日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 10 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 片倉 芳樹, 足立 清太郎, 豊水 道史, 浅木 努史, 石橋 啓如, 安田 伊久磨, 吹田 洋將, 野澤 聡志
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2427-2435
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
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    「背景・目的」ERCPに伴う傍乳頭部胆管後腹膜穿孔(以下,穿孔)と下部胆管の局所解剖の関連を検討した.「方法」ERCP施行321例を対象にCT,MRIで下部胆管の局所解剖の診断を試み,穿孔例の処置内容と解剖を検討した.「結果」穿孔例は2例で,共に内視鏡的乳頭括約筋切開術とバルーン排石術が適切に行われていた.解剖は下部胆管がほぼ膵に覆われるtype Aが76%,全周覆われるBが8%,AとBで判別困難なA/Bが8%,全周覆われないCが3%,CとAで判別困難なC/Aが5%であった.自験2例は各々CとC/Aであり,A,A/BおよびB群に比し,CとC/A群で有意であった.1例は内視鏡下に穿孔創を確認できず,内視鏡的経鼻胆道ドレナージで保存的に改善したが,1例は穿孔創を鏡視でき,手術を要した.「結論」type C,C/Aは解剖学的に穿孔の高危険例である可能性があり,ERCP時に留意すべきと考えられた.
症例
  • 藤原 靖弘, 岩倉 成華, 橋本 篤, 上村 理沙, 沢田 明也, 平本 慶子, 須川 貴史, 富永 和作, 渡辺 俊雄, 荒川 哲男
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2436-2440
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.2年前より食物のつまり感あり,内視鏡にて食道胃接合部に細かい溝を伴う限局した白斑病変があり,生検にて著明な食道上皮内好酸球浸潤を認めた.プロトンポンプ阻害薬投与にて自覚症状,内視鏡像,病理所見の改善を認めた.限局型好酸球食道炎の一例を報告する.
  • 大須賀 崇裕, 佐藤 康史, 石川 和真, 大沼 啓之, 岡川 泰, 杉田 真太朗, 秋山 剛英, 小船 雅義, 瀧本 理修, 加藤 淳二
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2441-2447
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.十二指腸球部にポリープを認め,精査加療目的に当科紹介.上部消化管内視鏡検査では,十二指腸球部に基部を持ち,頭部は発赤調で茎部は頭部と同等の太さの,茸状の外観を呈した山田IV型病変を認めた.拡大観察では,頭部に胃上皮化生または異所性胃粘膜と考えられる所見と微小な開口部を認めた.診断的治療目的にpolypectomyを施行したところ,組織学的には表層粘膜に胃上皮化生を伴う成熟脂肪組織の豊富な十二指腸Brunner腺過誤腫であった.Brunner腺過誤腫は,過形成性のBrunner腺に脂肪組織など他の要素が混在するもので,しばしば胃上皮化生を伴う1)とされる.本例では,拡大内視鏡観察によりBrunner腺由来病変に特徴的な所見の指摘が可能であった.
  • 南出 竜典, 福島 政司, 和田 将弥, 森田 周子, 占野 尚人, 井上 聡子, 鄭 浩柄, 杉之下 与志樹, 猪熊 哲朗, 上原 慶一郎
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2448-2454
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は92歳女性.貧血による労作時呼吸苦で入院し,消化管出血の精査目的で施行した造影CTで上部空腸に動脈相で濃染する小病変を認め,カプセル内視鏡でも同部位に血性腸液の貯留を認めた.ダブルバルーン内視鏡を施行し,上部空腸にoozingを呈する径5mmの発赤調の隆起性病変を認め,血管腫が疑われた.内視鏡的粘膜切除術を施行したところ,切除断端から拍動性出血を認めたが,内視鏡的止血術が可能であった.その後,貧血は改善を認め,再出血を認めなかった.病理組織検査では動静脈奇形という術前と異なる診断であったが,内視鏡的治療が可能であった.ダブルバルーン内視鏡によって診断・治療した小腸動静脈奇形は稀であるため報告する.
