日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 1 号
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総説
  • 斉田 芳久
    2013 年 55 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    大腸狭窄に対するステント(SEMS:self-expandable metallic stent)治療が世界に遅れて本邦でも2012年から保険収載の上で使用可能となった.そこで本稿では文献的な考察を中心に現状と展望を示した.現在の本邦での適応は,悪性狭窄の緩和治療および外科手術前の処置BTS:Bridge to Surgeryである.緩和治療では短い入院期間での狭窄の解除と人工肛門の回避が,またBTSでは緊急手術に比較して入院期間の短さ,合併症率や人工肛門造設率,死亡率の低下などが期待できると広く報告されている.しかし一定の確率での穿孔や逸脱などの偶発症も発生するため十分な準備とICが不可欠である.安全な留置のためにはいくつかの注意点やコツがあり,遵守することで偶発症の発生を最小限することができる.日本消化器内視鏡学会附置研究会の大腸ステント安全手技研究会ではそのための情報発信を行っている.
原著
  • 岩田 英之, 黒崎 哲也, 松本 浩次, 鈴木 哲郎, 堀 義城, 鈴木 淳一, 長谷川 弥子, 新居 高, 吉村 雪野, 板垣 亮平, 畑 ...
    2013 年 55 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,上部消化管内視鏡検査(EGD)を施行する患者の身体的・精神的ストレスを軽減することを目的として行った.【方法】当院でEGDを予定している患者150名を対象とし,経口または経鼻でEGDを施行する患者に対して,検査2時間前,1時間前にゼリー状の経口補水液(ORS)を200g摂取する群と対照群とで安全性と有用性を検討した.【結果】胃内容物採取量は,ORS各群において41±28mlから67±24mlの範囲で,対照群に比較し胃内容物は増加しておらず,悪心・嘔吐もなかった.2時間前ORS摂取経鼻群において,胃内の泡状の唾液が経鼻対照群に比較して少なく,有意に観察がしやすかった.検査までの患者の空腹感は,2時間前ORS摂取経口群を除いていずれのORS群でも有意に改善された.【結論】EGD前のORS摂取は患者にとって有用で,内視鏡施行医は安全に検査を行うことができる.
症例
  • 高原 浩, 高原 聡
    2013 年 55 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の女性.昼食でサバの刺身を食べ,その翌朝4時頃より腹痛,悪心を認め来院した.超音波検査で,骨盤腔に腹水があり,小腸壁の肥厚が認められた.上部消化管内視鏡で異常はなく,経口的消化管造影で,回腸の異常拡張と,それに続く肛門側回腸の狭窄,拇指圧痕所見をみとめた.経肛門的ダブルバルーン内視鏡で,大腸には異常がなかったが,回腸粘膜は終末部より著しい浮腫状を呈し,深部回腸にアニサキス虫体を発見し,生検鉗子により摘出した.腹痛は急速に消失し,腹水も二日後にはほとんど消失した.本症例は小腸アニサキスを小腸内視鏡で発見し摘出し得た初めての報告例であると考えられた.
  • 川島 耕作, 大西 浩二, 福田 浩介, 数森 秀章, 大野 康彦, 黒谷 明嗣, 加藤 隆夫, 石原 俊治, 木下 芳一, 足立 経一
    2013 年 55 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)には著明な結腸ガスのため造設困難となる例が存在する.今回われわれは,S状結腸ガスが著明なために横行結腸や胃が頭側に移動しておりPEG困難と判断した症例において,直前の大腸内視鏡によるS状結腸ガスの吸引にて,横行結腸や胃が足側に移動しPEG可能となった3症例を経験した.PEG施行困難例の中には,結腸ガスが著明で横行結腸の足側への移動が必要な症例があるが,S状結腸ガス吸引が有効な症例も多く存在するものと思われた.
  • 矢根 圭, 山内 栄五郎, 真口 宏介, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 小山内 学, 階子 俊平, 金子 真紀, 糸井 隆夫, 網塚 久人
    2013 年 55 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.重症急性膵炎に対する開腹手術の12カ月後に胆管閉塞を認めた.内視鏡的,経皮経肝的いずれのルートからも閉塞部の通過は困難であったため,磁石圧迫吻合術(山内法)を施行した.22日目にガイドワイヤの閉塞部の通過が可能となり,経皮経肝的ルートから磁石を回収した.6カ月間ドレナージチューブを留置した後に抜去し,20カ月後の現在まで再狭窄を認めず良好な経過を得ている.本法は外科的な胆道再建術に比べて低侵襲であり,術後胆管閉塞に対して考慮すべき治療法と考える.
