日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 7 号
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総説
  • 河上 洋, 加藤 元嗣, 平野 聡, 坂本 直哉
    2012 年 54 巻 7 号 p. 1975-1990
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌(hilar cholangiocarcinoma:HCA)に対する術前胆道ドレナージ術(preoperative biliary drainage:PBD)は必要なのか?といったクリニカルクエスチョンに対する明確な答えはいまだない.近年,膵頭十二指腸切除術施行に際しては,PBDは必要ない,とのコンセンサスが得られつつある.しかし,広範囲肝切除術を施行した肝門部胆管癌では術後合併症による死亡率が5%前後と高率であり,それらの主な死因が肝不全であることから,現時点では高度黄疸例に広範囲肝切除術を予定した場合にはPBDを行い,肝機能の回復後に手術を行うことが推奨される.しかし,PBDの適応に関しては現在のところ明確な基準はない.HCAに対するPBDには経皮経肝胆道ドレナージ術(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)あるいは内視鏡的胆道ドレナージ術(endoscopic biliary drainage:EBD)が挙げられるが,これまでに肝門部胆管癌に対するPBDの無作為化比較試験が行われていないこともあり,いずれを行うかについても,いまだ一定のコンセンサスは得られていない.近年,EBDの施行例が増加し,その有用性が報告されつつある.本稿ではPBDの意義,変遷,現状と展望を解説する.
原著
  • 本島 柳司, 宮崎 信一, 青木 泰斗, 中島 光一, 岡崎 靖史, 赤井 崇, 上里 昌也, 井上 雅仁, 堀部 大輔, 岡住 慎一, 島 ...
    2012 年 54 巻 7 号 p. 1991-1999
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    【背景】胸部食道切除胃管再建術を行った症例の残食道炎(RE-re)発生について,胃管pHと胃管粘膜の状態との関連性を検討した.【方法】術後上部消化管内視鏡検査時に胃管粘膜生検および胃管pH測定を施行した117症例を対象とした.RE-reはロサンゼルス分類(改)(LA分類)を用いて分類し,pHは鉗子孔挿入型微小ガラスpH電極を用いて胃管上部で測定した.生検は胃管の上部下部の2カ所で行い,Helicobacter pyloriHp)感染・萎縮・腸上皮化生(IM)の各項目において検討した.【結果】Hpの感染が進行した症例はpHが高値であり,RE-re発生が減少していた.同様に,萎縮およびIMが進行した症例はpHが高値であり,RE-re発生が減少していた.【結論】RE-reの発生はHp感染・胃管粘膜の状態と密接な関係があるものと考えられた.
症例
  • 岩谷 修子, 根引 浩子, 丸山 紘嗣, 平松 慎介, 末包 剛久, 山崎 智朗, 平良 高一, 佐野 弘治, 佐藤 博之, 福島 裕子
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2000-2005
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    症例は,76歳男性.主訴は心窩部つかえ感.腹部超音波検査とCT検査で,胃体部と膵体部の間に7cm大の腫瘍を認め,上部消化管内視鏡検査で,胃体上部後壁に大きな粘膜下腫瘍と,胸部下部食道に7mm大の0-IIa病変を認めた.胃粘膜下腫瘍の超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診および生検にて,扁平上皮癌と診断された.食道病変は,超音波内視鏡所見より深達度smの表在癌と思われ,生検にて扁平上皮癌であった.以上より,食道表在癌の胃壁内転移と診断した.巨大な胃壁内転移をきたした食道表在癌の稀な1例を報告した.
  • 野中 敬, 結束 貴臣, 小川 祐二, 今城 健人, 柳澤 昇吾, 斯波 忠彦, 坂口 隆, 厚川 和裕, 杜 雯林, 高橋 ...
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2006-2013
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性.検診の上部消化管造影検査にて異常を指摘され,精査目的で当科受診となった.上部消化管内視鏡検査にて,胃体下部大彎に30mm大の特異な形態を呈する隆起性病変が観察された.生検組織所見は,胃腺窩上皮類似の異型細胞が大小の腺管を形成している像を認めたが,良悪性鑑別診断は困難であった.診断治療目的に,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し,病変を一括切除した.切除標本を用いた病理組織所見は,病変の大半は胃型腺腫と診断されたが,病変粘膜内に異型の強い不整腺管を多中心性に認め,同部を腺癌と診断した.
  • 小林 知樹, 桑井 寿雄, 木村 治紀, 山本 宗平, 柾木 慶一, 平田 真由子, 山口 厚, 河野 博孝, 倉岡 和矢, 谷山 清己, ...
