石が存在した.内視鏡下にHo:YAG-LASERを使用し,腸石に穴をあけるようにして破砕した.最終的には麦粒鉗子を使用し破砕したのち,肛門から摘出した.腸石の成分はリン酸マグネシウムアンモニウムであった.リン酸マグネシウムアンモニウムによる腸石の報告はまれであり,報告する.
  • 小寺 隆元, 上尾 哲也, 石田 哲也, 永松 秀康, 高橋 健, 占部 正喜, 成田 竜一, 向井 亮, 米増 博俊, 若杉 健三
    2012 年 54 巻 3 号 p. 455-459
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は31歳女性.5年前より漢方薬を内服していた.3年前より原因不明の右下腹部痛を自覚し,今回当院受診した.腹部単純X線検査にて右下腹部に線状の石灰化を認め,腹部CT検査にても,上行結腸周囲の血管に石灰化を認めたため,特発性腸間膜静脈硬化症が疑われた.大腸内視鏡検査では,粘膜所見は乏しいものの,盲腸から上行結腸にかけての生検組織で粘膜固有層の間質に膠原線維の沈着と静脈壁の線維性肥厚を認め,特発性腸管膜静脈硬化症と診断した.本疾患は,中高年に多い疾患ではあるが,自験例のように若年でも起こりうる.原因不明の腹痛を来たす疾患の一つして,年齢を問わず,内視鏡医は考慮すべきである.
  • 渥美 裕之, 古松 了昭, 桐山 勢生, 熊田 卓, 谷川 誠, 久永 康宏, 曽根 康博, 豊田 秀徳, 金森 明, 荒川 恭宏
    2012 年 54 巻 3 号 p. 460-465
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は,88歳男性で黄疸の精査のため紹介され入院となった.入院時の血液生化学検査より閉塞性黄疸と診断しERCPで総胆管に閉塞を認めEST,IDUS,ENBDを行った.一週間後に結石除去のためERCPを施行した.その際に,乳頭の切開部より出血を認めた.内視鏡的に止血できずTAEにて止血を行った.TAEにおける塞栓物質は1度目に金属コイルを用いたが止血不十分であったため2度目はヒストアクリルを用いて止血が得られた.EST後の出血に対して,内視鏡的な止血術が困難な場合には,TAEは有用な止血法であり,ヒストアクリルは有効な塞栓物質の一つと考えられた.
  • 足立 和規, 田中 創始, 小林 佑次, 林 伸彦, 石井 紀光, 金澤 太茂, 佐々木 誠人, 中尾 春壽, 春日井 邦夫, 米田 政志
    2012 年 54 巻 3 号 p. 466-473
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    27歳女性.心窩部痛にて受診.血液生化学的検査,画像所見より石灰乳胆汁の総胆管への流出と診断し,内視鏡的胆管ドレナージ(EBD)を施行.胆管プラスチックステント留置時に石灰乳胆汁の排出が確認され,胆管造影では総胆管結石も確認された.しかし第2病日,ステント閉塞による黄疸の悪化のため,内視鏡的乳頭括約筋バルーン拡張術(EPBD)を行い,残存していた石灰乳胆汁と総胆管結石を除去した.後日待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,胆嚢内に結石とそれに付着する練り歯磨き状の石灰乳胆汁を認めた.若年者に発症した石灰乳胆汁による閉塞性黄疸に対し,EPBDによる除去術が奏功した1例を経験したので報告する.
注目の画像
手技の解説
  • 伊藤 啓, 洞口 淳, 藤田 直孝
    2012 年 54 巻 3 号 p. 476-487
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    胆道疾患に対するERCPを用いた内視鏡治療において,胆管挿管は重要な最初のステップである.挿管困難例を時に経験するが,この克服に現在様々な手法が開発されている.Wire-guided cannulation法は,従来の造影法に比較して挿管率の向上と膵炎発症率の低減が期待されている.胆管挿管が困難で膵管へのアクセスが可能な場合には,膵管ガイドワイヤー法が有用である.P-GW法とWGC法を組み合わせた手法(Double guidewire法)も時に有用である.これらで胆管挿管が困難な場合には,可能なら膵管ステントを留置しprecutを行うが,実施には十分なトレーニングが必要である.本稿では,高い胆管挿管率と低い偶発症発生率を目指した手技を概説する.
資料
  • 前谷 容, 浮田 雄生, 南部 知子, 新後閑 弘章, 大牟田 繁文, 遠藤 琢郎, 高橋 啓
    2012 年 54 巻 3 号 p. 488-497
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】悪性gastric outlet obstruction(GOO)治療における2種類のSEMSの治療効果の比較検討を行った.
    【方法】3年間にわたり前向きに53例の症候性GOO患者に対しNiti-S stent(NS)を留置した.その治療結果を過去5年間に31例に対してUltraflex stent(UF)を使用した治療結果との比較を行った.本研究における評価項目は臨床効果,合併症,再治療における両群間の比較とした.
    【結果】両群の患者背景には差はなかった.手技的成功率と臨床的成功率は両群で差はなかった.NSではUFと比較して有意に手技時間が短かった(15分 vs. 40分;P<0.0001).統計学的有意差はないものの,合併症発生率はNSでやや高率であった(16% vs. 25%).重大合併症は両群とも2例ずつ発生した.再治療はNS群でより高率に要した(3% vs. 21%;P=0.0485).生存期間(中央値)はUF群で53日,NS群で88日であった.
    【結論】UFはNSと比べ再治療必要率は低率であったが,手技時間は著しく長かった.Through-the-scope法によるNS留置はover-the-wire法によるUS留置と比べて患者に負担のない手技である.
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