日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 5 号
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総説
  • 上村 直実, 八尾 隆史, 上山 浩也, 藤澤 貴史, 矢田 智之
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1733-1743
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    種々の感染診断法の偽陰性に伴う「H. pylori陰性胃癌」が少なからず認められるが,H. pylori未感染の胃粘膜に発生する「H. pylori未感染胃癌」の頻度は稀である.「H. pylori未感染胃癌」として代表的なものは,分化型胃癌に関しては八尾らが提唱した胃底腺型胃癌であり,未分化型胃癌に関しては粘膜内の印環細胞癌と考えられる.胃底腺型胃癌は,おもに胃体部に発生する腫瘍で,免疫組織学的には胃型形質を主体とする低異型度の癌であるが,早期に粘膜下層への浸潤がみられるもので,日常の内視鏡診療では萎縮性変化のない胃粘膜の胃体部に存在する小さな粘膜下腫瘍様病変に注意が必要である.一方,未分化型胃癌については,未感染胃粘膜に比較的多くみられる印環細胞癌が代表的なものと思われ,内視鏡的には胃体部の小さな褪色領域に注意すべきであり,今後,症例を集積した臨床的な解析が必要である.H. pylori陰性時代を迎える今後,H. pylori陽性胃癌と未感染胃癌に関する遺伝子レベルでの検討が必要となっている
原著
  • 北田 学利, 堅田 龍生, 亀山 竹春, 主島 洋一郎, 中野 克俊, 菅 和臣, 土居 貞幸, 丸山 博英, 鈴木 康元, 姫野 誠一
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1744-1750
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    【目的】全大腸内視鏡検査の前処置法としてのクエン酸マグネシウム製剤であるマグコロール®P等張液(MGP)を用いた分割投与法の有用性を検討した.【方法】MGPの分割投与群と従来の一括投与群に被検者を無作為に割り付け,腸管内洗浄効果,被検者の受容性ならびに安全性について検討した.【結果】前処置の総合評価を4段階(優,良,可,不可)で評価し良以上を前処置良好としたところ,良好が一括投与群で52.6%(20例/38例),分割投与群で82.5%(33例/44例)と分割投与群の方が有意に優れていた.被検者の受容性に関しては「非常につらかった」と訴える被検者が一括投与群より分割投与群の方が有意に少なかった.【結論】MGP分割投与法は,従来の一括投与法と比較し被検者の受容性が高く,安全で,しかも腸管内洗浄効果が優れていたことから,今後有用な前処置法になることが期待される.
症例
  • 中島 康雄, 松尾 恵五, 指山 浩志, 辻仲 康伸
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1751-1755
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性.下部消化管内視鏡検査の前処置としてポリエチレングリコール液(PEG液)を内服した.内服開始直後に嘔吐,吐血を認めたため,緊急上部消化管内視鏡検査を施行し食道下部左壁に約3cm程度の縦長の裂創を認めた.当初Mallory-Weiss症候群と診断し絶飲食,維持点滴を開始したが,心窩部痛が出現したため,CT検査を施行した.縦隔気腫および左側胸部への炎症の波及を認め特発性食道破裂と診断した.地域救命救急センターに救急搬入し,保存治療を行い軽快した.下部消化管内視鏡検査の前処置による特発性食道破裂は稀であり,診断が遅れ治療に難渋する可能性がある.前処置時の嘔吐に伴う胸痛や心窩部痛は,特発性食道破裂を疑って診療にあたる必要があると考えられた.
  • 三長 孝輔, 山下 幸孝, 宇谷 厚志, 谷口 洋平, 幡丸 景一, 中谷 泰樹, 赤松 拓司, 瀬田 剛史, 浦井 俊二, 上野山 義人
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1756-1762
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.健康診断の上部消化管内視鏡検査で胃粘膜生検を受けた翌日に多量の吐血を来し出血性ショックとなり当院救急外来に搬送となった.緊急内視鏡検査では胃体上部大彎より噴出性出血を認め,クリップ法で止血を行い救命し得た.内視鏡所見では胃体上部大彎に蔓状に蛇行した異常血管網を認めた.患者は45歳時に眼底所見,皮膚生検から弾性線維性仮性黄色腫(pseudoxanthoma elasticum;PXE)と診断されており,入院後に行った遺伝子解析では原因遺伝子であるABCC6遺伝子に変異を認めた.PXEでは合併症として時に重篤な消化管出血を起こすことがあり,死亡例の報告もあることから内視鏡検査時には細心の注意を払う必要がある.本症例が遺伝子変異を同定し得た消化管出血合併PXEの本邦初の報告と思われ,文献的考察を加えて報告する.
