日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 8 号
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症例
  • 馬場 健, 志田 敦男, 青木 寛明, 横田 徳靖, 栗原 英明, 鈴木 博昭
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2213-2218
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳男性,陳旧性脳梗塞で低用量アスピリン内服中であった.平成23年5月14日夕食中に熱いフカヒレスープを飲んだ直後に突然胸部つかえ感が出現し,固形物の摂取困難となり5月17日当科入院となった.上部消化管内視鏡検査で上部食道から食道胃接合部にかけて長軸方向に連続して暗紫色の血腫を認め,食道壁内血腫と診断した.抗血小板剤の中止,禁食,中心静脈栄養,プロトンポンプ阻害剤を投与し保存的に経過観察した.第7病日には自覚症状は消失し,血腫は完全に消失したが,粘膜脱落に伴う潰瘍形成を認めた.第21病日には粘膜剥離による粘膜欠損を残すのみで他に狭窄所見はなく第28病日に退院となった.
  • 今村 祐志, 村尾 高久, 松本 啓志, 垂水 研一, 眞部 紀明, 山下 直人, 鹿股 直樹, 秋山 隆, 畠 二郎, 春間 賢
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2219-2224
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は乳癌の既往歴がある57歳の女性.胃癌検診で胃体下部大彎に隆起性病変を指摘され,上部消化管内視鏡検査で同部位に約1cmの粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡では8mmの腫瘤を粘膜下層に認め,既往歴から乳癌からの転移を疑った.組織診断と治療目的に内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した結果,リンパ管侵襲を伴う神経内分泌腫瘍と診断された.外科的胃切除術を追加施行した結果リンパ節転移を認めた.神経内分泌腫瘍は小さな病変でもリンパ節転移を伴うことが比較的高率にあり,診断と治療には注意を要する.
  • 高野 伸一, 大高 雅彦, 三浦 和夫, 松井 啓, 山口 達也, 植竹 智義, 大塚 博之, 佐藤 公, 榎本 信幸, 渡辺 英伸
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2225-2231
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    77歳男性.十二指腸球部に20mmで頂部に陥凹を有す粘膜下腫瘍様隆起を認め,内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理組織学的には幽門腺型腺腫ないしBrunner腺腺腫に類似していた.免疫染色では腫瘍の構成細胞は,50%が頸部粘液型細胞で,40%が幽門腺型細胞で,腫瘍露出部の表層が5%ほどの胃小窩型細胞であった.さらに少数の壁細胞も混在していた.胃型形質であるにも関わらず,CDX2やCD10に陽性を示した.頸部粘液細胞型と幽門腺細胞型の胃型腺腫がCDX2やCD10に陽性の細胞へ化生を起こした腺腫と診断した.自験例は異所性胃粘膜を母地とした極めて稀な腫瘍であった.
  • 志方 健太郎, 小林 広幸, 河内 修司, 遠藤 伸吾, 平橋 美奈子, 恒吉 正澄, 松本 主之
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2232-2237
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性.人間ドックの上部消化管内視鏡検査で,十二指腸下行部にIIa+IIc様の小陥凹性病変を認めた.陥凹部は周囲粘膜に比し軽度発赤調で,辺縁に白色調の隆起を伴っていた.NBI拡大観察では陥凹内部に比較的均一な微細網目状の毛細血管を認め,拡大内視鏡観察では大腸腫瘍におけるIIIL様のピットを呈し,正常十二指腸粘膜に認められるlight blue crestは消失していた.以上の内視鏡所見から上皮性腫瘍と考えられた.超音波内視鏡では粘膜下層への浸潤の所見は無く,粘膜内病変と判断し,内視鏡的粘膜切除術を施行した.切除標本の病理学的検索では,長径約7mmの中等度異型を伴う陥凹型腺腫であった.
