日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 11 号
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総説
  • 栗林 志行, 保坂 浩子, 川田 晃世, 秋山 純一, 下山 康之, 河村 修, 山田 正信, 草野 元康
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2503-2512
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    食道運動障害の診断には食道内圧検査がゴールドスタンダードとして行われているが,現状では食道内圧検査を行うことができる施設は限られている.器質的疾患の除外目的に上部消化管内視鏡検査を行うことは食道運動障害の診断においても重要であり,上部消化管内視鏡検査である程度診断できる症例もある.残念ながら上部消化管内視鏡検査を行っている際に食道運動障害を指摘できるケースは多くはないが,食道運動障害を疑うべき内視鏡所見を認識しておくことは重要と考える.
症例
  • 三井 康裕, 北村 晋志, 岡本 耕一, 六車 直樹, 三好 人正, 木村 哲夫, 宮本 弘志, 岡久 稔也, 坂東 良美, 高山 哲治
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2513-2518
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性.検診目的に施行した上部消化管内視鏡検査にて胃穹窿部大彎に早期胃癌を認め,診断的治療目的にESD適応と判断した.左側臥位では病変への接線方向からのアプローチが困難であったため,オーバーチューブを挿入した上で右側臥位としてESDを施行した.術翌日に発熱および呼吸困難を認め,画像検査にて右膿気胸と診断した.胸腔ドレーンを挿入し保存的治療を行ったところ呼吸不全の改善を認めた.胃穹窿部病変に対するESDに際して右側臥位の有用性が報告されているが,本体位では胃内容物の逆流から重篤な呼吸器感染症を併発する場合があり注意が必要である.
  • 松本 一寛, 福島 政司, 谷口 洋平, 和田 将弥, 森田 周子, 占野 尚人, 井上 聡子, 鄭 浩柄, 杉之下 与志樹, 猪熊 哲朗
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2519-2523
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.慢性膵炎急性増悪のため他院に入院中であったが,大量の消化管出血と貧血の進行を認め当院に転送された.緊急で上下部消化管内視鏡をしたが,出血源は不明であった.CTで脾静脈に血栓と小腸静脈瘤を認めたが,小腸内視鏡では静脈瘤を同定できなかった.再度上部消化管内視鏡をしたところ,胃切除後(Billroth II法再建)の吻合部近傍に異所性静脈瘤を認め,内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation;EVL)およびポリドカノールの周囲粘膜への注入により止血した.その後,約1年経過したが,再出血していない.内視鏡的に止血できたことにより,侵襲の高い手術を回避することができた.
  • 定免 渉, 黒田 裕行, 藤井 重之, 前田 征洋, 佐藤 昌則, 加藤 淳二, 藤田 美悧
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2524-2530
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性.腹痛を主訴に受診し,CTで回盲部の炎症と門脈内ガス像を認めたが,腸管壊死や穿孔を示唆する所見はなかった.このため保存的に加療を行い退院したが,その1週間後に腹痛を主訴に再受診した.CTで小腸イレウスを認め,減圧後の大腸内視鏡検査では回腸に縦走潰瘍と狭窄があり,生検でCrohn病と診断した.高齢発症のCrohn病は頻度が低く,門脈ガス血症を伴うことはまれであるため報告する.
  • 井原 勇太郎, 檜沢 一興, 藤田 恒平, 仁田畑 智紀, 樋口 梢, 峰 真理, 江崎 幹宏, 飯田 三雄
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2531-2536
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    急激な発症経過の前後で大腸内視鏡検査を施行した非閉塞性腸間膜虚血症を3例経験した.79歳男性は大腸内視鏡検査31時間後に腹痛で発症し,右半結腸切除を要した.89歳男性は誤嚥に伴うショックを契機に発症し,下血1時間後の大腸内視鏡検査にて右側大腸から回腸に発赤浮腫を混在する暗紫色調の鬱血粘膜を認めた.81歳女性は腹痛で来院後,CTで門脈ガス血症と右側大腸に急速拡大する浮腫性肥厚を認めたが保存的治療で軽快した.15病日の大腸内視鏡検査にて上行~下行結腸に多発した浮腫性肥厚粘膜や皺襞集中を伴う種々の形態の潰瘍を認めた.管腔狭細や再発症状はなかったが,192病日の内視鏡検査にて潰瘍は完全には瘢痕化していなかった.
