日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 高山 哲治, 高岡 遠, 青木 秀俊, 岡本 耕一
    2013 年55 巻6 号 p. 1787-1795
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    大腸癌の前病変としては,まず腺腫(adenoma)があげられ,腺腫はadenoma-carcinoma sequenceにより癌に進展する.次いで,traditional serrated adenoma(TSA)やsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)などの鋸歯状ポリープがあげられ,これらの病変はserrated pathwayにより癌に進展する.腺腫,TSA, SSA/Pの担癌率はいずれも約10%であり,同程度の発癌ポテンシャルを有すると考えられる.また,Peutz-Jeghers症候群や若年性大腸ポリポージスなどの過誤腫性ポリープも低頻度ながら癌化しうる前癌病変と考えられている.特殊型として,潰瘍性大腸炎のdysplasiaがあげられ,炎症を背景に癌(colitic cancer)に進展する.その他に,メチレンブルーに濃染する異常腺管であるaberrant crypt foci(ACF)が前癌病変の一つであるとする説が提案されているが,異論もありまだ十分には解明されていない.
原著
  • 辻 重継, 土山 寿志, 金子 佳史, 辻 国広, 稲垣 聡子, 冨永 桂, 吉田 尚弘, 早稲田 洋平, 林 宣明, 鳴海 兼太, 三林 ...
    2013 年55 巻6 号 p. 1796-1805
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】術前生検診断と術後病理診断の乖離の現状を把握し,採取生検個数の組織診断率向上への寄与を検討する.【対象と方法】2004年1月から2010年7月までの間,ESDもしくは外科的切除が行われ,病理学的検索が可能であった1,330病変(早期胃癌1,083病変,胃腺腫247病変)を対象とし,術前生検診断と術後病理診断を比較し,生検個数別の診断能を比較した.【結果】それぞれの生検診断における術後病理診断との乖離例の頻度と傾向が明らかとなった.生検個数を1個から2個に増やすことで診断率の向上を認めたが,3個以上に増やすことで有意差は認めなかった.【結語】術前生検診断は治療法選択の一助となる一方で,内視鏡所見を十分に加味した慎重な臨床的対応が重要である.また,生検個数は2個が妥当であり,不必要に生検個数を増やすことは組織型の診断能の向上に寄与せず,時には診断的ESDも考慮すべきと考えられた.
  • 林 智之, 土山 寿志, 竹村 健一, 竹田 康人, 朝日向 良朗, 木藤 陽介, 伊藤 錬磨, 中西 宏佳, 辻 国広, 稲垣 聡子, 吉 ...
    2013 年55 巻6 号 p. 1806-1811
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】抗血栓療法中の胃ESD症例277例を対象とし,薬剤別に後出血率,後出血発症日,後出血時の内服再開率を検討する.【結果】内服薬別の後出血率はチエノピリジン誘導体内服あり群13.3%,なし群2.7%と,内服あり群で高かった(p<0.001).後出血発症日はチエノピリジン誘導体内服あり群10.3±4.9日,なし群4.2±4.3日と,内服あり群で遅かった(p=0.03).後出血時の内服再開率はチエノピリジン誘導体内服あり群91.7%,なし群20.0%と,内服あり群で内服再開率が高かった(p=0.003).2002~2007年(前期群)と,2005年消化器内視鏡学会ガイドラインを踏まえた休薬期間の短い2008年以降(後期群)での後出血率は有意差を認めなかった.【結論】チエノピリジン誘導体は抗血栓薬の中でも特に強いESD後出血のリスク因子で,多くは内服再開後の遅い時期に後出血を来たした.
