日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 3 号
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総説
  • 内藤 格, 大原 弘隆, 中沢 貴宏, 林 香月, 城 卓志
    2014 年 56 巻 3 号 p. 433-442
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,血中IgG4値の上昇,病変局所の線維化とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤,ステロイドに対する良好な反応性などを特徴とする原因不明の硬化性胆管炎である.近年,IgG4関連性疾患とともに,その疾患概念は定着しつつあり,本邦においてもIgG4-SC臨床診断基準2012が作成された.診断基準2012は1)胆管の特徴的な画像所見,2)高IgG4血症,3)胆管外のIgG4関連合併症の存在,4)胆管壁の病理組織学的所見の4項目から構成される.IgG4-SCの鑑別疾患としては,胆管狭窄を来す原発性硬化性胆管炎,胆管癌,膵癌などが重要とされている.IgG4-SC診断における内視鏡を用いた画像診断では,内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査,胆管腔内超音波検査,超音波内視鏡検査,下部内視鏡検査が,生検診断では内視鏡的胆管生検,超音波内視鏡下生検が重要な役割を担っている.本稿では主にIgG4-SC臨床診断基準2012に基づき,内視鏡を用いたIgG4-SC診断方法を中心に概説する.
原著
  • 野嵜 昌, 森 昭裕, 吉田 篤生, 林 晋太郎, 伏見 宣俊, 大橋 憲嗣
    2014 年 56 巻 3 号 p. 443-450
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】近年,経鼻内視鏡を用いた胃瘻造設(Percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が報告され安全で有用とされる.Introducer変法(I法),Pull法などの報告があるが,どの方法がより安全なのかは不明である.【方法】経鼻内視鏡を用いたI法(24Fr)と経鼻内視鏡による24Frボタンを用いたPull法(P法)でその安全性を無作為連続前向きに比較した.気腹,出血,瘻孔感染の頻度を主要アウトカムとした.【結果】対象はPEG適応患者99例(I法:49例,P法:50例)で全例胃壁固定下胃瘻造設は成功した.両法の患者背景と出血,瘻孔感染の頻度に有意差はなかった.気腹の頻度はI法で有意に高かった.I法で高度気腹による腹圧上昇から逆流,誤嚥を来し死亡した例を1例認めた.【結論】経鼻内視鏡を用いたPEGでは気腹の頻度はI法で有意に高く,選択の際には基礎疾患に留意すべきかもしれない.
症例
  • 山田 和俊, 北村 和哉, 丹尾 幸樹, 島上 哲朗, 荒井 邦明, 柿木 嘉平太, 山下 太郎, 酒井 佳夫, 水腰 英四郎, 金子 周一
    2014 年 56 巻 3 号 p. 451-456
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性,食道静脈瘤に対し内視鏡的硬化療法(EIS)を施行したが,その際の止血に難渋した.凝固能の低下,プロトロンビン時間(PT),ヘパプラスチンテスト(HpT)の解離,第V因子の著明な低下,第V因子インヒビターの上昇などを認め,後天性第V因子欠損症と診断した.診断時には出血症状を認めておらず,慎重に経過観察をしたところ,自然経過にて凝固能は改善と第V因子インヒビター力価の低下を認めた.内視鏡治療により生じた後天性第V因子欠損症は非常に稀であり,報告する.
  • 辻 宏和, 熊谷 将史, 稲田 悠記, 小林 雅子, 今川 健久, 大竹 由美子, 廣瀬 宏一
    2014 年 56 巻 3 号 p. 457-464
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.以前より鉄欠乏性貧血にて鉄剤が投与されていた.非回転性眩暈が出現し,消化管出血によるショックの診断にて入院となった.カプセル内視鏡検査(CE)にて上部空腸に輪状潰瘍を指摘し,経口的ダブルバルーン内視鏡検査(DBE)を施行したところ,上部空腸に入口部に潰瘍を伴う憩室を認め,治療として小腸部分切除術を施行した.病理学的には憩室は隣接する本来の消化管から連続した粘膜と筋層を有しており空腸消化管重複症と診断した.消化管重複症はMeckel憩室とともに真性憩室であり,仮性憩室も含めて術前診断が困難であるが,CEとDBEとの併用にて空腸憩室症と診断しえた1例を経験したので報告する.
