日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
56 巻, 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 上堂 文也, 神崎 洋光, 石原 立
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1941-1952
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    腸上皮化生はHelicobacter pyloriの慢性感染により惹起された粘膜の分子生物学的変化が,胃粘膜を腸の形質を持つ粘膜に変化させる現象で,胃癌発生の高危険病変として重要である.腸上皮化生は腺境界部を中心に前庭部・体部の各固有粘膜の化生巣として多中心性に発生し,各固有線とモザイク状に混在しながら領域を拡大し,最終的にそれらを置換することで進展する.正常胃粘膜の微細表面構造は基本的に胃体部で胃小窩模様,前庭部で胃小溝模様を示すが,腸上皮化生は幽門腺に類似した胃小溝模様,あるいは小腸に類似した絨毛様の形態を示す.通常内視鏡観察で多くの腸上皮化生は非化生粘膜に比べて白色調に見え,narrow band imagingはその所見を(1)White opaque substanceとそれによる上皮下毛細血管の不明瞭化,(2)Light blue crestによる短波長光の反射,(3)Marginal turbid bandによる上皮の白濁,(4)上皮表面構造の違いによる血管密度の低下などの要因により強調する.内視鏡は腸上皮化生の局在や分布を把握でき,鏡視下に狙撃生検が可能である.そのため,内視鏡所見と病理組織所見,分子生物学所見を橋渡しすることで,慢性胃炎・胃癌の病態解明にさらに貢献することが期待される.
原著
  • 谷田 恵美子, 和泉 元喜, 内田 苗利, 土谷 一泉, 大熊 幹二, 野口 正朗, 日高 章寿, 林 依里, 益井 芳文, 吉澤 海, 白 ...
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1953-1959
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】ESDでは腫瘍の正しい側方範囲診断が必要である.Acetic acid-indigocarmine mixture(AIM)法は,通常光内視鏡観察下で1回の散布で腫瘍部のインジゴカルミンがwash outされる簡便な方法である.ESD術直前の胃腫瘍の範囲診断に対するAIM法の有用性を検討した.【方法】ESD施行直前にAIMを散布し,インジゴカルミンがwash outされた部位を病変範囲としてマーキングした.通常光観察で病変境界が不明瞭であった71例を対象に,AIM法で病変が明確に識別できたか内視鏡写真で判定し,病理診断で決定した腫瘍範囲と一致するか検討した.【結果】AIM法で範囲診断可能だったものは71病変中62病変(87%)であった.診断不可能だったのは小さな陥凹性病変と粘液付着病変であった.【結論】ESD術直前のAIM法による側方範囲診断は簡便かつ有用であった.
症例
  • 横浜 吏郎, 安尾 和裕, 辻 忠克, 辻 賢, 斉藤 裕樹, 松本 学也, 平野 史倫, 西村 英夫
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1960-1965
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.認知症による経口摂取困難を理由に,introducer変法による経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:以下PEG)を施行した.しかし,胃瘻からの経腸栄養開始後に嘔吐を繰り返し,濃厚流動食の増量が困難であった.原因精査のために腹部CTを施行したところ,びまん性の胃壁内気腫を認め,門脈気腫,胃排出障害の合併を疑った.また,上部消化管内視鏡検査では胃体部から前庭部に散在する小斑状発赤を認めた.PEGに関連して発症した胃気腫症と診断したが,前記の所見は経腸栄養の中断後比較的速やかに改善した.PEGを契機に発症した胃気腫症の稀な一例を経験したので報告する.
  • 沖 裕昌, 上田 弘, 高田 昌史, 矢野 有佳里, 森澤 憲, 宮本 敬子, 秋森 豊一, 宮崎 純一, 澤田 晴生
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1966-1973
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    81歳女性.1998年より血便出現し潰瘍性大腸炎(全大腸型)の診断にて加療されていた.2006年大腸内視鏡検査にて直腸S状部に径3mmの境界明瞭なIIa病変を認め,生検では中等度異型腺腫の診断であり経過観察となっていた.2010年の大腸内視鏡検査では,同部位に周囲に平坦隆起病変を伴う径20mm大の発赤調で不整な隆起性病変を認めた.生検にて高分化型腺癌の所見であり,colitic cancerと診断し全結腸・直腸切除術+小腸人工肛門造設術を施行した.病理診断は0-Isp+IIa+IIb+IIc,tub1(+pap),pM,ly0,v0,pPM0,pRM0,pN0,Stage p0であり,隆起病変周囲には術前に指摘できなかったIIb+IIc病変を認めた.2006年のIIa病変も含めp53染色陽性であり,約4年の経過で扁平隆起型low grade dysplasiaからcolitic cancerへ進展したと考えられた.
