日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 5 号
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会長講演
  • 吉田 茂昭
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1605-1617
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    平成19年3月まで約30年間にわたって国立がんセンター(現国立がん研究センター)の築地,柏の両キャンパスで消化器内視鏡の臨床に携わってきたが,とりわけ画像診断については常に新たな宿題に直面せざるを得なかった.一つ一つ夢中で取り組んでいるうちに,今日まで辿り着いた感があるが,この度,会長講演の機会を得て,その概略を示させて頂いた.主な論点は以下の通りである.
    (1)早期胃癌の多くは内視鏡的に慢性胃炎に類似した所見から発している.(2)その的確な診断指標を求め,色調の定量化(測色)が可能な電子内視鏡の開発や分光分析データの解析を試みたが,臨床的有用性は得られなかった.(3)しかし,分光解析時に,ある狭帯域で癌と非癌部の分光パターンが異なることに気づいたことで,狭帯域(NBI)内視鏡のアイデアが得られた.(4)試作機が完成し,基礎的研究を加える一方,有用性の評価に際しては必ず臨床試験によるとした結果,胃炎様悪性所見の鑑別診断を含めて,その臨床的有用性を次々と証明し得た.(5)NBI拡大観察では生体下で時間的変化を含む診断情報が得られるが,今後の方向性は明らかで,超拡大観察を含めたendoscopic pathology(内視鏡的生体病理診断)がその目標となろう.
総説
  • 平野 賢二, 多田 稔, 伊佐山 浩通, 小池 和彦
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1618-1626
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎の内視鏡診断の中心的役割を果たすのが内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)による特徴的な主膵管不整狭細像の確認である.膵管狭細所見はびまん性,限局性のいずれの場合もあり,またスキップして存在することもある.膵病変が膵尾部に限局している場合には,途絶様所見を呈する頻度が高くなる.狭細所見以外には狭細部の分枝膵管描出の有無,尾側膵管の拡張の程度などが膵癌との鑑別に役立つ.胆管の硬化性変化,十二指腸乳頭部の腫大は比較的頻度が高く,ERCP時には注意を要する.超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNAB)による自己免疫性膵炎の診断能は良好とは言えないが,膵癌との鑑別にはきわめて有用な検査である.
原著
  • 岡信 秀治, 田中 友隆, 久賀 祥男, 中村 有希, 吉福 良公, 藤野 初江, 北村 正輔, 守屋 尚, 大屋 敏秀
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1627-1632
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    当院にて静脈瘤出血を除く上部消化管出血で緊急内視鏡検査を施行した307例を,70歳以上・未満の2群に分けて併存疾患や服薬歴,H. pylori感染の有無など患者背景とともに,内視鏡診断,止血術の有無,輸血の有無,死亡率についてそれぞれ比較検討した.高齢者群で女性の割合が有意に増加し,原因疾患として両群とも胃潰瘍が最も多く,次いで十二指腸潰瘍が多かった.高齢者群において併存疾患を有する割合,抗凝固薬・抗血小板薬・NSAIDsの服薬,輸血を必要とした割合が有意に高率であった.一方,H. pylori感染の有無では高齢者群で低値で,止血術の有無では両群間に有意差は認めなかった.死亡率は高齢者群で有意に高率で,悪性疾患や重篤な併存症の存在がその一因と考えられた.また,高齢者群においては男性で有意に死亡率が高かった.
症例
  • 青木 敬則, 野村 昌史, 三井 慎也, 田沼 徳真, 金子 昌史, 友成 暁子, 山崎 大, 永井 一正, 真口 宏介, 篠原 敏也
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1633-1637
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性.体重減少を主訴に当センターを受診.上部消化管内視鏡検査で胃体下部に隆起性病変を認めたため,精査・加療目的に入院となった.精査の結果,分化型の粘膜内癌と診断し,ESDを施行した.病理組織学的には深達度Mの高分化管状腺癌であったが,粘膜内のリンパ管に癌の浸潤を認めた.幽門側胃切除術(D1+α郭清)を追加したが,腫瘍の遺残はなかった.
    M,Post,Type 0-I,18×17mm,tub1,pT1a(M),ly1,v0,pN0(0/23),pPM0(60mm),pDM0(80mm),Stage IAと最終診断した.リンパ管侵襲陽性の分化型粘膜内癌は稀であり,貴重な症例と考えられた.
  • 廣岡 知臣, 廣岡 大司, 益岡 優, 佐野 ひろみ, 川村 実里, 半野 元, 武田 修身, 高柳 成徳, 土細工 利夫, 西居 孝文
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1638-1643
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    患者は74歳の寝たきりの女性.繰り返す嘔吐を主訴に当院に救急搬送された.緊急で施行した腹部CTにて胃の著明な拡張を認め,胃軸捻転症と診断した.内視鏡にて捻転解除を試みるも不可能であったため,腹腔鏡下手術を行った.術中所見ではMorgagni孔に大網が嵌頓し,胃が短軸性に捻転していた.Morgagni孔ヘルニアに起因する胃軸捻転症と診断し,腹腔鏡下に整復を行った.成人では比較的まれなMorgagni孔ヘルニアに起因した成人胃軸捻転症を経験した.
