日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 12 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 西崎 朗, 山本 佳宣, 津田 政広, 井口 秀人
    2014 年 56 巻 12 号 p. 3959-3967
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    食道がんに対する化学放射線療法や放射線療法は低侵襲で臓器温存が可能であり,食道扁平上皮がんに対する治療オプションの一つである.しかしながら,食道がんに対する化学放射線療法の問題点は,局所遺残割合が高いことである.遺残再発病変を原発巣の早期の小病変で発見することが,内視鏡的救済治療を行ううえでは必須である.放射線治療の完全寛解後の再発病変を早期に発見するには,特に2年以内は頻回に内視鏡検査を行い,その際,粘膜下腫瘍(SMT)様病変に注意することが,再発病変を早期に発見する上で有用である.内視鏡的救済治療としては,内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD),そして光線力学的療法(photodynamic therapy;PDT)がある.EMR/ESDは,1)深い潰瘍がなく,2)EUS,CTで遠隔転移がなく,3)病変が粘膜下層までにとどまり,4)内視鏡的治療で治癒が期待できる病変がよい治療対象である.一方PDTは,1)EUS,CTで遠隔転移がなく,2)病変が固有筋層までにとどまり,3)手術を希望しないか手術ができない病態がよい治療対象である.局所再発は内視鏡検査により,生検でがん再発を認める・深い潰瘍を認める・粘膜下腫瘍様所見がある・EUSで不均一腫瘍エコーがあるという所見で診断される.
症例
  • 小池 祐太, 西川 秀司, 藤田 與茂, 遠藤 文菜, 中村 路夫, 工藤 俊彦, 永坂 敦, 樋口 晶文
    2014 年 56 巻 12 号 p. 3968-3972
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.平成5年12月,頸椎前方固定術,腓骨移植術が施行され,interlocking plate,wireで固定された.平成12年3月の上部消化管内視鏡検査ではinterlocking plateの一部が食道内へ穿通していたが,明らかな自覚症状はなく,経過観察されていた.平成23年3月,胸部レントゲン写真にてinterlocking plateが下部食道内へ脱落している所見が認められ,緊急内視鏡で合併症なくinterlocking plateを摘出し得た.interlocking plateが下部食道内へ脱落した機序は,緩みを生じたinterlocking plateによる圧迫で食道後壁の壊死,穿孔が緩徐に生じ,穿通部が肉芽組織に充填されたためと考えられた.interlocking plateが食道内に穿通,脱落した同様の症例報告はなく,貴重な症例と考えられたため報告する.
  • 藤井 茂彦, 日下 利広, 後藤 規弘, 越川 頼光, 山口 大介, 池田 敦之, 中井 喜貴, 畦地 英全, 國立 裕之, 安原 裕美子
    2014 年 56 巻 12 号 p. 3973-3979
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は79歳男性.大腸腺腫の経過観察目的のため施行した下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に35 mm大の同色調表面隆起型病変をみとめ,一部に3mm大の軽度発赤隆起部を伴っていた.Narrow band imaging併用拡大観察では軽度発赤隆起部で不整な微小血管の増生をみとめ,クリスタルバイオレット染色拡大観察では,軽度発赤隆起部はVI型軽度不整pitを,周囲の表面隆起部は開大したII型pitであった.以上の所見より鋸歯状病変に合併した粘膜内癌と診断しESDを施行した.病理診断はSessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)に合併した粘膜内癌で,癌部は3mm大の微小病変であった.SSA/Pに合併した大腸粘膜内癌の診断に拡大内視鏡観察が有用であったことから,癌化のリスクを有するSSA/Pに対して拡大内視鏡による詳細な観察が重要である.
  • 皿谷 洋祐, 田中 盛富, 日吉 智子, 平田 尚志, 谷岡 大輔, 横峰 和典, 藤本 剛, 宮下 真奈備, 田中 彰一, 加藤 博也
    2014 年 56 巻 12 号 p. 3980-3987
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性.高度な腎機能障害を認めていた.径18×13mmの総胆管結石に対する治療目的でERCPを施行した.Endoscopic sphincterotomyを施行し,10-12mmの胆道拡張用バルーンカテーテルを用いてEndoscopic papillary large balloon dilationを施行したところ,胆道から噴出性の出血を認めた.圧迫止血による止血は困難であったがpartial covered Self-expandable metallic stent(SEMS)留置により止血が得られ,手術や血管内治療を回避できた.SEMSは21日後に偶発症なく抜去した.
  • 友田 健, 植木 亨, 里見 拓也, 小林 沙代, 藤澤 智雄, 名和 徹, 遠藤 久之, 藪下 和久, 下江 俊成, 坂口 孝作
    2014 年 56 巻 12 号 p. 3988-3993
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性.膵頭部癌に対して緩和治療中,下部悪性胆道狭窄を発症した.ヨード造影剤によるアナフィラキシーショックの既往があることから,術前のMRCPで胆管分岐を把握したのちにヨード造影剤の代替としてCO2を使用してERCPを施行した.造影カニューラより胆管内に直接CO2を30ml注入することで胆道造影並びに金属ステント留置を行うことが可能であった.術後は速やかに肝機能は改善し合併症も認められなかった.CO2はヨードアレルギーを有する患者において代替として有用であると考えられた.
経験
  • 飯田 智哉, 金戸 宏行, 我妻 康平, 佐々木 基, 永縄 由美子, 石上 敬介, 村上 佳世, 中垣 卓, 佐藤 修司, 清水 晴夫
    2014 年 56 巻 12 号 p. 3994-4001
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,経鼻ドレナージチューブの鼻腔内誘導法として,ガイドワイヤー(GW)単独法が考案され,当科でも2013年7月から2014年3月までに連続110症例を経験した.施行医は4名で,成功率は99.1%と高く,重篤な合併症は認めなかった.開始からGWを口腔外に誘導するまでの時間(時間A),口腔外誘導から最終留置までの時間(時間B),開始から最終留置までの時間(時間C=時間A+B)の中央値はそれぞれ58.0秒,61.0秒,124秒であった.施行医間で検査時間に差を認めたが,経験症例数と透視時間・時間Cとの間には負の相関が認められ,GW単独法は経験に伴い簡便で安全に施行し得る方法となるものと考えられた.
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手技の解説
  • 野村 昌史
    2014 年 56 巻 12 号 p. 4006-4012
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡挿入困難例を克服するための特別な秘策はなく,困難な状況ほど根気強く,基本に忠実に,丁寧な操作を心掛けることが大切である.挿入困難例に対しては,小回りの利く細径の軟らかいスコープが役立つことが多く,筆者の施設ではPCF-PQ260L/Iを積極的に活用している.普段からスキルアップに努める必要があり,検査の際には漠然と検査を行うのではなく,常に自分に課題を課して,それを克服できるように努力しなければならない.手の感覚が育たなければ挿入技術の向上には限界が生じるため,より細かな感覚を感じられるよう,常に手の感覚に注意を払うことも大切である.苦痛のない検査を心掛けることが,結果として小まめな短縮操作やスコープの状況(先端の位置,捩じれ・たわみ・ループ形成の有無など)を意識することへと繋がり,スキルアップの大きな原動力となる.
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