日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 9 号
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総説
  • 野上 晃司, 應田 義雄, 松本 譽之
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3115-3123
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    ベーチェット病は再発性口腔内アフタ,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を4主症状とする難治性の全身炎症性疾患である.さらに5つの副症状として関節炎,副睾丸炎,血管炎,消化管症状,中枢神経症状があげられる.消化管ベーチェット病は,この副症状のひとつである消化管症状が主に出現しているものをいう.ベーチェット病の消化管病変は全消化管に生じうるが,好発部位は回盲部近傍で,典型例では難治性の深い下掘れ傾向をもつ打ち抜き潰瘍を呈する.診断では,これらと同様の粘膜所見を来す疾患を鑑別することが重要である.臨床経過や,それぞれの粘膜所見の類似点・相違点に着目し疾患を除外していく.治療に関しては,依然確立されていないが,抗TNF-α抗体製剤の有用性が認められつつある.
原著
  • 香川 幸一, 松枝 和宏, 衣笠 秀明, 尾崎 由直, 濱口 京子, 新井 修, 藤田 英行, 三好 正嗣, 毛利 裕一, 山本 博
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3124-3130
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    目的:急性出血性直腸潰瘍(AHRU)の臨床的・内視鏡的特徴,潰瘍形態から予想される臨床像を明らかにすること.対象と方法:AHRU 23例を対象とし1)基礎疾患およびADL,2)抗血小板薬,NSAIDsおよびステロイドの使用状況,3)AHRUの内視鏡的特徴,4)止血処置の詳細,5)内視鏡所見からみたAHRUの臨床像,について検討した.結果:1)重篤な基礎疾患をもつ長期臥床患者が大半を占めた.2)抗血小板薬9例NSAIDs 5例ステロイド10例であった.3)大半が肛門歯状線付近で露出血管が13例に認められた.4)HSEとクリップによる止血が最多であった.5)Dieulafoy型で止血術後再出血率が有意に高かった.結論:抗血小板剤,NSAIDs,ステロイド使用中の長期臥床患者の血便では,AHRUを念頭に置く必要があり,Dieulafoy型では止血術後の再出血が多く注意が必要である.
症例
  • 森島 大雅, 石川 英樹, 大塚 裕之, 清野 隆史, 古川 和宏, 片山 雅貴
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3131-3135
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代,女性.食欲不振と胃部不快感の精査目的に施行した上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部後壁に隆起性病変を認め,生検で高分化型管状腺癌と診断した.粘膜内癌と診断しESDを施行した.切除病理標本では,粘膜内に留まる乳頭腺癌の成分を含む分化型癌であったが,粘膜内のリンパ管に腫瘍栓を認めた.
  • 土肥 統, 小西 英幸, 玄 泰行, 中尾 龍太, 若林 直樹, 八木 信明, 内藤 裕二, 岡野 均, 柳澤 昭夫, 吉川 敏一
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3136-3140
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳台,女性.食道胃接合部に扁平上皮癌を指摘され,当科紹介となった.NBI拡大内視鏡観察にて胃噴門側への浸潤が疑われた.表在型食道胃接合部扁平上皮癌と診断し,内視鏡的粘膜下層剥離術にて一括切除を施行した.病理組織学的には,接合部の扁平上皮癌が胃上皮表層を進展する表在癌であった.胃噴門部への上皮内進展をきたした表在型食道胃接合部扁平上皮癌の報告は稀であり,文献的考察とともに自験例を報告する.
  • 堂原 彰敏, 美登 路昭, 古川 政統, 才川 宗一郎, 鍛治 孝祐, 上嶋 昌和, 沢井 正佳, 吉田 太之, 山尾 純一, 福井 博
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3141-3147
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.1998年に健診目的の上部消化管内視鏡検査にて胃粘膜下腫瘤を指摘された.2009年に施行された上部消化管透視検査にて増大傾向にあったため,当院紹介受診.胃角部小彎前壁に表面平滑で,立ち上がりが急峻な30mm大の胃粘膜下腫瘍を認めた.通常光観察および超音波内視鏡検査にて,粘膜下層に存在する胃脂肪腫を疑ったが,発見時より増大傾向を示すことから完全に悪性を除外することができないため,診断的治療目的に,胃粘膜下層剥離術(以下,ESD)を施行した.ESDにより腫瘍は一括切除でき,病理では悪性所見を認めなかった.増大傾向を示す粘膜下腫瘍に対しESDを施行し,胃脂肪腫と確定診断し得た.