  • 澁谷 充彦, 市場 誠, 中堀 輔, 林 史郎, 山本 克己, 東本 好文, 足立 史朗
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1644-1650
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.上部消化管内視鏡で,十二指腸球部に顆粒状隆起病変を認めた.組織検査で確定診断がつかなかったが,尿素呼気テストは陽性で,MALTリンパ腫の可能性を考え,Helicobacter pyloriの除菌を施行.3度目の組織検査で十二指腸球部MALTリンパ腫と診断.尿素呼気テストは陰性化し,一時病変は縮小したが,その後病変は増大を認めた.二次療法として1回2Gy,週5回,計30Gyで放射線治療を施行し,病変は消失した.十二指腸MALTリンパ腫においても,放射線治療は有効と考えられた.
  • 原 明史, 宮澤 祥一, 鈴木 剛, 相田 久美, 江崎 行芳
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1651-1655
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性.ランソプラゾール内服中に水様性下痢が出現した.大腸内視鏡検査で下行結腸,S状結腸から直腸に縦走傾向を呈する線状の引っかき傷様の所見が存在し,いわゆるcat scratch colonの内視鏡所見を呈していた.生検で粘膜上皮直下にcollagen bandを認め,collagenous colitisと診断.ランソプラゾール中止により臨床症状は速やかに改善した.Cat scratch colonを呈した示唆に富むcollagenous colitisの1例と考えられた.
  • 平本 圭一郎, 黒木 実智雄, 中野 絵里子, 菅野 奈々, 松村 吉史, 三浦 敦司, 菊地 義文, 平川 秀紀, 松田 幹夫, 井上 隆
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1656-1661
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.スクリーニングの大腸内視鏡検査で上行結腸にアニサキスの刺入した腫瘤性病変が認められた.検査の2日前に自作のイカの塩辛を食べていたが無症状であった.腫瘤性病変からの生検でGroup 5(tub1>tub2)と診断された.内視鏡的に深達度SM massiveが否定できず,本人の希望もあり腹腔鏡下回盲部切除が施行された.病理組織では先進部は低分化な腺癌による800μmのSM浸潤をきたしていた.アニサキスが刺入した腫瘤性病変を認めた際には炎症性腫瘤の他,腫瘍の可能性も念頭に慎重な鑑別が必要と考えられた.
  • 中路 聡, 平田 信人, 稲瀬 誠実, 小林 正佳, 白鳥 俊康, 杤谷 四科子, 岩田 麻衣子, 藤井 宏行, 石井 英治, 伊藤 裕志
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1662-1670
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    尾状葉の肝細胞癌に対し超音波内視鏡下エタノール注入療法を施行し,腫瘍制御が良好であった1例を経験したため報告する.症例は67歳,女性.56歳時にC型肝硬変を指摘され,61歳時にS5/6の肝細胞癌加療歴あり.S1に23mmの再発腫瘤が指摘され治療目的に入院した.TACEを施行したが治療効果不十分であった.経皮的な穿刺ルートの確保が困難であり超音波内視鏡下エタノール注入療法を施行した.無水エタノールを計2回,総量22ml注入した.評価のCTで腫瘍の早期濃染像は消失し完全壊死所見と判断した.尾状葉の肝細胞癌への新しいアプローチ法による局所治療として安全かつ有効な治療法と考えられた.
経験
注目の画像
手技の解説
  • 渡部 宏嗣, 山田 篤生, 岡 志郎, 田中 信治, 小池 和彦
    2012 年 54 巻 5 号 p. 1678-1685
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    2007年に新たな小腸検査法として,Akerman PAらは,スパイラル内視鏡検査(Spiral Endoscopy;SE)を報告した.海外では既に10,000例以上の症例に施行されている.SEは,細径の内視鏡と,内視鏡に装着する先端にらせん状の突起がついたオーバーチューブによって構成される.SEは,検査医とオーバーチューブ介助者の2人法で行う.SEは,挿入時にはオーバーチューブを時計回りに,抜去時には反時計周りに回転させながら行う.検査のすべての段階で,内視鏡をオーバーチューブ先端から最低20センチ以上突出させて行う必要がある.すべての操作は原則として直視下に行う必要がある.われわれが現在までに行ったスパイラル小腸内視鏡検査31例中16例に小腸病変を認めた.1例にマロリーワイス症候群を来たした.検査中比較的多量の鎮静剤も必要であり,今後更なる検査手技の習熟・改善が必要と思われる.
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