日本消化器内視鏡学会雑誌
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56 巻, 9 号
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総説
  • 丹野 誠志, 羽廣 敦也, 林 明宏, 金野 陽高, 上野 敦盛, 葛西 和博
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3315-3323
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)のコンセンサスガイドラインが2012年に改訂された.2006年初版と2012年改訂版の最大の違いは,分枝型IPMNの診療方針選択に関するアルゴリズムの変更である.初版では嚢胞径を重視したアルゴリズムが推奨された.しかし改訂版では,壁在結節や10mm以上の主膵管径といったhigh-risk stigmataの有無が重視され,さらに悪性の疑いを示す所見をworrisome featuresと定義した上で,それらを認めない場合は嚢胞径に応じた診療方針を選択するとしたアルゴリズムに変更された.一方,浸潤癌のみを悪性と定義したWHO分類にしたがってcarcinoma in situという用語を廃止し,同程度の異型を示す病変をhigh-grade dysplasiaと定めたことも大きな変更である.2012年改訂版は今後,その有用性についてさまざまな検証を受けるとともに,新たなエビデンスにもとづいてさらに改訂されていく必要がある.
原著
  • 明石 隆吉, 清住 雄昭, 上田 城久朗, 生田 千尋, 山崎 明, 中原 和之, 山之内 健伯, 陣内 克紀, 田村 文雄, 浜田 知久馬
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3324-3332
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】ERCP後膵炎(PEP)は最も対処に苦慮する内視鏡関連偶発症である.今回,当院におけるPEP発症例をもとに,PEP発症のリスク因子がPEPの重症化に関与するかを検討した.【対象・方法】ERCP関連手技2,089例に発症したPEPの前向きデータを統計学的に解析した.【結果】単変量解析ではPEP発症のリスク因子として手技15因子に有意な相関を認めたが,多変量解析ではカニュレーション時間のみが有意なリスク因子であった.カニュレーション時間に関するPEP発症の予測確率は,カットオフ値21分で確率3%であった.PEP発症のリスク因子が重症化に関与するかの検討では,厚生労働省重症度スコアと性,体重,BMI,ESTの既往の患者4因子に相関を認めた.【結論】PEPの発症とその重症化には異なったリスク因子が関与している.ERCP施行時には発症のリスク因子であるカニュレーション時間に注意を要する.PEP発症例に重症化のリスク因子である男性,肥満(体重・BMI)およびESTの既往のいずれかの因子を認めた場合には重症化に注意する.
症例
  • 久保川 賢, 赤星 和也, 小森 圭司, 仲間 直崇, 本村 廉明, 板場 壮一, 遠藤 伸吾, 山下 尚毅, 中村 和彦
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3333-3339
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    83歳,女性.腹水貯留で来院.肝腫瘍なく,肝機能,凝固能もほぼ正常で,HBs抗原,HCV抗体ともに陰性であった.腹水穿刺細胞診はclassIで,培養も陰性であった.上部消化管内視鏡検査(EGD)にて,LmF2CbRC1の食道静脈瘤を認めた.腹部造影CT検査および腹部カラードップラー超音波検査(CD-US)にて,門脈本幹に血栓を認めた.門脈血栓に対して低分子ヘパリンおよびワルファリンカリウムによる抗凝固療法を開始した.利尿剤の併用で,腹水は消失し,約1カ月後のCD-USで門脈血栓は消失していた.食道静脈瘤に関しては無治療で経過観察したが,約1年後のEGDでは消失しF0CwRC0となっていた.
  • 水重 知子, 和唐 正樹, 稲葉 知己, 水川 翔, 高嶋 志保, 泉川 孝一, 石川 茂直, 田岡 伸朗, 三好 正嗣, 河合 公三
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3340-3346
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    胃石の治療としてコカコーラ等の炭酸飲料水による溶解療法の有用性が報告されているが機序は明らかでない.われわれは,炭酸飲料の溶解作用の主体は,二酸化炭素の気泡による物理的作用と考え,柿胃石の2症例に炭酸水による溶解療法を行い有効であったので報告する.症例1は91歳,女性.上部消化管内視鏡検査で5cm大の胃石と胃潰瘍を認めた.症例2は79歳,女性.上部消化管内視鏡検査で4cm大の胃石と胃潰瘍を認めた.2症例とも内視鏡的に破砕困難であった胃石が,1日量2,000mlの炭酸水による3日間の溶解療法後,容易に破砕が可能となった.
