【目的】腹腔神経叢ブロック(celiac plexus neurolysis:CPN)は,上腹部悪性腫瘍の疼痛緩和を目的とし,既に確立された手技となっている.従来,X線やCTガイド下に行われてきたが,近年,超音波内視鏡を用いた手技(endoscopic ultrasound-guided celiac plexus neurolysis:EUS-CPN)が報告されている.EUS-CPNは,リアルタイムEUS画像下に手技を行うため,従来の手技よりも安全かつ容易に行えるが,残念ながらEUS-CPNを行っても除痛効果が得られない症例が存在する.あらかじめ除痛効果が期待できない症例が予測できるのであれば,こうした症例に対しては慎重にEUS-CPNの適応を判断するべきである.そこで今回われわれは,EUS-CPNの除痛効果に影響を与える因子を解析することにより,本治療をより効果的に行うための適応について検討した.
【方法】われわれの施設でEUS-CPNを施行した47例を対象とした.造影剤を混入した純エタノールをEUSガイド下に腹腔動脈分岐部直上に注入し,手技直後のCTでエタノールの分布を評価した.治療効果判定は治療7日後に行った.
【結果】除痛効果は32例(68.1%)で得られた.多変量解析の結果,腹腔神経叢浸潤(オッズ比4.82,P=0.0387)と注入エタノールの腹腔動脈左側のみの分布(オッズ比8.67,P=0.0224)が,EUS-CPN効果不良の独立した予測因子であった.
【結論】腹腔神経叢浸潤を有する症例ではEUS-CPNの除痛効果は低く,また,エタノールは腹腔動脈の両側に分布するように注入を行うべきであると考えられた.
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