  • 水藤 広, 山本 悠司, 田中 元, 清水 辰一郎
    2014 年 56 巻 3 号 p. 465-470
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性.2011年3月,上行結腸憩室出血で当院内科へ入院し保存治療で軽快.その際に施行した下部消化管内視鏡検査で上行結腸に20mm大の扁平隆起型腫瘍を指摘された.生検ではGroup 1であった.その後,内視鏡検査のフォローアップで周辺の隆起を伴う扁平な病変を経て,より明瞭な隆起へと腫瘍の形態が徐々に変化したが,生検ではすべてGroup 1であった.悪性が否定できず,2011年11月,腹腔鏡補助下右結腸切除術施行.病理結果は上行結腸神経鞘腫であった.大腸神経鞘腫は稀な疾患であり,本症例のように形態が変化した症例の報告はないが,嚢胞形成の報告があり,本症例でも嚢胞形成があった可能性が考えられた.
  • 山田 正樹, 佐藤 雅彦, 渡部 英, 根上 直樹, 齋藤 徹也, 石戸 保典, 岡田 治彦, 目時 亮, 佐藤 英章, 伴 慎一
    2014 年 56 巻 3 号 p. 471-476
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.左下腹部の違和感を主訴にFDG-PET検査をうけたところ,下行結腸に集積亢進を指摘された.下部消化管内視鏡検査を施行し粘膜下腫瘍と診断された.画像診断上悪性疾患の可能性も否定できず腹腔鏡下結腸部分切除術を行った.
    病理組織学的診断で腫瘍は紡錘形の細胞の増殖からなり,錯綜配列を伴っていた.免疫組織化学的にはS-100蛋白陽性,α-SMA,c-kit,CD34陰性の像を示しており,下行結腸原発の神経鞘腫と診断され,悪性所見は認められなかった.
    FDG-PETで集積亢進を呈した下行結腸神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
  • 矢根 圭, 真口 宏介, 小山内 学, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 金 俊文, 高木 亮, 松本 和幸, 権 勉成, 松森 友昭, 友成 暁 ...
    2014 年 56 巻 3 号 p. 477-483
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.2009年11月に分枝型IPMNに対して膵頭十二指腸切除術(SSPPD-IIA)を施行した.2011年6月(術後19カ月)のCTにて残膵主膵管の拡張と内部の淡い高吸収域を認め,IPMN再発と膵管空腸吻合部狭窄の鑑別を要した.同年7月に急性膵炎を発症し,プロトタイプシングルバルーン内視鏡(Short SBE)による吻合部の観察を試みたが同定困難であった.2012年2月の再検時には先端フードを装着し詳細に観察することで,狭窄した膵管空腸吻合部の同定が可能となった.バルーンによる吻合部の拡張術を施行したところ,白色の蛋白栓の流出を認め,主膵管内の透亮像も消失したため,再発は否定的と診断し経過観察継続中である.術後膵管空腸吻合部狭窄に対するバルーン内視鏡を用いたアプローチは比較的低侵襲であり,有用な方法の一つと考えられる.
経験
  • 後藤田 卓志, 草野 央, 山田 暢夫, 橋本 正治, 森安 史典
    2014 年 56 巻 3 号 p. 484-489
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    PEG造設を施行した65歳以上の481人(男性/女性;246/235,平均年齢は80.3歳)を対象として調査を行った.なお,単一施設における後方視的な調査であり,結果と解釈は制限されたものである.PEG造設の適応疾患は脳血管障害が232例(48.2%)で最多であった.本人からPEG造設の同意取得できた症例は18例(3.7%)で,「寝たきり」は468例(97.3%)であった.高齢者に対するPEG造設は,本人の意志に関わらず施行されていた可能性があった.リビングウィルについて国民レベルで議論すべきである.