  • 川口 章吾, 吉村 徹郎, 千葉 裕樹, 和田 豊人, 速水 史郎, 池永 照史郎一期, 楠美 智巳, 福田 眞作
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1974-1979
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.主訴は下血.腹部CT検査において小腸上部に壁肥厚像を認め,周囲のリンパ節腫大を伴っていた.ダブルバルーン内視鏡検査にて空腸に潰瘍性病変を認め,潰瘍底から噴出性出血を認めた.小腸部分切除術が施行され,病理組織学的検討の結果,濾胞性リンパ腫と診断された.潰瘍型を呈し,噴出性出血を確認し得た小腸原発濾胞性リンパ腫は極めて稀であり,報告する.
  • 方堂 祐治, 守護 晴彦, 米島 學
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1980-1985
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.B型慢性肝炎にて内服治療中に腹痛を自覚し,腹部CTにて上腸間膜静脈血栓症と診断した.保存的に抗凝固,血栓溶解療法を施行し血栓症は改善したが,発症75日後に小腸狭窄による腸閉塞をきたした.腹部CTにて空腸に限局する長さ2cm程度の狭窄を認めたため,小腸シングルバルーン内視鏡にて狭窄部を観察し,内視鏡的バルーン拡張術を施行した.その後は1年以上狭窄症状なく経過している.上腸間膜静脈血栓症に対する保存的治療後に合併した小腸狭窄に対して内視鏡的な観察及びバルーン拡張術を施行した例は非常に稀であり,貴重な症例と考えられる.
  • 矢部 信成, 村井 信二, 中太 淳平, 尾戸 一平, 吉川 貴久, 北里 憲司郎, 清水 裕智, 小島 健司, 林 量司, 北川 雄光
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1986-1991
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.肝細胞癌に対する肝左葉切除術後1年10カ月に限局性腹膜転移巣切除を施行した.その3年5カ月後に腹部CT検査で盲腸周囲と骨盤内に腫瘍陰影を認めた.大腸内視鏡検査にて盲腸に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍があり,生検にて肝細胞癌の再発と診断した.肝細胞癌の再発と診断し,回盲部切除術と骨盤内腫瘤切除術を施行した.肝細胞癌の大腸転移巣の内視鏡診断の報告は稀であり,文献的考察を加え報告した.
  • 平松 慎介, 根引 浩子, 末包 剛久, 山崎 智朗, 佐々木 英二, 佐野 弘治, 佐藤 博之, 金沢 景繁, 奥野 高裕, 井上 健
    2014 年 56 巻 6 号 p. 1992-1997
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    76歳,女性.平成23年3月に左肺下葉の肺癌に対して胸腔鏡下左肺下葉切除術を行い,病理組織結果は腺癌でTTF-1陽性であった.術後に陰性化していたCEAとCYFRAが再上昇したため,肺癌の再発を疑い,平成24年7月にPET-CTを施行したところ,膵頭部にFDGの異常集積を指摘され,肺癌の膵転移が疑われた.膵腫瘍に対してEUS-FNAを施行したところ,腺癌であったがTTF-1陰性であったことから,肺癌の膵転移ではなく膵管癌と診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った.
注目の画像
手技の解説
  • 竹澤 敬人, 矢野 智則, 砂田 圭二郎, 山本 博徳
    2014 年 56 巻 6 号 p. 2000-2010
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    食生活の欧米化に伴い,日本でも大腸癌の患者数が増加している.同時に大腸内視鏡の需要も増加している.内視鏡機器の発達に伴い,以前に比べると全大腸観察率は向上している.しかし様々な原因で全大腸を観察できないことも多々ある.そのような時に有用なのがバルーン内視鏡(Balloon-assisted endoscopy:BAE)である.BAEには,ダブルバルーン内視鏡(Double-balloon endoscopy:DBE)とシングルバルーン内視鏡(Single-balloon endoscopy:SBE)がある.BAEは,深部小腸の観察をする目的で開発された.DBEとSBEは,大腸内視鏡に応用することができる.当院ではほとんどの症例をDBEで行っている.DBEでは行う前の準備がまず大切である.DBEとして使用できるスコープは3種類あるが,EI-530Bを用いることが多い.DBEの挿入原理を理解したうえで施行すると,S状結腸癒着症例などの挿入困難例で,より有用性は高くなる.オーバーチューブが腸管を把持してくれるため,それ以上の腸管の伸展を防ぐことができ,内視鏡のシャフトに加えた力を効果的に内視鏡先端に伝えることができる.そして患者さんの苦痛を軽減することを可能にしている.また,内視鏡の安定した操作性を得られるので,内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)等の内視鏡治療においても非常に有用である.
資料
  • 佐々木 隆, 伊佐山 浩通, 前谷 容, 中井 陽介, 木暮 宏史, 川久保 和道, 水野 卓, 八木岡 浩, 松原 三郎, 伊藤 由紀子, ...
