日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 10 号
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総説
  • 中村 昌太郎, 松本 主之
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3599-3606
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    消化管悪性リンパ腫の診断と治療の現況について概説した.消化管原発リンパ腫は消化管悪性腫瘍の中では1~8%とまれであるが,節外性リンパ腫の30~40%を占める重要な疾患である.組織型ではMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫とびまん性大型B細胞リンパ腫が多く,近年,腸管濾胞性リンパ腫の頻度が増加している.小腸リンパ腫の診断には,バルーン内視鏡またはカプセル内視鏡検査が必須である.胃リンパ腫と腸管リンパ腫のいずれにおいても,肉眼型と組織型には相関がみられる.治療には,watch and wait,抗菌薬治療,化学療法,放射線治療,外科切除,分子標的治療など多くの選択肢があり,罹患部位,組織型,病期により決定する.このため,治療前の正確な組織診断および病期診断が重要である.
原著
  • 楠本 聖典, 濱田 暁彦, 勝島 慎二, 水本 吉則, 上古 直人
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3607-3616
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    【目的】上部消化管内視鏡検査(EGD)におけるプロポフォール鎮静からの覚醒度を経時的に評価し,安全な離院までの必要観察時間を明らかにする.【方法】対象はEGD時に予め定めた投与法によってプロポフォール鎮静を行った104例.平均血圧,動脈血酸素飽和度,握力,視力,Mini Mental State Examination(MMSE),反射神経テストを評価項目とし,検査前と検査終了10分後,60分後を各々比較した.【結果】10分後で有意な低下を認めたのは平均血圧,握力,MMSEであった.60分後では平均血圧は有意な低下を認めたが,10分後に比べると回復傾向であった.握力とMMSEは回復した.【結論】プロポフォール鎮静下のEGDは安全に施行でき,検査終了60分後には平均血圧以外の項目で検査前の状態に回復した.血圧は帰宅基準上問題ない範囲であり,60分後には安全に離院可能と考えられた.
症例
  • 上田 通雅, 野村 雄大, 山本 富一, 山田 貴裕, 竹中 淳雄, 生田 亮子, 小中 義禎, 野田 昌男, 鷹巣 晃昌, 足立 靖
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3617-3623
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.鮮血便にて当科受診した.大腸内視鏡検査にて,横行結腸に隆起を伴うびらんを認め,組織学的検討からMALTリンパ腫と診断した.まず,Helicobacter pyloriH. pylori)の除菌療法を行ったが効果が得られなかったため,大腸切除術を行った.切除標本では,所属リンパ節への浸潤があり,その後,胃にもMALTリンパ腫が認められたため,化学療法を行い寛解が得られた.大腸MALTリンパ腫に関する治療法に関しては,症例も少なく一定の見解が得られていないが,今後,症例を重ね検討を加えることが必要と考えられた.
  • 福田 容久, 篠崎 香苗, 阿部 太郎, 樋口 裕介, 太田 励, 佐々木 貴英, 二ノ坂 建史, 仲道 孝次
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3624-3630
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.脳梗塞後遺症の嚥下障害のため経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を施行したが,胃瘻栄養開始後に繰り返す嘔吐から誤嚥性肺炎を呈した.上部消化管内視鏡検査で胃軸捻転症に矛盾しない所見を認め,嘔吐の原因と考えられた.その後,胃壁固定糸の抜去によって胃の捻転度合いが軽減し胃瘻栄養の実施が可能となった.胃軸捻転症の治療としてPEGによる胃壁固定術が知られているが,PEGの合併症として胃軸捻転症を呈した1例を経験したのでここに報告する.
  • 吹田 洋將, 石橋 啓如, 安田 伊久磨, 豊水 道史, 足立 清太郎, 浅木 努史, 片倉 芳樹
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3631-3638
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    症例は91歳,女性.主訴は血便,下腹部痛.初診時の大腸内視鏡検査にてBauhin弁より10cm口側の回腸に,全周性・連続性の粘膜の浮腫,白色から淡黄色の滲出物に覆われた粘膜下血腫様隆起の散在を認め,小腸造影では20cmの長さに渡りthumbprinting様の所見が確認された.第8病日の大腸内視鏡検査では同部位に厚い白苔を伴う全周性潰瘍と狭窄を認めたが,保存的加療にて症状は改善した.8カ月後の大腸内視鏡検査では狭窄所見は認められなかった.臨床経過や検査結果より虚血性小腸炎と診断した.急性期から治癒期まで内視鏡的に観察でき,かつ経過において一時的な狭窄所見を認めた一過性型虚血性小腸炎の症例は稀であるため報告した.