  • 池田 祐之, 牧野 直彦, 戸澤 智浩, 柿崎 泰明, 伊藤 美保, 佐藤 英之, 松田 暁子, 上野 義之
    2013 年 55 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.2008年に膵頭部の膵管内乳頭粘液性腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術(PD)を施行し,2011年2月から急性膵炎を繰り返すようになった.同年5月に原因精査のためダブルバルーン内視鏡(DBE)による膵管造影を試みたが,膵管空腸吻合部を同定できずに終了した.同年8月に再度DBEを施行.この時も吻合部の同定に難渋したが,胆石除去用バルーンカテーテルを内視鏡先端で拡張し,バルーン越しに視野を確保することで,ヒダに埋没していた吻合部を同定できた.PD後の膵管口の同定においては,吻合部狭窄や視野範囲の問題により難渋することを経験するが,本法はその一助になりうるものと考える.
経験
注目の画像
手技の解説
  • 藤谷 幹浩, 上野 伸展, 盛一 健太郎, 高後 裕, 佐藤 龍, 斉藤 裕輔
    2013 年 55 巻 1 号 p. 58-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    自家蛍光内視鏡(Autofluorescence imaging;AFI)の検査手技や特徴的所見を中心に解説した.AFIは,異常所見を緑とマゼンタの2色の色調差として表現することで,複雑な形態学的診断を単純化した手技である.この特長を生かすことで,客観的で再現性の高い診断が可能となる.精度の高いAFI診断を行うには,十分な前処置のもと,病変を正面視し,適度な空気量で静止画を得ることが必須である.AFIの色調変化は,腫瘍と非腫瘍との鑑別,腫瘍の異型度,潰瘍性大腸炎の重症度を反映し,内視鏡治療の必要性の判断やリンパ腫の病期診断,炎症性腸疾患の治療方針の決定などに重要な情報を提供する.今後の機器の改良により,追従性や解像度が向上することで,より汎用性の高い内視鏡手技になるものと期待される.
  • 花田 敬士, 福本 晃, 飯星 知博
    2013 年 55 巻 1 号 p. 68-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    術後再建腸管症例,特にRoux-en-Y法に対するERCPは癒着,Y脚の角度,吻合部からの距離などの問題から難易度が高いとされてきた.
    近年,ダブルバルーン内視鏡(DBE)を用いたERCPの検討およびその関連手技の有用性が報告されている.DBEは鉗子起上装置を持たないため,胆管への深部挿管および内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)などの乳頭処置は難易度が高い.また鉗子口が2.8mmであり,処置具の径に制限があること,処置具のデリバリーシステムの長さがDBEに適合しない場合があるなど,解決すべき問題点も多い.現在の手技は標準化されているとはいえず,今後さらなる症例の蓄積,治療効果や安全性の検証,スコープや処置具の改良が求められる.
資料
  • 赤坂 智史, 西田 勉, 筒井 秀作, 道田 知樹, 山田 拓哉, 荻山 秀治, 北村 信次, 市場 誠, 小森 真人, 西山 範, 中西 ...
    2013 年 55 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル フリー
    【目的】本邦においてESDは意識下鎮静法で施行されているのが現状である.しかし,術後肺炎等,ESDの麻酔関連合併症の危険因子の評価はなされておらず,その発生率,及び危険因子について,多施設で検討した.【対象】大阪大学ESD Study Group内の9施設にて2003年5月から2008年9月までの期間にESDを施行した胃腫瘍 計1,188症例を対象とし,一括切除率及び合併症(出血,穿孔,術後肺炎)と症例背景との関連性をロジスティック回帰モデルにて検討した.【結果】一括切除率は95.3%であった.合併症は出血37例(3.1%),穿孔49例(4.1%),術後肺炎19例(1.6%)に認めた.単変量解析では,出血,穿孔の危険因子は処置時間のみで,腫瘍径,年齢,性別,局在で有意差は認めなかった.術後肺炎の発生率は,潰瘍形成有り,75歳以上の高齢者,処置時間5時間以上,で有意に高かった.【結論】出血,穿孔の発生率は年齢で有意差を認めなかったが,術後肺炎の発生率は後期高齢者で有意に高く,ESD施行に際しそのリスクを最小限にする注意が必要と考えられた.
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