日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 7 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
原著
  • 友田 健, 植木 亨, 齊藤 俊介, 藤澤 智雄, 名和 徹, 濱本 博美, 遠藤 久之, 藪下 和久, 下江 俊成, 坂口 孝作
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2150-2155
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    【背景】出血高危険度手技である内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)において,2012年改訂のガイドラインで推奨している抗血小板薬継続下での処置安全性についての本邦からの報告は認めない.そこで抗血小板薬内服継続下でのESTの出血性偶発症について検討した.【方法】対象は2010年10月から2013年2月に施行したERCP863例中,ESTを行った312例とした.血栓塞栓症高リスク例ではアスピリン(ASA)またはシロスタゾール(CLZ)は継続とした.抗血栓薬の非内服群,休薬群,継続群はそれぞれ238例,45例,29例であった.これらの3群間での出血性偶発症について検討した.【結果】出血性偶発症の頻度は非内服群,休薬群,継続群で,術中出血は16例,3例,2例,術後出血は6例,2例,0例であり,3群間に有意差を認めなかった.術後出血の危険因子としてヘパリン置換,肝硬変症例が独立した因子であった.【結論】ASAやCLZ単剤であれば,内服継続例においてもESTは安全に施行可能と考えられた.
症例
  • 大須賀 崇裕, 佐川 保, 佐藤 康裕, 中村 とき子, 藤川 幸司, 高橋 康雄, 武田 広子, 堀口 拓人, 加藤 淳二
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2156-2162
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.前医で食道メラノーシスのフォローアップ目的に上部消化管内視鏡検査が施行され,生検にて悪性黒色腫が疑われたため当院紹介となった.リンパ節転移,遠隔転移がないことを確認し,全生検目的にESDを施行した.組織学的にメラニン顆粒を含む異型細胞が基底層から上皮,粘膜固有層へ浸潤する像(junctional activity)を認め,免疫染色所見と併せて悪性黒色腫と診断した.深達度LPM,断端陰性,脈管侵襲陰性であった.追加外科切除を勧めたが患者の強い希望で,無治療で経過観察中である.術後15カ月が経過したが再発所見は認めない.本症例は食道メラノーシスのフォローアップ中にごく早期に発見された食道原発悪性黒色腫をESDにて切除した稀な症例と考えられた.
  • 長屋 匡信, 伊藤 哲也, 原 悦雄, 神保 陽子, 多田井 敏治, 関 亜矢子, 須澤 兼一, 越知 泰英, 大月 聡明, 保坂 典子, ...
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2163-2170
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    症例は86歳の男性.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行部に大きさ10mm程の顆粒状変化を伴う中心陥凹を有する粘膜下腫瘍様の形態を示す腫瘤を認め,生検で高分化型腺癌と診断された.超音波内視鏡検査により早期十二指腸癌と診断し,内視鏡的切除術を行った.病理学的には深達度SMの高分化型腺癌であり,Brunner腺過形成~軽度異型から癌へと異型の異なる組織への移行が認められ,Brunner腺より発生し,粘膜下腫瘍様の形態を示した早期十二指腸Brunner腺癌と診断した.免疫染色ではMUC5AC,MUC6ともに陽性でありBrunner腺由来の腫瘍に矛盾しない所見であった.本例は稀なBrunner腺由来腺癌と考えられた.
  • 金子 昌史, 野村 昌史, 三井 慎也, 田沼 徳真, 村上 佳世, 永井 一正, 真口 宏介, 篠原 敏也
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2171-2176
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.2009年4月に右腎細胞癌に対し右腎摘出術を施行.2010年4月頃より貧血を指摘されたが,上・下部消化管内視鏡検査では出血源を認めなかった.小腸出血を疑い2011年7月にシングルバルーン小腸内視鏡検査を施行し,空腸に粘膜下腫瘍様の立ち上がりを呈する2型様病変を4カ所に認めた.生検にて腎細胞癌小腸転移と診断し,小腸部分切除術を施行した.
  • 真崎 茂法, 高橋 宏和, 山北 圭介, 本城 信吾, 森田 康太郎, 高木 秀雄, 森園 竜太郎, 草間 敬司, 水尾 仁志, 内沢 政英
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2177-2182
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    症例は83歳男性.くも膜下出血後,胃瘻より経管栄養を行いリハビリを行っていた.2012年3月急性腎盂腎炎・敗血症性ショックを契機とし上部空腸に非閉塞性腸管虚血症(NOMI:Non-occlusive mesenteric ischemia)を発症した.第1病日胃瘻孔より細径内視鏡を用い経胃瘻的内視鏡(TGE:Transgastrostomic endoscopy)を施行,上部空腸に30cm以上に渡り粘膜の脱落・浮腫・湧出性出血を認めた.第9病日のTGEでは緑褐色調の広汎な壊死を呈していた.NOMIの経過を内視鏡下に観察しえた希少な1例と考えられ文献的考察を加え報告する.