  • 川上 巧, 鎌田 和浩, 戸祭 直也, 吉田 憲正
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3639-3643
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    症例1は54歳男性.腹痛を発症した5日後,両下肢に紫斑が出現した.皮膚生検で血管周囲に炎症細胞浸潤を認めHenoch-Schönlein紫斑病(HSP)と診断.2週間の保存的治療で症状が改善せず,カプセル内視鏡を施行したところ小腸全域に発赤,浮腫,びらんを認めたため,ステロイドによる治療を開始した.症例2は53歳男性.両下肢に皮疹が出現した数日後に腹痛,尿蛋白を認め,皮膚生検で白血球破壊性血管炎を認めHSPと診断.ステロイドによる治療後に貧血の進行を認めたためカプセル内視鏡を施行したが,小腸内はほぼ正常であったためステロイド治療を継続した.カプセル内視鏡は病変の程度を把握し,治療方針を決めるのに有用であった.
  • 柴田 喜明, 岡田 夢, 永井 俊彦
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3644-3649
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.便通異常のため全大腸内視鏡検査を行い,回腸末端に多発するイクラ状小隆起性病変を認め,Multiple lymphomatous polyposis(MLP)の形態を呈していた.生検組織の免疫組織学的検討および全身検索の結果,回腸原発Extranodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue(MALTリンパ腫),Lugano国際会議分類stage II1と診断した.回盲部切除および回腸部分切除術を行ったが,腸間膜リンパ節に広範な浸潤を認めたため,術後補助化学療法を行った.7年が経過し寛解を維持している.MLP型小腸MALTリンパ腫は稀な疾患であり,その内視鏡像や治療法,長期予後など不明な点も多いため,貴重な症例と考え報告した.
  • 玄 泰行, 福井 勇人, 福居 顕文, 土肥 統, 城 正泰, 時田 和彦, 伊藤 義人
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3650-3655
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    Over The Scope Clip(OTSC)システムは2011年11月に本邦で薬事認可された全層縫合器であるが,消化管瘻孔閉鎖に対する有用性の報告は本邦において少ない.症例は70歳台,男性.胆石胆嚢炎及び胆嚢結腸瘻を認めたが,認知症を有する寝たきり状態(要介護3)のため,外科手術が困難であった.大腸内視鏡下に瘻孔を確認し,OTSCを用いて瘻孔縫縮術を施行し,OTSC施行から24日目には瘻孔の閉鎖を確認しえた.一般的に胆嚢結腸瘻は外科手術が必要であるが,外科手術が困難な症例に対してOTSCを用いた瘻孔縫縮が有用であった症例を経験したため,文献的考察を含めて報告する.
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新しい手法・処置具・機器
手技の解説
  • 吉田 直久, 内藤 裕二, 八木 信明, 柳澤 昭夫, 伊藤 義人
    2014 年 56 巻 10 号 p. 3660-3670
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/01
    ジャーナル フリー
    消化器内視鏡として初めてレーザー光源を用いた新世代内視鏡システムLASEREO(富士フイルム社)が開発された.本システムは410nmと450nmの波長を有する2つのレーザーおよび蛍光体により,白色光観察および狭帯域光観察であるBlue Laser Imaging(BLI)やBLI-brightが可能である.BLIは,近接観察や拡大観察において病変表面の微小血管や微細構造を観察するのに適している.一方で遠景観察においては,BLIより明るいBLI-brightが有用であり白色光に比し病変の視認性が良好となる.BLIの大腸腫瘍における診断については多施設共同研究にてNBI分類である広島分類や佐野分類を用いて診断することが可能であることを報告している.さらに,当科にて腫瘍性・非腫瘍性病変を含む大腸病変314病変について臨床病理学的検討を行ったところ正診率は全体で84.3%,長径20mm未満の病変で92.1%ときわめて良好であった.BLIを用いた大腸腫瘍診断の手技の特徴としては,surface patternの描出が特に鮮明であり診断に有用である.
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