【背景と目的】非切除悪性肝門部胆道狭窄に対するドレナージ法にはさまざまな方法がある.近年,肝門部病変に対し,複数本の金属ステント(MS)を用いた経乳頭的一期的両葉ステント留置が可能になった.悪性肝門部胆道狭窄に対するMS両葉留置の成績を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】対象は,近年両葉ステント留置用に開発されたNiti-S stent T/Y type(TaeWoong Medical, Seoul, Korea)を用いてY字型に両葉ステント留置を施行した非切除悪性肝門部胆道狭窄20例である(YMS群).金属ステントはpartial-stent-in-stent法で,乳頭から出さずに留置した.同法導入以前に,プラスチックステント(PS)2本を用いて両葉ステント留置を行った37例をhistorical controlとし(PS群),手技的成功率,早期偶発症,臨床効果,ステント開存期間,生存期間を後ろ向きに比較検討した.【結果】YMS群の手技的成功率は100%であった.治療後,YMS群で1例,PS群で2例の軽症膵炎を認めた.減黄効果は,YMS群の95%,PS群の89%で良好であった(P=0.65).平均観察期間7.3カ月中のステント閉塞率は,有意にYMS群で低かった(30% vs. 62%,P=0.028).平均ステント開存期間は,YMS群で250日,PS群で115日であった(P=0.0061).ステント閉塞の危険因子に関する多変量解析では,PS群(P=0.007)と原疾患が胆管癌であること(P=0.035)が有意な因子であった.【結論】非切除肝門部悪性胆道狭窄に対する一期的両葉金属ステント留置は安全に施行可能で,高い手技的成功率と長い開存期間により有用であると考えられた.
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