  • 山賀 雄一, 大花 正也, 久須美 房子, 木田 肇, 岡野 明浩, 沖永 聡, 鍋島 紀滋, 藤田 久美
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3148-3155
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代男性.上部消化管内視鏡にて,十二指腸水平部に,頂部に溝状の陥凹を有する15mm大の隆起を認め,生検にて高分化型腺癌を認めた.球部から下行部にかけては発赤調で十二指腸炎の所見が目立ち,複数の隆起を認め,生検にて胃粘膜組織を認めた.水平部の病変は内視鏡的切除可能と考えられたためEMRを施行したところ,切除標本の病理所見にて,粘膜内にとどまる腺癌と,これに連続する異所性胃粘膜の所見を認めた.本症例の病変は,内視鏡および病理所見から異所性胃粘膜を背景とする十二指腸癌であると考えられた.水平部の異所性胃粘膜由来の十二指腸癌は稀と思われるので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 小倉 健, 有坂 好史, 増田 大介, 井元 章, 瀧井 道明, 林 道廣, 江頭 由太郎, 梅垣 英次, 樋口 和秀
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3156-3164
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代男性.肝機能障害を指摘され,精査目的で入院.MDCTで胆管拡張があり,下部胆管末端部に造影効果を有する腫瘤が認められた.十二指腸内視鏡では,下行脚に全周性に結節顆粒状の褪色調粘膜が広範囲に認められた.主乳頭は病巣のほぼ中央に位置し生検で腺癌が検出された.PTCSでは乳頭部から胆管内腔にポリープ様に突出する隆起性病変が認められた.乳頭部癌の診断のもと膵頭十二指腸切除術を行い,病理学的には,下部胆管,膵管上皮および十二指腸へ広範に表層拡大進展し,乳頭共通管部のみで一部Oddi筋周囲へ浸潤した高分化型腺癌であった.稀な肉眼形態を呈した乳頭部癌の1例を経験したので報告する.
  • 福島 政司, 増尾 謙志, 井上 聡子, 占野 尚人, 鄭 浩柄, 藤田 幹夫, 杉之下 与志樹, 岡田 明彦, 猪熊 哲朗, 今井 幸弘
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3165-3171
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.多発性骨髄腫の経過観察中に血便が出現し,緊急入院となった.大腸内視鏡では,大腸に出血性病変を認めなかったが,回腸より血液の流出を認めた.カプセル内視鏡で,小腸にびらん,潰瘍が多発していたため,経肛門的ダブルバルーン内視鏡を施行したところ,回腸に粘膜下血腫を多数誘発した.生検でアミロイドの沈着を認め,多発性骨髄腫を基礎疾患とするアミロイドーシスと診断し,化学療法を開始した.アミロイド沈着によって虚血性変化と組織の脆弱化が生じているところに,内視鏡挿入の刺激が加わったことで回腸に血腫が誘発されたと考えられた.
  • 高原 政宏, 今川 敦, 河野 吉泰, 今田 貴之, 八木 覚, 宮武 宏和, 中津 守人, 安東 正晴, 広畑 衛, 宮谷 克也
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3172-3177
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代女性.血便精査で下部消化管内視鏡検査施行したところ,直腸Rbに15mmの褐色調隆起性病変を認めた.NBI観察でpit様構造は消失と整な構造が混在,またCorkscrew様の異常血管を認めた.悪性黒色腫を疑い十分なinformed consent後にEMRを施行し,病理組織学的所見で悪性黒色腫と診断した.9年前に同疾患で経肛門的切除術施行,断端陽性で不完全切除であったが,追加切除されておらず,同部位の局所再発と思われた.悪性黒色腫の予後は極めて悪く,また不完全切除例での長期生存例は稀である.更に,NBI観察しえたことから貴重な症例であると思われた.
