日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 8 号
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原著
  • 岩室 雅也, 岡田 裕之, 守都 敏晃, 川野 誠司, 那須 淳一郎, 河原 祥朗, 高田 尚良, 吉野 正, 山本 和秀
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2167-2174
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】マントル細胞リンパ腫はしばしば消化管に浸潤し,多発性のポリープ状隆起を形成するが,十二指腸病変の肉眼型について詳細に検討した報告はない.今回われわれはマントル細胞リンパ腫における十二指腸病変について検討した.
    【方法】十二指腸浸潤を伴うマントル細胞リンパ腫の11例を対象とし,臨床背景および内視鏡像について検討した.
    【結果】十二指腸病変はいずれも隆起性病変を呈し,うち6例ではmultiple lymphomatous polyposisを形成していた.また隆起性病変の形態を細分すると,小ポリープ集簇3例,疣状3例,疣状病変と小ポリープ集簇病変の両者の混在2例,粘膜下腫瘍様3例であり,小ポリープ集簇病変ではいずれもびらんを認めなかったが,粘膜下腫瘍様隆起病変および疣状病変は1例を除く全症例でびらんを伴っていた.
    【結論】上記の病変を十二指腸に認めた場合には,マントル細胞リンパ腫の可能性を念頭に置き,生検診断を行うべきであると考えられた.
  • 小澤 俊文, 和知 栄子
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2175-2182
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】早期の胃粘液癌における特徴的な内視鏡所見を抽出すること.【方法】2007年7月からの4年6カ月間に当科にて経験した,早期の胃粘液癌6例にNBI併用拡大観察を行い,粘液癌部に相当する組織所見と内視鏡所見を対比した.【結果】5例がpap-tub1-tub2など分化型腺癌由来,1例はsig由来であった.前者では不整な顆粒・乳頭状構造内に白色物質が不規則に散在していた.組織学的には粘膜深層で脱分化,小型化した癌腺管が粘液湖内を浮遊する粘液癌となり,白色物質は癌腺管群の間から排出する粘液に一致していた.後者の表面構造は不鮮明となり,不整でnetworkを形成しない血管群の間に白色物質が観察された.この円形で大小不同の白色物質は83%に認められた.【結論】不整な顆粒・乳頭状の表面構造を示す早期胃癌内に,円形で大小不同の白色物質を認めた場合には分化型腺癌由来の粘液癌である可能性がある.
症例
  • 平野 敦之, 土田 研司, 足立 和規, 稲垣 佑祐, 山川 慶洋, 河合 宏紀, 木村 吉秀, 妹尾 恭司, 佐藤 慎哉, 勝見 康平
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2183-2188
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.嚥下時のつかえ感を主訴に当院受診し,上部消化管内視鏡検査にて胸部食道に,基部が粘膜下腫瘍様の隆起で頂部に白苔を伴う20mm大の亜有茎性病変を認めた.亜有茎性病変からの生検では血管腫様の所見で,食道に発生したpyogenic granulomaと診断した.嚥下時のつかえ感があったためESDを施行した.食道pyogenic granulomaは本邦では16例報告されているが,亜有茎性病変の基部に粘膜下腫瘍様の病変を伴った症例は自験例のみで,ESDの手技を用いることで大量出血することなく完全切除することが可能であった.
  • 三石 雄大, 郷田 憲一, 今津 博雄, 吉村 昇, 梶原 幹生, 猿田 雅之, 高木 一郎, 加藤 智弘, 田尻 久雄, 池上 雅博
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2189-2196
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤上に生じた表在癌をESDにて切除しえた2例を報告する.いずれもアルコール性肝硬変患者で,1例目は切歯30cmに25×15mm,2例目は切歯35cmに33×20mmの平坦発赤病変を静脈瘤上に認め,Narrow-band imaging拡大所見から扁平上皮癌と診断した.まず食道静脈瘤に対し静脈瘤内注入法による内視鏡的硬化療法を行い,EUSで静脈瘤の血栓化を確認後,ESDにて一括切除した.組織学的にはいずれも深達度T1a-MMの扁平上皮癌で,脈管侵襲・切除断端は陰性であった.静脈瘤内注入法による硬化療法後のESDは,食道静脈瘤上の表在癌に対する内視鏡的治療法として有力な選択肢となりうる.
  • 濱本 英剛, 長南 明道, 中堀 昌人, 石橋 潤一, 松田 知己, 三島 利之, 三宅 直人, 佐藤 俊, 遠藤 希之, 高林 広明
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2197-2201
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は70代の女性.S状結腸癌の術前スクリーニングの上部消化管内視鏡検査(EGD)で噴門下部後壁に亜有茎性の隆起性病変を認めた.鉗子を用いた観察では病変基部には随伴病変は認めなかった.頂部から生検を施行したところ中分化型から高分化型管状腺癌の診断となり,S状結腸癌の術後に内視鏡治療を予定した.しかし3カ月後,7カ月後にEGDを施行するも病変は同定出来ず,15カ月後のEGDで病変が存在していた部位に0-IIc型癌を認め,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)にて治療した.0-I型から0-IIc型への形態変化の経過を詳細に追えた早期胃癌の症例は稀と考え報告した.