新しい手法・処置具・機器
注目の画像
手技の解説
  • 大川 清孝, 青木 哲哉, 上田 渉, 大庭 宏子, 佐野 弘治, 福島 裕子, 井上 健
    2014 年 56 巻 3 号 p. 494-503
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    直腸の粘膜脱症候群(MPS)は顕在または潜在性の粘膜脱出があり,組織学的に繊維筋症を認める疾患単位である.隆起型,潰瘍型,平坦型などの多彩な内視鏡像を呈するため,癌を含む腫瘍性疾患や炎症性腸疾患との鑑別診断が重要である.
    大きな隆起型MPSは表面にびらん,白苔,表面不整などがみられ癌と間違われやすく,繊維筋症を組織で証明できない場合もみられる.生検で繊維筋症がみられないが,内視鏡的や臨床的に疑った場合は,ポリペクトミー・粘膜切除術や経肛門的局所切除で大きい組織を取り診断することも考慮する.潰瘍型MPSでは2型癌との鑑別が重要である.癌と診断され過大な手術が行われることがあり,内視鏡診断は重要である.平坦型MPSは直腸下端前壁の発赤斑やHouston弁上の輪状発赤が多い.このような病変を認識していない場合は他の炎症性疾患と間違うことがある.
  • 川久保 和道, 河上 洋, 伊佐山 浩通, 坂本 直哉
    2014 年 56 巻 3 号 p. 504-514
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    EUSランデブー法は,ERCPでの選択的胆管挿管困難例に対する,胆管アクセスのためのサルベージ法として有用性が報告されている.初めに,胆管をEUSガイド下に穿刺,穿刺針の中にガイドワイヤーを通し,順行性に乳頭を通して十二指腸に誘導する.そして,EUSを抜去して,ERCPスコープを挿入する.最後に,乳頭から出ているガイドワイヤーを頼りにして,胆管内にカテーテルを挿入する.手技が煩雑であり,専用の内視鏡や処置具が無いため,標準的な治療とは言えないが,直視下に胆管へのアクセスできるため,確実な胆管挿管が可能である.しかし,腹腔や後腹膜腔を介しての穿刺を行うための,胆汁漏出,気腹症,腹膜炎といった重篤な偶発症も起こりえることを認識しておく必要がある.また,EUSランデブー法には,様々なアプローチルートがあり,すべてに精通することがランデブー法成功のカギであるといえる.
資料
  • 山階 武, 石原 立, 上堂 文也, 長井 健悟, 松井 芙美, 河田 奈都子, 太田 高志, 神崎 洋光, 花房 正雄, 山本 幸子, 鼻 ...
    2014 年 56 巻 3 号 p. 515-521
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】50mm以上の表在食道癌に対するESDの報告は少なく,今回われわれは50mm以上の表在食道癌に対するESDの安全性と治療効果を検証することとした.
    【方法】大阪府立成人病センターで2004年1月から2011年4月までESDにて治療された50mm以上の表在食道癌39例を後ろ向きに検討した.
    【結果】全症例がESDにて一括切除されており,1例で穿孔のない縦隔気腫を認めた.また,11例で術後狭窄を認め複数回のバルーン拡張を要した(中央値5回).術前にEP/LPM癌と診断された33病変は26病変がEP/LPM癌,7病変がMM癌,3病変が脈管侵襲陽性であった.一括切除率は100%,完全一括切除率は92%であった.ESDの治癒切除率は70%,偶発症は2.5%に起こっていた.
    【結論】ESDでの一括完全切除率は92%で治癒切除率は70%と許容されるものであった.しかし50mm以上のESDを検討する際には術後狭窄を考慮する必要がある.
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