  • 三浦 洋輔, 小川 勝洋
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3347-3351
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    今回われわれは2カ月間続く下痢を主訴に来院し下部消化管内視鏡検査にて大腸に散在性の軽度発赤・浮腫を認め,同部位からの生検にて腸管スピロヘータ症(Intestinal Spirochetosis,IS)と診断された若年女性の1例を経験した.その他の感染性腸炎や炎症性腸疾患は否定されISによる腸炎と診断しメトロニダゾールによる除菌を行った.治療後は臨床症状,内視鏡所見ともに改善した.ISはBrachyspira属を原因菌とする人畜共通感染症で大腸粘膜上皮表面にスピロヘータの菌体付着が観察され診断される.ヒトにおける病原性については明らかとなっておらず,若年女性でのISは稀であり文献的考察を加え報告する.
  • 岡野 尚弘, 大島 忠, 熊谷 純一郎, 高橋 正憲, 鎮西 亮, 塩屋 雄史, 笹島 圭太, 東海林 琢男, 安達 章子, 甲嶋 洋平
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3352-3357
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    症例は肺腺癌と診断された68歳男性.転移検索のための精査で膵頭部と膵体部に腫瘍を認めたため,膵管癌,肺癌膵転移を考えERCP,EUSを施行した.しかし診断はつかず,EUS-FNAを施行した.組織像でadenocarcinomaが同定されたが,原発巣,転移巣の診断はできず,thyroid transcription factor-1(TTF-1)による免疫染色を追加した.TTF-1が肺腺癌で陽性,各膵腫瘍でいずれも陰性となり,原発性肺癌,同時性多発浸潤性膵管癌の診断に至った.膵全摘術,2期的胸腔鏡補助下右上葉切除術を施行し,切除標本でも同様の診断となった.肺癌と膵癌の重複癌を術前に診断しえた貴重な症例であり,さらに膵癌が多発している稀な症例であった.
  • 矢野 正明, 鷹取 元, 北村 和哉, 加賀谷 尚史, 水腰 英四郎, 酒井 明人, 本多 政夫, 柄田 智也, 伏田 幸夫, 金子 周一
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3358-3364
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    症例は30代男性,Crohn病にて通院中であった.生物学的製剤を用いた治療で臨床的寛解状態を維持しており,粘膜治癒評価目的に経肛門的ダブルバルーン内視鏡検査を施行した.骨盤内回腸に瘢痕狭窄を認め,観察範囲内の粘膜治癒が得られていると診断した.口側腸管評価目的の逆行性小腸二重造影を施行中に,腸管外への造影剤漏出と,広範な肝内門脈ガスの出現を認めた.緊急手術により腸管穿孔に対して回腸部分切除を施行した.門脈ガス血症は特殊な治療を要さず自然経過で改善した.寛解と考えていたCrohn病の小腸二重造影時に穿孔を来たし,門脈ガス血症を併発した稀な症例と考え報告する.
  • 武藤 瑞恵, 市來 一彦, 武藤 桃太郎, 石川 千里, 井上 充貴, 近藤 信夫
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3365-3371
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.便秘精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行し,虫垂開口部に径15mmの中心に陥凹を伴った隆起性病変を認めた.生検を施行し,病理結果は印環細胞癌であった.虫垂原発印環細胞癌の診断で回盲部切除術を行った.病理組織所見は虫垂の筋層から一部盲腸にかけて,同一病変内に印環細胞癌(sig)を主体とし,中分化型腺癌(tub2),粘液癌(muc)が混在した多様な組織像を呈していた.印環細胞癌の発生機序として分化型腺癌からの発生が示唆された.
注目の画像
新しい手法・処置具・機器
手技の解説
  • 阿部 靖彦, 野村 栄樹, 佐藤 剛司, 上野 義之
    2014 年 56 巻 9 号 p. 3378-3393
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/27
    ジャーナル フリー
    好酸球性食道炎は食道上皮への多数の好酸球浸潤を特徴とする慢性炎症によって食道運動障害や器質的狭窄を来たす疾患である.病因として食事中の抗原や空気中に浮遊している花粉などの抗原に対する過剰な免疫反応が想定されているが不明な点が多い.本症は近年欧米で増加しており,食物のつかえ感やfood impaction(食物の食道嵌頓)の一因として非常に注目されている.本症の診断の基本は症状と病理組織所見であるが,2次的な食道好酸球浸潤の除外,とくにGERDとの区別のため,PPIに対する反応性の評価が必要とされている.本症は特徴的な内視鏡像を呈する場合があり,これらを認識しておくことが診断において重要となる.本稿では,現在,国内外で用いられている診断基準を示しながら,診断のポイントについて,とくに内視鏡像,病理組織像の点から解説する.
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