  • 吹田 洋將, 足立 清太郎, 野澤 聡志, 石橋 啓如, 豊水 道史, 浅木 努史, 安田 伊久磨, 片倉 芳樹
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2455-2462
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症(HPVG)と腸管気腫症(PCI)を伴い,遅発性狭窄を来した狭窄型虚血性小腸炎を経験した.症例は82歳,男性.主訴は嘔吐,腹部膨満.初診時にHPVG・PCIを認めたが,腹膜刺激症状がなかったため保存的に治療した.一時的に症状は改善したが,およそ5カ月後に腸閉塞を来した.経肛門的バルーン内視鏡検査で小腸の全周性潰瘍・管状狭窄が観察された.小腸部分切除が行われ,臨床経過や切除標本の病理組織所見より狭窄型虚血性小腸炎と診断した.
    小腸病変におけるHPVGの出現は,虚血性変化が粘膜下層以深であることを示唆しており,腸管壊死に至らない場合には遅発性小腸狭窄の発症を念頭に置く必要がある.
  • 福定 繁紀, 西江 裕忠, 水島 隆史, 井上 匡央, 加地 謙太, 尾関 貴紀, 安部 快紀, 岩崎 弘靖, 奥村 文浩, 佐野 仁
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2463-2468
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.多量の血便を主訴に来院した.緊急大腸内視鏡検査では回盲弁上に露出血管を伴う潰瘍を認め,3度の内視鏡的止血術にも関わらず,再出血を認めた.入院時提出した便培養からCampylobacter jejuniが検出されたため,カンピロバクター腸炎と診断し,レボフロキサシンの投与を開始した.その後も血便が続くため,抗菌薬をアジスロマイシンに変更したところ,3日後には血便は消失した.回盲弁上の潰瘍を認めた場合,感染性腸炎を疑わせる所見を伴っていなくても,カンピロバクター腸炎を念頭に置き詳細な問診や便培養検査を施行することが重要である.
  • 太田 英孝, 高村 和人, 藤田 琢也, 石松 義人, 渡邉 伸一郎, 西山 祐二, 田淵 陽子, 光岡 直志, 渡辺 哲夫, 物部 泰昌
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2469-2475
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.血便,粘液便を主訴に来院.下部消化管内視鏡検査にて,下部直腸に粘膜下腫瘍様の30mm大の隆起性病変を認めた.生検したが,病理学的には非特異的な組織像で質的診断には至らなかった.EUSでは直腸壁の第2,3層を主座とする約25mm大の低エコー腫瘤を認めた.腫瘤内には数mm大の無エコー域を散見した.腫瘤の境界は明瞭で固有筋層と腫瘤の間に連続した粘膜下層の介在を認めたため,ESDでの一括切除が可能と判断した.充分なインフォームドコンセントを行い,診断的治療目的にESDを施行.切除標本の病理学的検討にて,深在性嚢胞性大腸炎型粘膜脱症候群の確定診断に至った.
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 郷田 憲一
    2015 年 57 巻 10 号 p. 2478-2488
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/29
    ジャーナル フリー
    十二指腸の腫瘍性病変はまれな疾患であるため,概して十二指腸病変に対する臨床医の関心は薄かった.しかし,近年におけるEsophagogastroduodenoscopy(いわゆるパンエンドスコピー)の普及・標準化や最近の急速な高齢化社会の進展によって,十二指腸腫瘍性病変に遭遇する機会は増加している.それに伴い胃や大腸の腫瘍性病変と同様に,拡大内視鏡による鑑別診断あるいは腫瘍範囲の診断の精度向上が追求されるようになった.また,narrow-band imagingをはじめとする新規画像強調技術と拡大内視鏡との併用は表面微細構造に加え,微小血管構造の詳細な検討を可能にした.まずは通常内視鏡で拡大観察のよいターゲットなる小病変を見落とさないことが重要である.本稿では,われわれが行っている通常観察手技を紹介した後,十二指腸の臓器組織特性に即した拡大内視鏡による観察手技と診断のポイントについて言及したい.
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