日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 1 号
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総説
  • 清水 誠治, 横溝 千尋, 石田 哲士, 森 敬弘, 富岡 秀夫
    2014 年 56 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎とCrohn病はいずれも原因不明の慢性疾患であるが,慣例的に狭義の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)と呼ばれ,それぞれに診断基準が定められている.診断においては画像診断が重要な役割を担うが,IBDと画像所見が類似する様々な疾患を鑑別する必要がある.近年,IBDの治療が進歩するとともに,さらに正確な診断が求められている.特に,カンピロバクター腸炎,アメーバ性大腸炎,腸結核,エルシニア腸炎などの腸管感染症をIBDと誤診することは回避しなければならない.また,潰瘍性大腸炎とCrohn病の鑑別が問題となる症例の対応にも注意を要する.本稿ではIBDと鑑別を要する疾患との大腸内視鏡による鑑別診断について解説した.
原著
  • 冨永 直之, 田中 雄一郎, 樋口 徹, 山口 太輔, 渡邊 聡, 緒方 伸一, 梶原 哲郎
    2014 年 56 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    【目的】EMR後の出血予防としてクリップ縫縮を行うことに一定の見解は得られていない.後出血予防としてのクリップの有用性を検討した.
    【方法】2010年1月から2012年2月の期間で,当院でEMRを受ける症例を対象に無作為化比較試験を行い,クリップ縫縮の止血効果について検討した.
    【結果】後出血はClip群に4例(1.0%),Non-clip群に9例(2.1%)認められ,両群に有意差は認められなかった(p=0.27).糖尿病,抗凝固薬,Ip polypは後出血と有意な関連を認め,慎重な対応が必要である.
    【結論】EMR後のクリップ縫縮は後出血に影響を与えない可能性があり,省略することで労力の軽減とコストの削減が見込まれる.
症例
  • 神戸 大介, 中谷 敏也, 藤永 幸久, 才川 宗一郎, 澤田 保彦, 下里 直隆, 永松 晋作, 松尾 英城, 岩井 均, 菊池 英亮
    2014 年 56 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.嚥下時違和感の精査目的で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,中部食道に粘膜下腫瘍様病変を認めた.超音波内視鏡で観察すると,病変の主座は粘膜下層であった.慎重に経過観察したところ,病変の経時的な形態変化を確認でき,生検および生検培養で食道結核と診断し得た.食道外には結核性病変を認めず,抗結核剤の投与で治癒を確認できた.食道結核は稀な疾患であるが,短期間で形態変化する粘膜下腫瘍様病変を認めた際には,鑑別疾患の1つとして認知しておくべきと考えられた.
  • 間宮 俊太, 松永 晃直, 岩瀬 裕郷, 松原 久裕
    2014 年 56 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.2009年8月に噴門部胃癌に対して胃全摘術施行,切除標本の病理結果はpT3(SS)N0(0/54)M0,pStage IIA,R0であった.2010年8月に行った上部消化管内視鏡検査で,下部食道に術前には認めなかった,びらんを伴った径10mm大の隆起性病変を認めた.炎症性ポリープを疑い一旦は経過観察としたが明らかな増大傾向を認めたため,2010年10月EMR施行.病理結果はtub2,胃癌の食道転移の診断でpVM1であったため,2010年12月ESDにより追加切除を施行した.ESDの病理結果はtub2を極少量認めたが,pHM0(3mm),pVM0(0.5mm)にて,食道癌の根治度評価に則ればCurAであった.ESD術後,補助化学療法としてUFT®(600mg/body)を1年間投与した.ESD治療後2年7カ月無再発生存中である.
  • 三輪 亘, 平塚 卓, 神谷 雄介, 丁 守哲, 大楽 勝了, 白石 史典, 藤本 武利, 佐藤 健, 加藤 洋
    2014 年 56 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.噴門部と体部の2箇所の胃粘膜下腫瘍の形態をとったH.pylori陰性API2-MALT1陰性の胃MALTリンパ腫に対して放射線治療が奏功した.本例は治療前9年間にわたる遡及的な内視鏡的検討が可能であり,まれなH.pylori陰性API2-MALT1陰性胃MALTリンパ腫の臨床像を検討する上で貴重な症例と思われた.
  • 伊藤 隆徳, 大久保 賢治, 竹内 淳史, 成田 道彦, 森田 清, 金沢 宏信, 清水 潤一, 西村 大作, 片田 直幸
    2014 年 56 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.左尿管癌手術のため入院中であった.貧血精査にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃前庭部大彎にかけてDiffuse Antral Vascular Ectasia(DAVE)に囲まれる長径30mm大の早期胃癌(IIa+IIc)を認めた.早期胃癌に対してESDを施行した.切除標本では粘膜内癌(tub1)であった.DAVEを伴った早期胃癌に対してESDを施行した例は稀であり,貴重な症例と考えられた.