症例
  • 藤田 勲生, 豊川 達也, 表 静馬, 岡本 明子, 宮阪 梨華, 渡邊 一雄, 堀井 城一朗, 友田 純, 西江 学, 常光 洋輔
    2013 年55 巻6 号 p. 1812-1817
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例1は58歳,男性,症例2は91歳,男性.2例ともに早期胃癌に対してESDを施行し,約10時間後より上腹部痛と発熱を認めた.CTでは胃壁の著明な肥厚を認め,炎症反応の増悪も認めたため胃蜂窩織炎と診断し,直ちに抗生剤投与を開始したが,全身状態が急速に悪化したため緊急手術を行った.胃ESDに伴う胃蜂窩織炎は稀な偶発症と思われるが,術後は本症例のような重篤な偶発症にも速やかに対処できるように,厳重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 吹田 洋將, 浅木 努史, 片倉 芳樹, 齋藤 徹, 菊地 泰
    2013 年55 巻6 号 p. 1818-1826
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,女性.主訴は黒色便.24歳時に貧血で上部・下部消化管の精査既往あり.今回貧血精査のため入院.腹部CT検査で近位空腸に多血性病変あり.上部消化管内視鏡検査で同部位に隆起性病変を認め,自然出血していた.生検では肉芽組織のみ.4カ月後の内視鏡検査では隆起性病変は辺縁のみに立ち上がりを呈し,中心に陥凹を認めた.手術時に空腸の漿膜面に発赤を伴う隆起性変化を認め,楔状切除した.病理所見は異所性胃粘膜を含んだ空腸真性憩室であった.上部消化管内視鏡検査で観察された隆起性病変は空腸憩室が翻転したものと考えられた.翻転および自然整復を観察し得た異所性胃粘膜を伴う出血性空腸憩室の1例を経験した.
  • 只野 敏浩, 野口 謙治, 遠藤 克哉, 杉村 美華子, 岩渕 正広, 木村 憲治, 鵜飼 克明, 田所 慶一, 鈴木 博義
    2013 年55 巻6 号 p. 1827-1834
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は39歳の男性.多量の下血,ショック状態を呈して当院に入院した.上・下部消化管内視鏡検査,カプセル内視鏡検査の所見から小腸出血を疑った.ダブルバルーン内視鏡にて,空腸に湧出性の出血を伴う,発赤調,約1cm大の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.クリップと点墨でのマーキングを行った後,出血コントロール目的に小腸部分切除術を施行し,小腸粘膜下動脈瘤破裂と診断した.術前に内視鏡にて観察しえた小腸粘膜下動脈瘤破裂の報告は極めて稀である.内視鏡的に出血を伴う比較的大きな粘膜下腫瘍様の隆起性病変を見た場合には本症の可能性を考えるべきである.
  • 澁谷 充彦, 市場 誠, 都木 航, 山本 政司, 林 史郎, 高木 邦夫, 山本 克己, 福井 浩司, 稲田 正己, 足立 史朗
    2013 年55 巻6 号 p. 1835-1841
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    69歳,男性.慢性腎不全にて透析療法中の患者に下血を認めた.既往に脳梗塞がありアスピリンが投与されていた.下部消化管内視鏡検査にて横行結腸に著明な狭窄を認め,アスピリンによる大腸潰瘍に伴う狭窄と診断し,内視鏡下バルーン拡張術を施行した.本邦では,アスピリンを含むNSAIDsによる大腸潰瘍に伴う狭窄症例はまだ少なく報告する.
  • 藤森 一也, 滋野 俊, 丸山 康弘, 丸山 雅史, 柴田 壮一郎, 金井 圭太, 前島 俊孝, 吉澤 要
    2013 年55 巻6 号 p. 1842-1847
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    患者は86歳,女性.逆流性食道炎症状に対しランソプラゾールを内服していた.突然の臍周囲痛,数回の下痢,血便を認め入院となった.大腸内視鏡検査では脾弯曲付近の下行結腸に数cmの粘膜裂創と,遠位下行結腸にも凝血塊で覆われた縦走潰瘍を認めた.生検にて被蓋上皮直下にcollagen bandの肥厚と粘膜固有層内に慢性炎症細胞浸潤を認め,collagenous colitisと診断した.ランソプラゾールを中止後,症状は改善した.6カ月後の大腸内視鏡では縦走潰瘍は瘢痕化し,病理組織所見でもcollagen bandの肥厚はほとんど消失していた.通常は慢性下痢症状で発症するcollagenous colitisであるが,急激な腹痛,血便の虚血性大腸炎様症状で急性発症した点が特異的であった.