  • 八幡 晋輔, 大内 佐智子, 塩澤 寛子, 白川 裕, 﨏本 喜雄, 堀田 和亜, 廣畑 成也, 尹 聖哲, 藤本 昌代, 西上 隆之
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1763-1769
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.上部消化管内視鏡検査で胃体中部大彎にやや白色調陥凹性病変を認めた.Narrow band imaging(NBI)併用拡大観察所見では,腫瘍表面はやや大小不同ではあるものの,比較的均一な乳頭顆粒状構造を認め,窩間部の微小血管もほぼ均一なloop patternを呈していた.背景胃粘膜に萎縮は認めず,血清ペプシノゲン法でも胃粘膜の萎縮がないことが示唆され,Helicobacter pyloriは陰性であった.病変部からの生検結果よりSM浸潤した高分化型早期胃癌と診断し,幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的所見では細胞異型の弱い高分化型腺癌を認め,粘液組織学的検討では胃型粘液形質を有し,ペプシノゲン-I陽性で,胃底腺型胃癌と診断した.
  • 長谷川 大祐, 福井 勇人, 江口 晴子, 石井 道明, 高升 正彦
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1770-1773
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性.腹部膨満感,頻回の嘔吐を主訴に来院.腹部単純CT,上部消化管内視鏡,生検から胃癌に伴う幽門狭窄症と診断し手術予定となる.術前の胃洗浄のため16Frポリ塩化ビニル製経鼻胃管と外径15mmゴム製経口胃管にて胃洗浄を試みたが食物残渣が詰まり効果的な胃洗浄が出来なかったので,シングルバルーン小腸内視鏡用スライディングチューブにて胃洗浄を施行したところ効果的な胃洗浄を施行することが可能であった.
  • 土田 知恵子, 吉竹 直人, 山本 今日子, 山本 義光, 中野 正和, 菅谷 武史, 土田 幸平, 富永 圭一, 笹井 貴子, 冨田 茂樹 ...
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1774-1779
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.4年前の上部消化管内視鏡検査で上十二指腸角に5mm大の0-Is様病変(生検では腫瘍性か非腫瘍性か鑑別困難)を指摘された.4年後に7mm大へと増大あり,生検にて腺癌を疑う所見であった.1カ月後に施行した超音波内視鏡所見では粘膜内病変と考えられたため,内視鏡的治療の適応と判断した.さらにその2カ月後の内視鏡治療時には0-Is様病変は0-IIa+IIc様の陥凹性病変へと形態変化しており,診断的治療目的で内視鏡的粘膜切除術にて一括切除した.病理組織診断は高分化腺癌であり,深達度はSMであった.2カ月という短期間で腫瘍の悪性度・浸潤に伴うものと思われる形態変化をきたした早期十二指腸癌の一例を経験したので報告する.
  • 吹田 洋將, 足立 清太郎, 安田 伊久磨, 豊水 道史, 浅木 努史, 石橋 啓如, 片倉 芳樹
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1780-1787
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は91歳,女性.主訴は嘔吐.上部消化管内視鏡検査・腹部CT検査・上部消化管造影検査で食道裂孔ヘルニアに間膜軸性の胃軸捻転を伴ったupside down stomachと診断した.外科的治療が困難であったため内視鏡的治療を選択した.胃体部~前庭部と横行結腸が縦隔内に脱出していたため,大腸内視鏡で横行結腸を腹腔内に還納し,上部消化管内視鏡で胃軸捻転を整復した上で,経皮内視鏡的胃瘻造設術による胃壁前壁固定を施行した.治療後1年8カ月経過しているが症状の再発を認めていない.
    横行結腸の縦隔内脱出を伴うupside down stomachの症例は,本邦においてこれまですべて外科的治療が施行されており,内視鏡のみで治療された症例はないため報告した.
  • 井上 匡央, 奥村 文浩, 水島 隆史, 西 祐二, 西江 裕忠, 岩崎 弘靖, 安部 快紀, 加地 謙太, 福定 繁紀, 渡辺 和子, 佐 ...