  • 堀田 潔, 渡部 公彦, 森 あろか, 高塚 正樹, 林 健博, 松山 宗樹, 仲川 浩一郎, 薮嶒 恒夫, 藤原 靖弘, 荒 ...
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2202-2207
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.数週間前より腹部膨満感を自覚しており,外来での上部内視鏡検査で胃石を認めた.当院入院後,コーラによる溶解療法に引き続いて,内視鏡的にスネアで砕石,除去し得た.胃石の治療としてはコーラ溶解療法,内視鏡的治療が知られているが,それぞれの単独治療でのデメリットを補う意味でも,併用療法が単独治療より有用かつ安全であると思われる.
  • 佐藤 匡記, 引地 拓人, 高木 忠之, 池田 恒彦, 鈴木 玲, 渡辺 晃, 中村 純, 杉本 充, 入澤 篤志, 小原 勝敏, 大平 弘 ...
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2208-2213
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.食道癌で食道亜全摘術ならびに後縦隔胃管再建術を施行された6年後に,早期胃管癌に対してESDを施行された.穿孔などの偶発症は認められなかったが,術翌日から発熱と右胸水が出現したため,縦隔炎や胸膜炎と考えられた.絶食と抗生剤投与を受け改善したが,術3週間後に,再び発熱が出現し再入院した.右膿胸を呈しており,胸腔ドレナージ術を施行された.排液は乳糜であった.絶食と抗生剤投与を施行され,1カ月半後に退院した.胃管癌のESD後に膿胸や乳糜胸を合併した報告はなく,非常に稀な症例と思われた.
  • 塩入 利一, 小林 洋明, 武田 良祝, 石橋 至, 河原 正樹, 岡 輝明
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2214-2219
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の男性,胃粘膜下腫瘍の経過観察中に腹痛および嘔吐が出現し,当院救急外来を受診.上部消化管内視鏡検査・上部消化管造影検査・腹部CT検査等から,胃粘膜下腫瘍によるBall valve syndromeと診断し,胃局所切除術を行った.腫瘍は病理組織学的検査により,胃Inflammatory fibroid polypと診断された.本症例は経過観察中にBall valve syndromeを呈した胃Inflammatory fibroid polypであるが,同様の報告はまれであり貴重な症例と考えられた.
経験
  • 森 宏仁, 小原 英幹, 藤原 新太郎, 西山 典子, 小林 三善, 正木 勉
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2220-2227
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    【背景】産学官・医工連携Kagawa NOTES projectは,pure NOTES開発の第一歩としてhybrid NOTES関連手技であるEFTRに取り組んできた.EFTRと必要な機器開発につき検討した.【方法】2009年から2011年までにhybrid NOTESを施行された10例(GIST 9例,神経鞘腫1例)を対象とした.術式,平均術時間,術後合併症,在院日数を検討し,必要な開発機器を検討した.【結果】平均術時間311分で腹腔鏡下胃局所切除がhybrid NOTESより短時間であった.在院日数8.1日で腹腔鏡下胃局所切除とほぼ同期間であった.開腹移行例や合併症は認めなかった.【結論】Hybrid NOTESは安全な手技と思われた.臨床経験からpure EFTRを施行するには信頼性のある全層縫合器と視野確保のためのカウンタートラクション器が必須である.
注目の画像
手技の解説
  • 川田 研郎, 岡田 卓也, 河野 辰幸
    2013 年 55 巻 8 号 p. 2232-2242
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
    中下咽頭癌を早期に発見するためには,まず問診でハイリスク群を絞り込む.内視鏡では左側臥位で匂いを嗅ぐ体位とする.マウスピースを外し,口腔内を観察,舌を大きく前方に突き出し,舌に沿って内視鏡を挿入,「エー」と発声させながら,中咽頭上壁~側壁~後壁を一望する.次いでスコープを鼻から挿入し,大きく開口させ,舌を前方に突き出しながら,アップアングルをかけ,中咽頭前壁を観察.下咽頭喉頭~食道入口部では大きく息を吸って一気に息を吐いて両頬を膨らませ続け(Valsalva法),さらに下顎を前方に牽引すると,喉頭が挙上し輪状後部と後壁の接着が解除され,食道入口部まで一望できる.表在癌拾い上げには白色光で,領域性のある色調変化に注意を払い,不整な凹凸,隆起,微細な小白苔の付着,正常血管透見の途絶,近接時のドット状血管を頼りにすると良い.画像強調内視鏡により視認性が向上し,表在癌の拾い上げも容易となる.
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