日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 遠藤 宏樹, 日暮 琢磨, 高橋 宏和, 中島 淳
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3735-3744
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    大腸癌は近年欧米諸国のみならず本邦でも急激に増加してきており,本疾患が国民生活にあたえる影響はきわめて高く,その対策・予防は急務である.大腸癌の発生に関して,運動不足や欧米型の食事摂取に伴う肥満を背景とした生活習慣が癌のリスクを押し上げるとする疫学研究が数多く報告されてきている.さらに最近では肥満,特に内臓脂肪蓄積の結果起こる異常として,脂肪細胞から分泌される生理活性物質アディポサイトカインの分泌異常が注目されている.アディポネクチンやレプチンが腫瘍発生や増大に関与することが疫学研究や分子レベルの研究で明らかにされ,肥満による大腸発癌促進機序が解明されつつある.また近年,化学発癌予防に関する研究が進んでおり,安全かつ効果的な薬剤の同定が望まれる.
原著
症例
  • 新井 修, 飯田 貴之, 渡邊 文利, 山田 正美, 中村 眞一, 花井 洋行
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3753-3758
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は心窩部焼灼感を主訴とする38歳のペルー人女性.上部消化管内視鏡で胃から十二指腸下行部にかけて顆粒状隆起を認めた.隆起からの生検でリンパ濾胞を認めたが,HE染色で反応性か腫瘍性かの鑑別が困難であった.免疫組織学的検査にて胃病変はHelicobacter pylori関連鳥肌胃炎,十二指腸球部・下行部病変は濾胞性リンパ腫と診断した.下部消化管内視鏡およびカプセル内視鏡で空回腸に多発性結節状隆起を認め,鳥肌胃炎と小腸濾胞性リンパ腫の合併と診断した.両疾患の合併例の報告はなく,内視鏡像からの鑑別は困難であるため,積極的に生検・免疫組織学的検査を行うことが確定診断には重要である.
  • 神野 秀基, 今川 敦, 寺澤 裕之, 榮 浩行, 安原 ひさ恵, 鎌田 英紀, 加地 英輔, 幡 英典, 中津 守人, 宮谷 克也
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3759-3764
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は39歳と46歳の女性.ともに腹痛を主訴に当院を受診した.2例とも腹部CT検査では横行結腸に嚢胞性腫瘤を先進部とする腸重積を疑う所見を認めた.下部消化管内視鏡検査を施行しCO2送気,ガストログラフィンによる造影にて容易に整復された.整復後,回盲部に粘膜下腫瘍様の病変を認め,虫垂粘液嚢腫による腸重積と診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を行った.病理組織は虫垂粘液嚢胞腺腫であった.虫垂粘液嚢腫による腸重積は稀であるが,嚢胞性病変を先進部とする腸重積の場合,本疾患を念頭に置くべきと考えられる.
  • 深町 伸, 中川 国利
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3765-3769
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性で,3年前に施行した大腸内視鏡検査で,回盲弁上に約3cm大の亜有茎性粘膜下腫瘍を認めた.内視鏡的特徴よりリンパ管腫または脂肪腫が疑われ経過観察した.しかし今回の大腸内視鏡検査および腹部CT検査で,1年前と比較して腫瘍の増大を認めた.腫瘍径から内視鏡的切除術の適応外とされ,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.腫瘍は30×25mm大で,粘膜下に多発性嚢胞状構造を認め,リンパ管腫と病理診断した.回盲弁上のリンパ管腫は稀で,一般的に内視鏡的切除を行うことが多い.外科手術後の病理組織学的所見にて内視鏡的切除術の適応を検討しえた貴重な症例と考えられた.
  • 後藤 規弘, 山口 大介, 田中 泰敬, 臼井 智彦, 中井 喜貴, 藤井 茂彦, 畦地 英全, 日下 利広, 國立 裕之, 安原 裕美子
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3770-3775
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.家族歴に胃癌(父),腎癌(弟),卵巣癌(長女),神経膠芽腫(長男)があり,既往歴は子宮体癌(49歳),直腸癌(57歳),横行結腸癌(59歳)の手術施行後であった.大腸癌術後に1年毎に施行されていた下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に15mm大の平坦陥凹病変を認め,IIc類似進行大腸癌と診断し右半結腸切除術を施行した(Stage IIIb,pT3N2M0).ミスマッチ修復遺伝子検査ではMSH2の変異を認めLynch症候群と診断された.Lynch症候群では,本症例のように急速な進行をきたす病変を念頭に置いてサーベイランスを行う必要がある.
  • 永松 秀康, 成田 竜一, 丸田 紘史, 高橋 健, 上尾 哲也, 石田 哲也, 福澤 謙吾, 若杉 健三, 米増 博俊
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3776-3781
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性,総胆管結石による閉塞性黄疸の診断で当院に紹介となり,ERCPにて胆道出血を認め,下部胆管に狭窄が疑われた.胆汁細胞診や生検では悪性所見を得られなかったが,胆道癌による胆道出血も否定できず,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を行った.組織学的検索において腫瘍性病変は認めなかったが,乳頭部胆管に線維腺筋性の過形成変化と,膵頭部および胆嚢,肝外胆管の血管壁を主体にAA型のアミロイド沈着を伴う血管炎が確認された.以上の病理所見より,胆道出血は関節リウマチに起因した続発性アミロイドーシスによるものと診断した.