    2014 年 56 巻 6 号 p. 2011-2018
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】本後ろ向き研究では,悪性胃十二指腸閉塞に対するWallFlex duodenal stentの有効性と安全性を評価した.【方法】2010年1月から10月までに,症候性の悪性胃十二指腸閉塞を認めた42例に対してWallFlex duodenal stentを用いて治療を行った.【結果】手技成功率および臨床的成功率はそれぞれ100%と83.3%であった.Gastric outlet obstruction scoring system(GOOSS)中央値は,ステント留置によって0から2と増加した(p<0.01).生存期間中央値は3.3カ月(95%信頼区間:1.8-6.0カ月)で,摂食可能期間中央値は3.0カ月(95%信頼区間:1.1-4.3カ月)であった.Re-interventionは11例(26.2%)に必要であった.また偶発症率は26.2%であった.主な偶発症は,tumor ingrowth(9例;21.4%)およびtumor overgrowth(1例;2.4%)によるステント閉塞(全体:23.8%)であった.ステント逸脱,消化管穿孔,ならびにステント閉塞を伴わない食残閉塞は認められなかった.ステント閉塞を認めた患者の生存期間中央値は11.7カ月(95%信頼区間:2.2カ月-not reached)で,ステント開存期間中央値は4.0カ月(95%信頼区間:0.8-4.7カ月)であった.これらの患者はステントの追加にて良好に治療可能であった.【結論】WallFlex duodenal stentを用いた十二指腸ステント留置は,悪性胃十二指腸閉塞に対して安全で有効な治療であった.本ステントはuncovered metallic stentであるため,主な問題点は,tumor ingrowthによるステント閉塞であった.しかしながら,閉塞したステントもステントを追加留置することによって良好に治療可能であった.
  • 三宅 一昌, 楠 正典, 植木 信江, 名児耶 浩幸, 小高 康裕, 進藤 智隆, 河越 哲郎, Katya GUDIS, 二神 生爾, 津 ...
    2014 年 56 巻 6 号 p. 2019-2027
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    背景および目的:内視鏡的消化性潰瘍は,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に関連する消化性潰瘍合併症(顕在性の出血および穿孔)の代用マーカーとして偶発的に発見され,潰瘍合併症の疫学的調査に使用されてきた.たとえ偶発的に発見される無症候性の内視鏡的消化性潰瘍でさえ,抗血栓薬の併用が潜在性出血の原因となっているかもしれない.そこで,今回われわれは,潜在性出血を示唆する小球性貧血が,NSAIDに関連する内視鏡的消化性潰瘍または抗血栓薬の併用とどのような関連があるか検討した.
    方法:238人の長期NSAIDを服用する関節リウマチ患者が上部内視鏡検査を行い,その結果から抗血栓薬の併用および内視鏡的消化性潰瘍の有無のパターンの組み合わせから4つのグループに分類(抗血栓薬の併用/内視鏡的消化性潰瘍があり:+または なし:-)した:それぞれ:A,-/-(n=165);B,-/+(n=44);C,+/-(n=25);and D,+/+(n=4).
    結果:内視鏡的消化性潰瘍は,48人(20.2%)に認められた.4群間に統計学的な有意な相互作用が見られることを同定した上で,ヘモグロビン(Hb)とmean corpuscular volume(MCV)を潜在性出血の指標として,各グループ間において比較した.HbとMCVはいずれも,A,BおよびC群よりD群において有意に低値であった(Hb:それぞれP<0.01;P<0.05,MCV;それぞれP<0.01またはP<0.05).
    結論:抗血栓薬を併用しかつ内視鏡的消化性潰瘍を有する長期NSAID服用者は,顕性出血のエビデンスがなくても,他の長期NSAID服用者と比べ,有意に高度な小球性貧血が認められた.たとえ無症候性の内視鏡的消化性潰瘍であったとしても,抗血栓薬併用時には,潜在性に出血すると考えられた.
  • 草野 徹, 衛藤 剛, 赤木 智徳, 上田 貴威, 白下 英史, 安田 一弘, 佐藤 正博, 白石 憲男, 猪股 雅史, 北野 正剛
    2014 年 56 巻 6 号 p. 2028-2037
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】われわれはESD時の粘膜下注入材として,アルギン酸ナトリウム(sodium alginate:SA)溶液に着目してきた.当時用いたSA溶液は高粘度で,操作性などに課題を残した.今回,SA溶液の物性調整を行い,基礎的検討に加え,臨床的に安全性を評価した.【方法】0.4%ヒアルロン酸ナトリウム(sodium hyaluronate:SH)溶液を対照に,0.3~0.8%SA溶液のカテーテル通過性と粘膜隆起能を評価した.次に臨床研究として早期胃癌患者10名を対象に,0.6%SA溶液を用いてESDを施行した.【結果】0.6%SA溶液は0.4%SH溶液と比べ,カテーテル通過性に有意な差は認められなかったが,粘膜隆起能は有意に優れていた.臨床研究では,有害事象は全例に認められなかった.【結論】0.6%SA溶液は粘膜下注入材として安全性が確認され,今後さらに多数例で有効性を検討するに値することが示唆された.
内視鏡室の紹介
最新文献紹介
feedback
Top