  • 松浦 源太, 向井 伸一, 中村 真也, 小刀 崇弘, 阿座上 隆広, 高場 敦久, 趙 成大, 濱田 敏秀, 平田 研, 中西 敏夫
    2014 年 56 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.既往歴は糖尿病,高血圧,高脂血症.くも膜下出血で当院・脳神経外科に入院しコイル塞栓術を施行,術後経過中に左下腹部痛,血便があり当科紹介となった.下部消化管内視鏡検査で直腸Rsに拍動を伴う径約15mm,求心性の小血管集簇像を認め,腹部造影CTで直腸壁に造影早期に濃染される領域,3DCTで上直腸動脈を流入血管とする血管集簇像を認め動静脈奇形と診断した.その後断続的に少量の血便を認めたため動脈塞栓術を施行した.下腸間膜動脈造影で上直腸動脈分枝の拡張とその末梢での造影剤のpooling及び早期の静脈環流を認め,流入血管である上直腸動脈の分枝2本に対してコイル及びN-ブチルシアノヒストアクリル(NBCA)で塞栓術を行った.術後7日目の下部消化管内視鏡検査で病変部の血管拡張像は消失し小潰瘍を形成,その後再発は認めていない.消化管内視鏡で拍動を伴う血管性病変を認めた場合はAVMを念頭に置き外科切除を前提として3D-CTやIVRによる精査を行う必要があるが,周術期リスクが高い症例では低侵襲なIVR治療が有用である.IVRで治療を行う際には異常血管の集簇(nidus)を確実に塞栓するためにNBCAの使用が必要と考える.
注目の画像
経験
  • 山田 玲子, 井上 宏之, 野尻 圭一郎, 二宮 克仁, 田野 俊介, 葛原 正樹, 濱田 康彦, 田中 匡介, 堀木 紀行, 竹井 謙之
    2014 年 56 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    壊死性膵炎後のwalled-off necrosis(WON)に対し,初期に超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography;EUS)下ドレナージを行った3例(男/女=2/1,平均68歳:EUS群)とCTガイド下ドレナージを行った3例(男/女=2/1,平均55歳:CT群)の治癒過程を検討し,各治療法の有用性を評価した.EUS下ドレナージ後のネクロセクトミーは治療期間を短縮できたが,広範囲な膿瘍を形成した症例ではCTガイド下ドレナージの併用を要した.EUS群の入院期間が平均83.7日(57-115日)であったのに対してCT群では平均151日(113-209日)と長期治療を要したが,両群とも全例で治癒退院した.WONでは病態に応じた複合的な治療戦略が必要である.
手技の解説
  • 川久保 博文, 大森 泰, 中村 理恵子, 竹内 裕也, 北川 雄光
    2014 年 56 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    近年,咽喉頭領域の表在癌が多く発見され,表在咽喉頭癌の診断,治療は非常に注目されている.われわれは表在咽喉頭癌に対する治療として,彎曲型喉頭鏡にて喉頭展開し,経口的に鉗子や電気メスを挿入して,内視鏡補助下に上皮下層剥離を施行するELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery)を開発し,施行してきた.咽喉頭癌に対する内視鏡治療の最大の利点は,臓器温存が可能なこと,術後のQOLが高いことであることから,この領域は他の臓器と比較しても内視鏡治療のメリットが大きいと考えられる.ELPSは表在咽喉頭癌に対する内視鏡治療として,安全かつ確実に施行することができる.
  • 向井 強, 安田 一朗, 中島 賢憲, 土井 晋平, 岩下 拓司
    2014 年 56 巻 1 号 p. 71-86
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/22
    ジャーナル フリー
    切除不能悪性肝門部胆管閉塞による閉塞性黄疸に対して,現在では,内視鏡的胆道ステント留置術が第一選択となっている.開存期間からみると,Plastic tube stent(PS)よりSelf-expandable metallic stent(SEMS)が望ましいとされているが,SEMSを推奨するエビデンスは少なく,ステント選択やステント留置方法等に多くのControversyがある.
    SEMSは一度留置すると抜去や位置調節ができないため,不成功となった留置に対しては,SEMS本数が多いほど救済が不可能となる.また,個々の症例に対して必要なステント本数をあらかじめ予想することは困難であるため,十分な減黄および胆管炎の鎮静化が得られる前にSEMSを留置することは避けるべきである.すなわち,SEMS留置前にはENBD(Endoscopic naso-biliary drainage)を行い,減黄や胆管炎の鎮静化をはかる必要があり,実際に留置するステント本数は,黄疸や胆管炎がコントロールできたENBD tubeと同じ本数とすることが望ましい.
    現時点では,両葉にSEMSを留置する際には,Partial stent-in-stent法が望ましく,Axial forceが弱いSEMSのほうが胆管に対する追従性が良いため,長期の開存期間が期待でき,メッシュ間隙が大きいSEMSのほうが容易で確実なステント留置やReinterventionを行うことができる.
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