  • 奥野 充, 向井 強, 安田 一朗, 中島 賢憲, 鈴木 祐介, 小木曽 富生, 川出 尚史, 杉山 昭彦, 加藤 則廣, 冨田 栄一
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3782-3787
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例1は特発性慢性膵炎の52歳女性,症例2はアルコール性慢性膵炎の45歳男性.両症例とも主膵管狭窄に対して膵管ステントが留置され,症例1は1年間に4回,症例2は4年間に7回膵管ステントの交換が行われていたが,ステント交換の際,主膵管内にステントが迷入した.通常,迷入した膵管ステントの回収には,生検鉗子やバルーンカテーテルなどが使用されているが,主膵管は総胆管よりも管腔が狭く,可動性・伸展性に乏しいため,ステントの回収に難渋することが多い.ガイドワイヤー式片開き生検鉗子は,管腔が狭い主膵管内でステントと同軸になりやすく,かつステント近位端を把持しやすいため,迷入したステントの回収に有用であった.
  • 牧谷 光晴, 白子 順子, 下地 圭一, 今井 奨, 杉山 智彦, 小原 巧輝
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3788-3794
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.発熱および腹部膨満を主訴に入院し,腹部CTにて多量の腹水と膵鉤部に腫瘍性病変を認めた.腹水中のアミラーゼ高値より,膵性腹水が疑われた.保存的加療で腹水は消失せず,EUSで膵鉤部に18mmの腫瘍を認め,FNAで膵癌と診断された.ERCPでは腫瘍が主膵管を狭窄し,尾部に仮性嚢胞が形成され,腹腔内へ穿破している所見を認めた.ENPDおよび膵管ステント留置にて膵性腹水は消失した.癌に伴う腹水の多くは,癌性腹膜炎や低アルブミンによるものであるが,本症例のように膵癌には稀に膵性腹水を生じる可能性があり,その場合には,内視鏡治療が有用と思われた.
手技の解説
  • 菅野 敦, 正宗 淳, 藤島 史喜, 石田 和之, 入澤 篤志, 下瀬川 徹
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3795-3807
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    1995年に疾患概念が提唱されてから,自己免疫性膵炎(AIP)に関する様々な知見が積み重ねられた.現在,AIPは,主に国際コンセンサス診断基準(ICDC)に基づき診断される.ICDCは,組織学的診断を重要視しているが,EUS-FNAにより採取された組織は対象とされていない.近年,EUS-FNAを用いて採取した組織を用いたAIP診断の報告が散見される.本稿では,EUS-FNAを用いてAIPの組織を採取し診断する要点につき概説する.本稿で紹介した手技が普及し,AIPの診断と研究がさらに発展することを期待したい.
  • 小林 清典, 迎 美幸, 横山 薫, 佐田 美和, 小泉 和三郎
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3808-3820
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    超音波内視鏡(EUS)は,消化管病変を垂直断層像として描出できることから,大腸疾患に対しても癌の深達度診断や粘膜下腫瘍(SMT)の質的診断などに活用されている.大腸で使用できるEUS機種には専用機と超音波プローブ(USP)があり,後者を主として用いる.USPの周波数は,12MHzや20MHzなどがあり,検査の目的や病変の肉眼形態などにより選択する.なおUSPには3次元表示が可能な機種もある.EUS検査前には,十分な腸管前処置が必要である.EUS走査は主として脱気水充満法で行い,正常大腸壁は基本的には5層構造として描出される.EUSにより大腸癌の深達度は,腫瘍により壁層構造の破壊を認める最深層で診断する.またSMTは,EUS所見での腫瘍の局在層や内部エコーに着目して診断を行う.大腸疾患のEUS診断において最も重要なことは,病変を垂直方向から走査することである.しかし病変の存在部位や高さなどによっては,明瞭な断層像が得られない場合がある.適切なEUS機種の選択とともに,検査法の工夫が必要である.
ガイドライン
  • 小原 勝敏, 春間 賢, 入澤 篤志, 貝瀬 満, 後藤田 卓志, 杉山 政則, 田辺 聡, 堀内 朗, 藤田 直孝, 尾崎 眞, 吉田 雅 ...
    2013 年 55 巻 12 号 p. 3822-3847
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    近年,内視鏡診療における鎮静の需要が増加傾向にあるが,内視鏡時の鎮静に対する保険適用の承認を取得している薬剤はなく,主にベンゾジアゼピン系の薬剤が適応外で使用されている現状であり,安全な鎮静を支援する体制作りが求められているところである.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力の下“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”を作成した.本ガイドラインは鎮静が必要な状況下で適切な使用法を推奨したものであり,クリニカルクエスチョン11項目に対してステートメントは14項目あり,そのうちエビデンスレベルIが5項目で,エビデンスレベルIIが3項目あったが,ほとんどが国外のデータに準拠したものであり,推奨度は定まっていない.また,本ガイドラインは,内視鏡診療時の鎮静を強く勧めるものではなく,消化器内視鏡診療上,鎮静が必要と考えられる局面においてはどのような鎮静の方法が良いかの指針を示したものである.実際の診療において鎮静を実施するかの最終決定は,必要性に関する十分なインフォームド・コンセントの下,患者の意思を尊重して行うことが前提であり,医師側の誘導に基づくものであってはならない.
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