  • 福島 政司, 河南 智晴, 和田 将弥, 占野 尚人, 井上 聡子, 藤田 幹夫, 杉之下 与志樹, 岡田 明彦, 猪熊 哲朗, 今井 幸弘
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2238-2245
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性.近医より腸閉塞のため紹介となった.腹部CT,MRIで小腸に脂肪腫を疑わせる多発腫瘤を認めた.ダブルバルーン内視鏡(double balloon endoscopy;以下DBE)を施行したところ,十二指腸から空腸にかけて黄色の粘膜下腫瘍が多発していた.以上より小腸lipomatosisと診断し,小腸切除術,内視鏡切除を行った.小腸lipomatosisは稀な疾患であり,本症例はDBEで診断し,その一部を内視鏡で切除しえたのでここに報告する.
  • 池辺 美奈子, 松田 充, 平井 聡, 堀田 洋介, 島谷 明義, 松田 耕一郎, 平松 活志, 荻野 英朗, 野田 八嗣
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2246-2251
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.刺身摂取後約1週間で腹痛増強しイレウス状態にて当科入院となった.腹部造影CTでは,小腸イレウスの所見で,回腸に限局性壁肥厚と異常濃染を認めた.翌日にイレウスは解除し,第8病日に施行した経肛門的小腸ダブルバルーン内視鏡検査(DBE)にて回盲弁から約1m口側に約半周性の発赤を伴った腫瘤性病変を認めた.同部位の生検にて著明な脱顆粒を伴う好酸球浸潤とCharcot-Leyden crystals を認めた.抗アニサキスIgG+IgA抗体価の推移も併せて,虫体は確認できなかったものの小腸アニサキス症によるイレウスと診断した.DBEが診断に有用であった小腸アニサキス症の1例を報告する.
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  • 今枝 博之, 細江 直樹, 柏木 和弘, 大庫 秀樹, 山岡 稔, 筋野 智久, 井上 詠, 鈴木 秀和, 岩男 泰, 日比 紀文, 緒方 ...
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2256-2268
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    上部消化管出血(非静脈瘤性出血)に対して当科ではショートクリップを用いたクリップ止血を第一選択として施行しているが,出血が著明な場合や太い露出血管を伴う場合,単独では止血困難な場合に高張Naエピネフリン(HSE)や1万倍希釈エピネフリン局注を併用する.検査開始時からショートフードを装着することにより,視野の確保が難しい部位や接線方向となるために止血困難な部位に対しても病変をなるべく正面視して止血することが容易となる.また,送水機能付きスコープを使用することにより鉗子口にクリップ装置が挿入されている状態でも出血点の同定が容易となり,ただちに止血操作を行うことが可能である.内視鏡的止血法は進歩してきたが,太い露出血管を伴った深掘れの潰瘍などに対しては今もなお内視鏡的止血が困難なこともあるため,放射線科医や外科医と早い段階から密に連絡をとりあい,時期を失することなくinterventional radiology(IVR)や外科手術に移行するよう心がけることが重要である.
資料
  • 久部 高司, 松井 敏幸, 宮岡 正喜, 二宮 風夫, 石原 裕士, 長浜 孝, 高木 靖寛, 平井 郁仁, 池田 圭祐, 岩下 明徳, 東 ...
    2012 年 54 巻 8 号 p. 2269-2277
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    【背景】潰瘍性大腸炎(UC)は,大腸病変のみならず回腸嚢炎など他臓器に様々な合併症を引き起こすことがある.その中で大腸病変に類似したびまん性の胃十二指腸炎がまれながら報告されている.
    【目的】UCに関連した上部消化管病変の定義を試み,その頻度と臨床経過を検討する.
    【方法】上部消化管内視鏡検査が施行されたUC 322例を対象とした.大腸病変に類似したびまん性胃十二指腸炎のうち,他疾患が否定され以下の定義に合致するものをUCに関連したulcerative gastroduodenal lesion(UGDL)と定義した.1)UCの治療により胃十二指腸病変が改善する.and/or 2)病理組織学的所見がUCに類似する.
    【結果】この定義に合致したUGDLは322例中15例(4.7%)で,15例の大腸病変の病型は全大腸炎型または大腸全摘出術後だった.病型別では全大腸炎型146例中9例(6.2%),大腸全摘術後81例中6例(7.4%)に認められ,大腸全摘出術後のうち4例は回腸嚢炎を合併していた.
    【結論】今後UCの診断治療に際してはUGDLの存在も考慮しなければならない.またUGDLは回腸嚢炎との関連も示唆された.
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