日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
56 巻, 11 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
総説
  • 遠藤 昌樹, 松本 主之, 菅井 有
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3763-3774
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    十二指腸腺腫や早期癌の発見は増加しているが,疾患の頻度の低さもあり鑑別診断については曖昧な点が多い.生検による腺腫,早期癌の診断も容易ではなく,内視鏡診断・病理学的診断ともに他の消化管に比し課題が多いのが現状である.内視鏡治療に関しても適応の問題,手技の困難性,偶発症が高率である点などが問題である.さらに,鑑別診断を考える上では非腫瘍性隆起性病変の特徴を知ることも重要である.異所性胃粘膜とブルンネル腺過形成の頻度が高いが,拡大所見を含めた詳細な観察で鑑別が可能である.また腸型の腺腫・粘膜内癌では絨毛の白色化が特徴であり,重要な所見である.白色化と粘液形質の関連など臨床病理学的な検証が今後の課題といえる.
原著
  • 巽 亮二, 太田 智之, 松原 悠, 好崎 浩司, 坂本 淳, 佐藤 龍, 網塚 久人, 木村 圭介, 古川 滋, 前本 篤男, 折居 史佳 ...
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3775-3785
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】黒色食道炎と非黒色食道炎を包括した疾患概念として急性食道粘膜病変(acute esophageal mucosal lesion:以下AEML)が提唱されている.今回,AEMLの重症度を検討した.
    【方法】AEML88例を黒色食道炎群18例と非黒色食道炎群70例に分類し,臨床像と経過を比較した.
    【結果】AEMLは基礎疾患と入院加療を必要とする併存疾患を多く認め,他の内視鏡所見では食道裂孔ヘルニア,胃十二指腸潰瘍の合併が多く認められたが両群に差はなかった.死亡転帰を16%に認めたが全例AEML以外の病態での死亡であり,両群で死亡率に差は認めなかった.しかし,黒色食道炎群のほうが食道粘膜の改善速度は遅く,発症範囲も広域であり,合併症として食道狭窄をきたした症例が存在した.また,黒色食道炎群は非黒色食道炎群に比べて,経口(経管)栄養開始時期が遅く(8.7日 VS 3.8日),入院期間が長期化していた(33.1日 VS 12.8日).
    【結論】黒色食道炎は内視鏡所見や臨床経過ともに非黒色食道炎の重症型であると考えられた.
症例
  • 萩原 信敏, 松谷 毅, 野村 務, 栗山 翔, 内田 英二
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3786-3791
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性で,進行頸部食道癌にて17年前に咽喉頭食道全摘,頸部リンパ節郭清,非開胸食道抜去,後縦隔経路胃管挙上による咽頭胃管吻合術,前縦隔気管孔形成術(グリロー手術)を施行した.嚥下困難が出現したため上部消化管内視鏡検査を施行し,再建胃管内に全周性の隆起性病変を認め,生検にて腺癌であった.腫瘍は胃管内腔を完全閉塞していたため,細径内視鏡は腫瘍部を通過できなかった.0.038インチガイドワイヤーでさえも腫瘍を越えなかった.内視鏡下にアルゴンプラズマ凝固法にて2回焼灼し,腫瘍の壊死脱落から内視鏡を十二指腸へ挿入できた.透視下にカバー付き食道メタリック・ステントを留置し,経口摂取が可能となった.
  • 岡本 浩一, 二宮 致, 丸銭 祥吾, 斎藤 裕人, 牧野 勇, 中村 慶史, 尾山 勝信, 北川 裕久, 藤村 隆, 太田 哲生
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3792-3797
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    食道癌術後の食道胃管吻合部狭窄は,しばしば頻回な拡張処置を要し,患者のQOLを著しく障害する合併症である.今回難治性反復性吻合部狭窄に対して,回収可能な食道ステント(Flexella-J Esophageal Stent)の使用により良好な開存が得られた3症例を経験した.ステントの選択と留置後のメンテナンスには注意を要するが,難治性吻合部狭窄に対する本ステント留置は,従来の食道拡張術と比較してより良好で長期的な吻合部開存とQOLの改善が期待できる治療法であると考えられた.
  • 魚嶋 晴紀, 小泉 一也, 山本 章太, 市田 親正, 所 晋之助, 増田 作栄, 佐々木 亜希子, 江頭 秀人, 金原 猛, 賀古 眞
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3798-3804
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    60歳男性.2013年2月中旬より倦怠感と発熱を認め近医を受診した.画像検査より肝膿瘍の診断にて当院紹介受診され,CT検査で肝左葉に10cm大の胃穿通を合併した肝膿瘍が疑われた.上部消化管内視鏡検査では,前庭部小彎に膿汁の付着が認められ,穿通部よりドレナージ可能と判断し,経胃的肝膿瘍ドレナージ術を施行した.ドレナージチューブを留置後,膿瘍は漸次縮小し,第22病日に退院した.第45病日にCT検査で膿瘍消失を確認し,チューブステントを抜去した.その後も再燃なく経過している.