注目の画像
手技の解説
  • 永田 尚義
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3180-3188
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    感染性腸炎は日常臨床上頻度の高い疾患群である.細菌性腸炎を疑う場合には便培養検査により病原菌を同定するが,便培養の病原菌同定率は非常に低い.内視鏡検査は,特徴的な画像所見が得られるだけでなく,病変部からの腸液の吸引や生検を行えるため,感染性腸炎の診断に有用である.内視鏡検査により得られた腸液あるいは生検検体を,可能性の高い病原微生物を想定し,鏡検法,培養法,PCR法,免疫組織化学的検査などを用いて検討することにより,診断の精度が上昇する.これらを各検査部門に依頼する場合には,臨床情報を十分伝えることが肝要である.
  • 天野 祐二, 結城 崇史, 石村 典久, 藤代 浩史
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3189-3203
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    食道胃接合部の内視鏡診療は対象疾患の増加により,近年,その重要性が高まりつつある.しかしながら,本邦及び欧米の間には,食道胃接合線の内視鏡診断において診断基準の乖離を認めるという大きな問題が存在する.食道胃接合部観察の基本は,胃内の空気を抜き,大きく吸気させて食道下部を十分に伸展させることであり,本邦ではこの手技により食道胃接合線として食道柵状血管の下端を探ることになるが,欧米では逆に可能な限り食道の空気を抜き,胃のヒダ上端を診断するのが一般的であるためである.現在,食道胃接合部において最も重要と考えられているのは,Barrett食道およびBarrett腺癌の内視鏡診断である.本邦では画像強調内視鏡を用いた診断が主流になりつつあるが,それらの内視鏡分類は臨床応用を考えた場合に未だ不十分なものも多い.今後は,正確な食道胃接合線の診断を基軸とし,同部位の特性がよく理解された画像強調内視鏡による精緻な内視鏡診断・分類が早急に必要とされる.
資料
  • 菅野 良秀, 伊藤 啓, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 尾花 貴志, 洞口 淳, 高澤 磨, 加藤 雄平, 越田 真介, 山下 泰伸 ...
    2012 年 54 巻 9 号 p. 3204-3213
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/22
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】非切除悪性肝門部胆道狭窄に対するドレナージ法にはさまざまな方法がある.近年,肝門部病変に対し,複数本の金属ステント(MS)を用いた経乳頭的一期的両葉ステント留置が可能になった.悪性肝門部胆道狭窄に対するMS両葉留置の成績を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】対象は,近年両葉ステント留置用に開発されたNiti-S stent T/Y type(TaeWoong Medical, Seoul, Korea)を用いてY字型に両葉ステント留置を施行した非切除悪性肝門部胆道狭窄20例である(YMS群).金属ステントはpartial-stent-in-stent法で,乳頭から出さずに留置した.同法導入以前に,プラスチックステント(PS)2本を用いて両葉ステント留置を行った37例をhistorical controlとし(PS群),手技的成功率,早期偶発症,臨床効果,ステント開存期間,生存期間を後ろ向きに比較検討した.【結果】YMS群の手技的成功率は100%であった.治療後,YMS群で1例,PS群で2例の軽症膵炎を認めた.減黄効果は,YMS群の95%,PS群の89%で良好であった(P=0.65).平均観察期間7.3カ月中のステント閉塞率は,有意にYMS群で低かった(30% vs. 62%,P=0.028).平均ステント開存期間は,YMS群で250日,PS群で115日であった(P=0.0061).ステント閉塞の危険因子に関する多変量解析では,PS群(P=0.007)と原疾患が胆管癌であること(P=0.035)が有意な因子であった.【結論】非切除肝門部悪性胆道狭窄に対する一期的両葉金属ステント留置は安全に施行可能で,高い手技的成功率と長い開存期間により有用であると考えられた.
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