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1788-1796
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.IgG4関連疾患の経過観察中,初診時から約5年後に心窩部痛を認めた.腹部造影CTで膵頭部に約25mm大の造影効果の乏しい腫瘍を認め,ERCPでは膵頭部主膵管狭窄,尾側主膵管の軽度拡張を認めた.超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)で膵癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には膵頭部腫瘍は高分化腺癌であったが,背景膵は著明なリンパ球やIgG4陽性形質細胞の浸潤,花筵状線維化,閉塞性静脈炎を認め,1型自己免疫性膵炎と診断した.自己免疫性膵炎,膵癌の関連性に関しては今後さらなる検討が必要であるが,併発も念頭におきフォローアップする必要がある.
経験
  • 馬嶋 健一郎, 永田 浩一, 金 潤哲, 瀬崎 徳久, 和田 亮一, 永谷 京平, 光島 徹
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1797-1801
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    【目的】経鼻内視鏡と塩酸ペチジンを使用した経口内視鏡の受容性を比較検討した.
    【方法】鎮静なしの経鼻内視鏡で上部消化管内視鏡検診を受けた受診者のうち,約1年前の内視鏡検査が,塩酸ペチジンによる意識下鎮静経口内視鏡であった274名を対象に,アンケート調査および咽頭反射の程度により受診者の受容性を検討した.
    【結果】前回の経口内視鏡と比べて,77.4%(212/274)の受診者が経鼻の方が楽と回答した.また,72.3%(198/274)の受診者が次回も経鼻を希望した.咽頭反射についても,経鼻内視鏡の方が良好であった.
    【結論】受診者の受容性は塩酸ペチジンを用いた経口内視鏡よりも経鼻内視鏡で優れていた.
注目の画像
手技の解説
  • 春日井 邦夫, 小笠原 尚高, 舟木 康, 佐々木 誠人
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1804-1812
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎の内視鏡分類としてロサンゼルス分類が世界的に広く用いられている.この分類はmucosal break(粘膜傷害)を基軸としてその長さや広がりでGrade分類している.一方,わが国では,欧米でminimal changeと呼ばれる粘膜の白濁,肥厚,発赤などの色調変化を認めるGrade Mと内視鏡的に変化を認めないGrade NをLA分類に加えた改訂LA分類が用いられている.内視鏡検査でこれらの所見を正確に診断するためには,深吸気により下部食道を十分に伸展させ,扁平上皮円柱上皮境界を全周性に同定し,mucosal breakの有無,わずかな発赤や白濁などを詳細に観察することが重要である.限局性の粘膜傷害は近接で観察することにより,びらんと発赤や白苔と扁平上皮の鑑別が可能となる.さらに,可能であればNBIなどによる画像強調内視鏡観察を行うことで扁平上皮と円柱上皮が明瞭に区別され,食道下部の柵状血管の同定も容易になるため,Barrett粘膜の診断にも有用である.特にminimal changeの正確な診断のためには,判定基準の統一や内視鏡診断に対するトレーニングが必要不可欠であろう.
資料
  • 加藤 隆弘, 八木 信明, 鎌田 智有, 新保 卓郎, 渡辺 英伸, 井田 和徳, 慢性胃炎の内視鏡診断確立のための研究会
    2014 年 56 巻 5 号 p. 1813-1824
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/03
    ジャーナル フリー
    慢性胃炎の分類としてシドニーシステムが提唱され,病理部門は広く用いられている.しかし,内視鏡部門はその病理所見に対応する内視鏡所見が未だ明らかにされず,慢性胃炎の内視鏡診断は未だに確立されていない.今回,Helicobacter pyloriH. pylori)感染胃粘膜の内視鏡所見を明らかにし,慢性胃炎の内視鏡診断を確立するために本研究を行った.
    2008年3月から2009年2月まで本研究に同意が得られた275症例を登録した.各内視鏡所見と生検組織の鏡検法によるH. pylori感染診断との関連性につき,体部,前庭部別に評価した.通常内視鏡の総合的H. pylori感染診断能のROC/AUCは体部は0.811,前庭部は0.707であった.H. pylori感染陽性の通常内視鏡所見として,びまん性発赤,粘膜腫張,点状発赤が,色素法では胃小区の腫大が有用であった.体部ではRAC所見,胃底腺ポリポ-ジス,ヘマチン,出血性びらんが,前庭部ではヘマチン,線状発赤,隆起型びらん,平坦型びらん,出血性びらんがH. pylori感染陰性を示唆する所見として内視鏡診断に有用であると考えられた.本研究により通常内視鏡と色素法による胃粘膜のH. pylori感染診断はほぼ可能であることが示唆された.
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