  • 後藤 康彦, 仲谷 朋久, 野口 地塩, 豊田 亮, 中川 晴雄, 香川 浩一, 村上 和成
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3805-3809
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,男性.突然の右下腹部痛にて当院救急受診となる.CT検査にて上行結腸部の腸重積と腸管壁内に多発する気腫性嚢胞性病変を認めた.緊急下部内視鏡検査にて重積は整復されたが,上行結腸には表面平滑な粘膜下腫瘍様の隆起性病変が多発していた.以上より腸管嚢胞性気腫症(PCI)による腸重積と診断し,高圧酸素療法を行ったが,嚢胞の改善は認められなかった.このため右半結腸切除術を施行した.術後経過は良好であり,術後6日目で退院となった.
経験
  • 吉田 直久, 内藤 裕二, 小木曽 聖, 廣瀬 亮平, 稲田 裕, 半田 修, 小西 英幸, 八木 信明, 柳澤 昭夫, 伊藤 義人
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3810-3815
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    【目的】大腸内視鏡検査における高濃度ポリエチレングリコール(PEG)であるモビプレップ®の服用量減少の検討を行った.【方法】対象患者は前日に検査食,ピコスルファートナトリウム20mlを,当日はモビプレップ®1L+水0.5Lを服用した.洗浄時間,内視鏡的洗浄度,服用前後の血液検査を検討した.なお従来PEG服用123名を比較対象とした.【結果】モビプレップ®投与111名において平均洗浄時間は165±53分であり従来PEGの192±72分に比し有意に短時間であった.良好な内視鏡的洗浄度が得られた割合は右側結腸で85.8%であった.血液検査で投与後血清Cl値の有意な低下を認めた.【結語】モビプレップ®は前日の検査食,緩下剤を併用することで服用量を減量しえた.
注目の画像
手技の解説
  • 石原 立, 飯石 浩康
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3818-3826
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    日本食道学会分類は,白色光観察またはNBI(narrow band imaging)などの画像強調観察にて扁平上皮癌が疑われる領域性のある病変を対象とする.対象となる病変を強拡大観察して拡張・蛇行・口径不同・形状不均一のすべてを示すB1血管がみられれば食道癌と診断し,4徴のすべてはそろわないA血管であれば非癌と診断する.病変の深達度は,B1血管がみられる部分はEP/LPM,ループ構造が壊れたB2血管がみられる部分はMM/SM1,ループ構造が壊れ太まった血管がみられる部分はSM2以深と推測される.病変内の血管が粗な領域をavascular areaすなわちAVAと呼ぶが,AVAのなかでもループ構造が壊れたB2血管やB3血管に取り囲まれたAVAが深達度と相関する.このようなAVAの大きさが0.5mm未満の場合に病変深達度はEP/LPM,0.5mm以上3mm未満の場合にMM/SM1,3mm以上の場合にSM2以深と推測される.
資料
  • 野村 幸世, 寺尾 秀一, 足立 経一, 加藤 隆弘, 井田 和徳, 渡辺 英伸, 新保 卓郎, 慢性胃炎の内視鏡診断確立のための研究会
    2014 年 56 巻 11 号 p. 3827-3837
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    胃炎は胃粘膜萎縮,胃癌の発生母地であり,重要な病態である.シドニーシステムは胃炎の組織学的診断には汎用されている分類であるが,組織学的診断と内視鏡的所見との間に対応があるわけではない.胃粘膜の内視鏡的所見と炎症とその活動性の診断との関係を確立することが本試験の目的である.24施設による前向き試験を行い,270名の患者に対し上部消化管内視鏡を施行し,15の内視鏡的所見について評価した.生検は胃粘膜の5カ所から行い,単核球浸潤,多形核白血球浸潤に関し,1人の病理医が評価した.各内視鏡所見の組織学的所見に対する感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,Receiver Operating Characteristics Curve(受信者操作特性曲線)下方面積(AUC/ROC)を計算した.単核球浸潤に対しても,多形核白血球浸潤に対しても,非常によく相関する単一の内視鏡的所見というものはなかった.体部においては,インジゴカーミンを用いた胃小区浮腫とregular arrangement of collecting venules(集合細静脈が規則的に配列する像)(RAC)の欠損との組み合わせが単核球浸潤に対してAUC/ROC 0.887ともっともよい相関を示した.多形核白血球浸潤に対してはインジゴカーミンを用いた胃小区浮腫とびまん性発赤の組み合わせのAUC/ROCが0.851と最もよかった.前庭部では,びまん性発赤と血管透見との組み合わせが単核球浸潤に対してAUC/ROC 0.780であり,血管透見とインジゴカーミンを用いた胃小区浮腫との組み合わせが多形核白血球浸潤に対してAUC/ROC 0.795と最も高値を示した.胃粘膜の炎症に対しては,内視鏡的所見の組み合わせが正診率と感度をあげると思われた.
内視鏡室の紹介
最新文献紹介
feedback
Top