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2014-2021
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.急性腎盂腎炎にて入院中にタール便を認め,消化管出血の疑いで当科紹介となった.シングルバルーン小腸鏡検査で十二指腸上行部に表面に血腫の貯留を伴う長径30mmで分葉結節状の有茎性ポリープを認め,ポリペクトミーを行った.病理学的には異型のない腺上皮の過形成と粘膜筋板の樹枝状増生を認めた.特徴的な病理所見に加え,消化管ポリポーシスの家族歴や皮膚・粘膜の色素沈着がなく,その他消化管にポリープのないことから孤立性Peutz-Jeghers型ポリープと診断した.十二指腸の孤立性Peutz-Jeghers型ポリープは比較的稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 采田 憲昭, 多田 修治, 神尾 多喜浩, 吉田 健一, 古田 陽輝, 上原 正義, 江口 洋之, 工藤 康一, 塩屋 公孝, 今村 治男
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2022-2031
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.下肢の紫斑と激しい上腹部痛のため,近医に入院.入院後23日目より嘔吐と大量下血を認め,当院に緊急転院となった.空腸からの大量出血を繰り返し,緊急手術となった.多彩な臨床症状と,空腸切除標本の病理組織学的検索により結節性多発動脈炎が疑われた.ステロイドパルス療法と内視鏡的止血術,カテーテルによる血管塞栓術を行ったが,大量の消化管出血と多臓器不全のために永眠され,病理解剖の結果,結節性多発動脈炎の最終診断を得た.消化管出血を主体とした結節性多発動脈炎は極めてまれで予後不良であり,迅速な診断と治療介入が必要と思われた.
  • 石橋 陽子, 松薗 絵美, 横山 文明, 菅井 望, 関 英幸, 三浦 淳彦, 藤田 淳, 鈴木 潤一, 鈴木 昭
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2032-2038
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,女性.下腹部痛,発熱,下痢と血便のため入院.嘔気,嘔吐はなし.CTでほぼ全結腸に腸管壁肥厚と浮腫を認め,鑑別診断のため下部消化管内視鏡検査を施行した.生検病理組織学的所見で,感染を示唆する好中球浸潤に加えて虚血性大腸炎を示唆する所見も認めたが,便培養,組織培養ともにStaphylococcus aureusが検出され,黄色ブドウ球菌腸炎と診断した.臨床経過から他の腸炎との鑑別を要したため内視鏡検査を施行したが,その所見としては,虚血性腸炎類似の縦走性の発赤,浮腫,びらんと潰瘍を呈していた.病変は直腸から認め,口側ほど所見が強く,下行結腸ではほぼ全周性であった.
  • 笹木 有佑, 高野 眞寿, 谷野 美智枝, 露口 雅子, 長佐古 友和, 川村 直之, 工藤 峰生, 土橋 誠一郎, 飯田 潤一
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2039-2045
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性,25年前より慢性腎不全にて血液透析治療を行っている.約1年の間に右側結腸からの出血による血便を3度くり返した.内視鏡上虚血性変化が持続し,保存的治療が困難であったため,右半結腸切除術を施行した.病理組織は腸間膜静脈硬化症と診断された.術後出血は無く経過良好である.血液透析を行っている慢性腎不全患者に発症した出血をくり返す特発性腸間膜静脈硬化症について文献的考察を加え報告する.
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 津田 純郎
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2048-2061
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡挿入法を会得するには,挿入技術を習得するだけでなく安全で円滑な挿入を可能にする目的で内視鏡挿入部に備えられた特性を理解し,その特性を十分に利用することも大切である.そのため,挿入部の特性を説明した上で挿入部の特性を生かした挿入法,挿入部径による挿入部の特性の違いとその生かし方を解説する.そして,挿入性を向上させる硬度可変機能の原理と使い方のポイント,受動湾曲と高伝達挿入部を搭載した内視鏡(OLYMPUS EVIS LUCERA PCF-PQ260:オリンパスメディカルシステムズ株式会社)の特性と有用性を紹介する.
資料
  • 熊谷 洋一, 戸井 雅和, 川田 研朗, 河野 辰幸
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2062-2072
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    近年食道癌に対する拡大内視鏡観察は広く普及し,腫瘍表層の微細血管形態が壁深達度を反映することが明らかとなった.M1,M2癌では上皮乳頭内ループ状毛細血管(IPCL)の拡張と延長が観察されるが,正常部に比べIPCLの密度が上昇する.これは,既存のIPCLが変化したものに加えIPCL様の幼若血管が腫瘍内に進入するためでありこの段階での血管構造は“修飾されたIPCLとIPCL様幼若血管の混在(IPCL様異常血管)”と表現されるべきである.M3以深に浸潤すると明らかに拡張し表層を錯綜する癌特有の血管構造が観察され,“新生血管”と表現している.
    拡大内視鏡観察と分子生物学的知見を考察し,前癌病変とM3に血管新生の2つのメジャーなステップが存在すると考えられた.
    400-1,000倍で観察可能なEndocytoscopeでは表層の細胞の形態が観察可能となり,将来生検組織診断に代用できる可能性が示唆された.
ガイドライン
  • 藤本 一眞, 藤城 光弘, 加藤 元嗣, 樋口 和秀, 岩切 龍一, 坂本 長逸, 内山 真一郎, 柏木 厚典, 小川 久雄, 村上 和成, ...
    2012 年 54 巻 7 号 p. 2075-2102
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
    日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
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