  • 小澤 俊一郎, 安田 宏, 佐藤 義典, 石郷岡 晋也, 細谷 浩介, 松尾 康正, 山下 真幸, 前畑 忠輝, 藤野 節, 伊東 文生
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2537-2542
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性.大腸内視鏡にて肛門に不整な陥凹面を認めた.NBI拡大内視鏡で陥凹内は食道表在癌におけるIPCLと類似した異型血管を認め生検で扁平上皮癌疑いとなり精査加療目的のため入院となった.内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行し0-IIc型の扁平上皮内癌であった.肛門管癌は臨床的に経験することが少ない疾患であり上皮内癌の状態で発見されることは稀である.本症例は画像強調内視鏡を用い早期診断が可能であった.また,ESDにて完全一括切除を行うことにより検体の詳細な評価が可能であり低侵襲に治療できたと考えられた.
    肛門管癌の早期診断,早期治療に画像強調内視鏡,ESDが有用であると考えられたため報告する.
手技の解説
  • 滝本 見吾, 山内 宏哲, 松山 希一
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2543-2550
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    われわれは,ESD後の穿孔予防にポリグリコール酸シート・フィブリン糊併用法を考案し,胃ESD術中の巨大穿孔や十二指腸ESD後の遅発性穿孔の治療や予防にも応用し良好な結果を得ている.ポリグルコール酸シートを潰瘍底に貼付し,フィブリノゲンを潰瘍底とシートの間に注入した後にトロンビンをシート内に散布する方法である.クリップ縫縮術に比し簡便な方法ではあるが,手技にはいくつかのポイントがある.潰瘍底に付着する血液を十分に洗浄すること,体位変換してシートを貼付しやすくすること,潰瘍底に押し付けながらシートを重ならず貼付すること,潰瘍底にできるだけシートを密着させること,フィブリノゲンをシートと潰瘍底の間に染み渡るように少量ずつゆっくり注入すること,シートに対してできるだけ垂直にチューブを当てること,フィブリノゲンをシートの上部に散布しないようにすることなどが重要である.
資料
  • 石毛 崇, 新井 勝大, 糸井 隆夫, 井上 幹大, 及川 愛里, 角田 文彦, 工藤 孝広, 齋藤 武, 田川 学, 萩原 真一郎, 堀内 ...
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2551-2559
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    本邦小児の消化器内視鏡検査における鎮静・前処置・スコープ選択の実態を明らかにすべく,日本小児栄養消化器肝臓学会を中心に作成中である小児消化器内視鏡ガイドラインの作成委員17名を対象に,その実態調査を行った.
    乳児及び幼児の上部消化管内視鏡の鎮静は全身麻酔が多く,大腸内視鏡では全身麻酔・静脈鎮静薬使用がほぼ同数であった.年長児でより静脈鎮静薬使用の頻度が高かった.バルーン小腸内視鏡は全年齢とも全身麻酔が最多であったが,経肛門挿入では鎮静薬も多く用いられていた.静脈鎮静薬使用例では,複数の鎮静薬・鎮痛薬を併用する施設が多かった.鎮静薬使用例では,鎮静および患者観察のため,専従の医師の立会いが全施設で行われていた.腸管洗浄薬は患者の味の好みなどに応じて複数薬剤から選択する施設が多かった.また,スコープサイズの選択基準として年齢,検査目的,体重を重視する施設が多かった.
  • 西澤 俊宏, 鈴木 秀和, 相良 誠二, 金井 隆典, 矢作 直久
    2015 年 57 巻 11 号 p. 2560-2568
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    背景と目的:消化器内視鏡ではしばしばミダゾラムのような鎮静剤を必要とする.最近,α2アドレナリン受容体作動性鎮静剤であるデクスメデトミジンが開発された.消化器内視鏡におけるデクスメデトミジンによる鎮静の安全性と有効性を評価するために,システマティックレビューとメタ解析を行った.
    方法:PubMed,Cochrane Library,医学中央雑誌において論文検索を行い,デクスメデトミジンとミダゾラムを比較した適切な無作為化比較試験を精選した.選択基準を満たした研究データから統合オッズ比もしくは加重平均差を算出した.
    結果:無作為化比較試験9件が採択された.体動発生に関してミダゾラムに比較してデクスメデトミジンの統合オッズ比は0.078(95%信頼区0.013-0.453,P<0.0001)で,各研究間の異質性も認めなかった.ミダゾラムに比較してデクスメデトミジンはRamsay鎮静スコアを有意に上昇させ(加重平均差+0.401;95%信頼区間 0.110-0.692,P=0.0069),各研究間の異質性も認めなかった.低酸素血症,血圧低下および徐脈に関して,ミダゾラムに比較してデクスメデトミジンの統合オッズ比は,0.454(95%信頼区間0.098-2.11),1.37(95%信頼区間0.516-3.637)および2.58(95%信頼区間0.978-36.785)と両群間に有意差を認めなかった.
    結論:消化器内視鏡,特にERCPとESDにおいてデクスメデトミジンはミダゾラムに比較してより有効で,合併症リスクに有意差を認めなかった.
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