  • 石橋 啓如, 阿部 宏美, 宮川 明祐, 松島 知広, 秦佐 智雄, 中村 朗, 紫村 治久, 糸林 詠, 志村 謙次, 横須賀 收
    2013 年55 巻6 号 p. 1848-1853
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性,2年前に食道静脈瘤破裂を契機に一次的肝外門脈閉塞症と診断.以後計4回の静脈瘤破裂に対して内視鏡的静脈瘤結紮術が繰り返し施行されたが,短期間にて再発した.腹部造影CTでは肝門部の海綿状血管増生,脾腫を認め,発達した脾静脈は上腸間膜静脈と交通せずに左胃静脈を介して静脈瘤へと連続し,いわゆる左側門脈圧亢進症を呈していた.内視鏡治療単独では制御困難と考え,5% ethanolamine oleateによる内視鏡的硬化療法後,早期に部分的脾動脈塞栓術を施行したところ,供血路は血栓化し,食道静脈瘤は消失した.本法は治療抵抗性食道胃静脈瘤に対する有用な治療法と考えられた.
経験
  • 小原 英幹, 森 宏仁, 藤原 新太郎, 西山 典子, 小林 三善, 尾立 磨琴, 正木 勉
    2013 年55 巻6 号 p. 1854-1863
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    近年,消化管出血,穿孔,瘻孔に対し,画期的な全層縫合器としてOver-The-Scope-Clip(OTSC)が登場し,本邦でも薬事認可された.海外においてその臨床的有用性の報告が散見されるものの,本邦における文献的報告は未だ見当たらない.そこで,今回われわれは,当科でOTSCを使用した16例の治療成績を報告する.
    16例中14例においてOTSCによる創部閉鎖が成功した.慢性経過の出血性胃潰瘍2例においては,線維化による創面の硬さのため手技は不成功となった.OTSC成功14例の平均観察期間69.1日において,合併症は1例も認めなかった.
    OTSCは消化管穿孔,難治性出血,瘻孔治療において,有用かつ安全なデバイスであった.しかしながら,3cmを越える創面の完全閉鎖や慢性線維化例の閉鎖においては,OTSCの限界が指摘される.
注目の画像
資料
  • 岩田 圭介, 安田 一朗, 塩屋 正道, 向井 強, 中島 賢憲, 土井 晋平, 岩下 拓司, 冨田 栄一, 森脇 久隆
    2013 年55 巻6 号 p. 1868-1875
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】腹腔神経叢ブロック(celiac plexus neurolysis:CPN)は,上腹部悪性腫瘍の疼痛緩和を目的とし,既に確立された手技となっている.従来,X線やCTガイド下に行われてきたが,近年,超音波内視鏡を用いた手技(endoscopic ultrasound-guided celiac plexus neurolysis:EUS-CPN)が報告されている.EUS-CPNは,リアルタイムEUS画像下に手技を行うため,従来の手技よりも安全かつ容易に行えるが,残念ながらEUS-CPNを行っても除痛効果が得られない症例が存在する.あらかじめ除痛効果が期待できない症例が予測できるのであれば,こうした症例に対しては慎重にEUS-CPNの適応を判断するべきである.そこで今回われわれは,EUS-CPNの除痛効果に影響を与える因子を解析することにより,本治療をより効果的に行うための適応について検討した.
    【方法】われわれの施設でEUS-CPNを施行した47例を対象とした.造影剤を混入した純エタノールをEUSガイド下に腹腔動脈分岐部直上に注入し,手技直後のCTでエタノールの分布を評価した.治療効果判定は治療7日後に行った.
    【結果】除痛効果は32例(68.1%)で得られた.多変量解析の結果,腹腔神経叢浸潤(オッズ比4.82,P=0.0387)と注入エタノールの腹腔動脈左側のみの分布(オッズ比8.67,P=0.0224)が,EUS-CPN効果不良の独立した予測因子であった.
    【結論】腹腔神経叢浸潤を有する症例ではEUS-CPNの除痛効果は低く,また,エタノールは腹腔動脈の両側に分布するように注入を行うべきであると考えられた.
内視鏡室の紹介
最新文献紹介
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