  • 吉井 重人, 太田 和義, 松浦 愛, 末廣 智之, 森 泰希, 住吉 信一, 岩岡 泰志, 川村 欣也, 影山 富士人, 山田 正美
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2183-2189
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    86歳女性.総胆管結石の治療のため入院.複数個の総胆管結石に対してERCPを行い,砕石・採石処置を4回繰り返し施行した.4回目のERCP終了30時間後に右季肋部~側腹部痛が出現したため腹部CTを施行したところ,肝右葉外側被膜下に嚢胞状病変を認めた.同病変に対しエコーガイド下経皮的穿刺を施行したところ血液が吸引され,肝被膜下血腫と診断.発熱がなく循環動態も安定していたため保存的治療を行い改善した.肝被膜下血腫はERCPに伴う偶発症として非常に稀ではあるが,検査後に腹痛を認めた場合には肝被膜下血腫も鑑別診断にあげて,診断の決め手となる画像検査を積極的に施行して原因検索に努めることが肝要である.
経験
  • 阿部 孝広, 阿部 剛, 和泉 元喜, 谷田 恵美子, 永野 智久, 伊藤 善翔, 大熊 幹二, 内田 苗利, 益井 芳文, 金崎 章
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2190-2195
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    経肛門的イレウス管は大腸癌イレウスの際に緊急手術を回避するために有用である.病変狭窄部に比較的硬性な消化管用付属ガイドワイヤーを通過させ,そのワイヤー下にチューブを留置する.しかし,ガイドワイヤーやイレウス管の挿入に難渋する場合がある.出血や穿孔といった合併症の危険性も存在する.当院では標準的な挿入方法のみで挿入困難な場合には,細径内視鏡や胆道用ガイドワイヤーを用いて挿入を試みている.当院での経肛門的イレウス管留置方法について検討した.2008年10月から2011年8月までの間,施行された経肛門的イレウス管挿入24例(直腸9例,S状結腸15例)に対する留置方法を検討した.24例全例に合併症なくイレウス管を留置できたが,15例は標準の方法以外でイレウス管を留置し,うち12例はS状結腸病変であった.標準法での困難例では細径内視鏡や胆道用ガイドワイヤーを組み合わせて用いることで安全に挿入できた.
注目の画像
手技の解説
  • 高橋 美香子
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2198-2210
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)について,内視鏡の種類,挿入体位,穿刺位置,造設方法と使い分けを解説した.造設法はカテーテルが口腔咽頭を経由するかで分けられ,「Pull/Push法」は「upward」,「Introducer法」は「downward」である.咽頭MRSA保菌者や頭頸部・食道などに腫瘍を有する場合などは細菌や腫瘍細胞のimplantation防止のためIntroducer法を選択,胃壁固定が困難な場合はPull/Push法を選択する.
    胃壁固定は全例でできる限り行いたい.穿刺の安全性向上の他,早期の抜去事故発生時に重症腹膜炎への進展を回避することができる.
    Complicationについては,内視鏡医に必要なものを中心に紹介した.出血,他臓器穿刺,肺炎,腹膜炎,麻痺性イレウス,気腹,瘻孔感染についてである.また,カテーテル交換時の誤挿入と栄養剤誤注入について診断と防止策を述べる.
資料
  • 山形 拓, 平澤 大, 藤田 直孝, 尾花 貴志, 菅原 俊樹, 大平 哲也, 原田 善博, 前田 有紀, 小池 良樹, 鈴木 憲次郎, 山 ...
    2014 年 56 巻 7 号 p. 2211-2219
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/29
    ジャーナル フリー
    【目的】Barrett腺癌は正常扁平上皮下へ側方進展することがあり,癌が表層に露出していないため内視鏡による範囲診断が困難となる.Barrett腺癌の扁平上皮下進展部の内視鏡的特徴を明らかとし,その範囲診断に酢酸撒布法が有用であるかを検証することを目的とした.
    【対象と方法】当センターで内視鏡切除したBarrett腺癌25例を対象とした.扁平上皮下進展の存在と進展範囲を病理学的に検討した.その後,Barrett腺癌の扁平上皮下進展部の内視鏡画像をReviewし,その同領域の内視鏡的特徴および出現頻度を検討した.
    【結果】Barrett腺癌25例中10例(40%)に扁平上皮下進展を認めた.扁平上皮下進展部の内視鏡所見は,白色光では淡い発赤,扁平隆起,NBIでは淡い茶褐色を呈していた.扁平上皮下進展部に1.5%酢酸を撒布すると,小孔,小白斑,溝状の構造が観察され,この所見をSmall White Signsと呼称した.上述の所見によるBarrett腺癌の扁平上皮下進展部の範囲診断正診率は白色光50%,NBI 43%,酢酸撒布法100%であった.
    【結語】Barrett腺癌の扁平上皮化進展部の内視鏡診断に酢酸撒布法は有用であった.
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