日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 2 号
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原著
  • 稲富 理, 今井 隆行, 馬場 重樹, 長谷川 大, 伴 宏充, 西田 淳史, 塩谷 淳, 西村 貴士, 佐々木 雅也, 辻川 知之, 安藤 ...
    2015 年 57 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    【目的】中枢性α2受容体作動薬であるデクスメデトミジン(DEX)のERCP鎮静における安全性と有効性を後方視的に検討した.【対象】ERCPの鎮静にミダゾラム,ペンタゾシンの適宜投与に加えてDEXを使用した86症例(DEX群),およびDEX非使用の112症例(従来法群).評価項目は偶発症頻度,鎮静薬の使用量および循環動態変化とした.【成績】SpO2低下の頻度はDEX群で有意に低下し(3.5% vs 11.6%,p=0.04),呼吸抑制による検査中止例が従来法群では3例に認めた一方,DEX群では1例も認めなかった.ミダゾラム,ペンタゾシンの平均使用量はDEX群で有意に少なかった(p<0.001).血圧及び心拍数は,DEX群で有意に低下を認めたが,カテコラミンを使用した症例は認めなかった.【結論】DEXの使用は呼吸抑制作用を有する他の鎮静薬の追加投与量を抑制し,ERCPの安全な鎮静に有用である.
症例
  • 宮岡 洋一, 塚野 航介, 上野 さや香, 山之内 智志, 楠 龍策, 伊藤 聡子, 藤代 浩史, 高下 成明, 大沼 秀行, 木下 芳一
    2015 年 57 巻 2 号 p. 128-133
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性.2001年に小腸型クローン病と診断されたが,治療自己中断.2012年にクローン病再燃で入院した際の上部消化管内視鏡で中部食道中心に白斑の付着と発赤した縦走溝所見を,生検で扁平上皮層内に高倍率視野1視野内に20個以上の好酸球浸潤を認めた.無症状のため,好酸球性食道炎疑診例とし,メサラジンと成分栄養食でクローン病治療を開始し寛解導入できた.約4カ月後に胸部つかえ感,胸やけ症状が出現し,再検した上部消化管内視鏡ならびに生検所見とあわせて,好酸球性食道炎と確定診断した.フルチカゾンプロピオン酸エステルの嚥下療法を開始し,症状は改善した.上記2疾患の合併は稀であり報告した.
  • 河野 博行, 岡田 裕之, 宮谷 克也, 今川 敦, 前島 玲二郎, 名和 徹, 中津 守人, 安東 正晴
    2015 年 57 巻 2 号 p. 134-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    アフタ性大腸炎を契機として多発アフタ型クロ-ン病と診断し得た3症例において上部消化管病変のまとめを行った.全例でクローン病の特徴的胃十二指腸病変とされる竹の節状外観を認め,同部からの生検で3例中2例非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.アフタ性大腸炎の鑑別上,生検を含めた上部消化管検索は有用であった.また生検中46%にfocally enhanced gastritisを認めた.特に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めたすべての生検で認めた.生検でfocally enhanced gastritisを認めた場合,連続切片などの詳細な検討を行うことで肉芽腫検出率向上が期待される可能性も示唆された.
  • 吹田 洋將, 石橋 啓如, 足立 清太郎, 豊水 道史, 浅木 努史, 安田 伊久磨, 片倉 芳樹, 齋藤 徹
    2015 年 57 巻 2 号 p. 140-148
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    上部消化管術後のため経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG,percutaneous endoscopic gastrostomy)が困難であった2症例において,経皮内視鏡的十二指腸瘻造設術(PED,percutaneous endoscopic duodenostomy)を選択した.1例目は85歳女性,Billroth I法幽門側胃切除後.横行結腸が十二指腸に近接していたため,誤穿刺を回避するため大腸造影補助下でPEDを施行した.2例目は71歳男性,食道亜全摘術,後縦隔経路で胃管再建術後.腹壁と十二指腸の間に横行結腸が部分的に介在していたため,大腸内視鏡補助下で結腸を移動させPEDを施行した.造設後のCT検査では2例とも他臓器の誤穿刺を認めず,また栄養を開始したが重篤な偶発症を認めなかった.
    上部消化管術後でPEGが困難な症例に対して,PEDは有用な選択肢になりうると思われた.
  • 田代 良彦, 河合 雅也, 宗像 慎也, 嵩原 一裕, 石山 隼, 杉本 起一, 小島 豊, 五藤 倫敏, 冨木 裕一, 坂本 一博
    2015 年 57 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,男性.以前から紫斑の出現と消失を繰り返しており,IgA血管炎(Henoch-Schönlein)が疑われていた.今回,腹痛を主訴に来院し,その際にも両下腿に紫斑が散在していた.CT検査で回盲部に腸重積を認め,注腸整復を行ったが完全には整復できなかった.整復と先進部の病変を確認する目的で下部消化管内視鏡検査を施行したところ,上行結腸内に浮腫状の暗赤色の盲腸粘膜を認め,盲腸の粘膜下血腫を先進部とした腸重積と診断した.保存的治療で腹痛,下腿の紫斑,粘膜下血腫は軽快し,第7病日に退院となった.紫斑部の皮膚生検を施行し,IgA陽性と白血球破壊性血管炎を認めIgA血管炎(Henoch-Schönlein)の診断となった.内視鏡検査は病状の進行,診断および治療方針を選択する上で有用であった.
  • 西 潤子, 森下 祐子, 宮瀬 志保, 原岡 克樹, 大内田 義博, 藤山 重俊, 鈴島 仁, 伊藤 隆明
    2015 年 57 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性.体重減少とタール便を主訴に来院した.上部内視鏡検査で十二指腸球部から下行脚に潰瘍と多数のびらんを認めた.腹部造影CT検査では直腸から下行結腸の著しい壁肥厚とリンパ節腫大,腹水を認め,FDG-PET検査でも同部に集積を認めた.下部消化管内視鏡検査で,直腸からS状結腸の粘膜は浮腫状でびまん性の発赤とびらんを認めた.S状結腸の生検標本で粘膜内にT細胞リンパ腫の腫瘍細胞が認められ,そけいリンパ節生検にて血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)と診断された.AITLは成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL/L)と異なりリンパ節外病変は少ないとされるが,本症例はATL/L同様に著明な下部消化管浸潤を呈していた.
  • 佐々木 文郷, 沼田 政嗣, 川平 正博, 鮫島 洋一, 軸屋 賢一, 中澤 潤一, 上村 修司, 船川 慶太, 藤田 浩, 井戸 章雄
    2015 年 57 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.直腸狭窄による大腸イレウスを発症し当院に入院.直腸Ra部に高度狭窄を認めた.同病変に対し,数回の内視鏡的バルーン拡張術を施行するも改善ないため,難治性直腸狭窄の診断にて,Radial Incision and Cutting法(RIC法)を用いた狭窄解除術を施行した.以降,再狭窄症状なく経過している.難治性直腸狭窄に対するRIC法による内視鏡的狭窄解除術は有効な治療法であると考え報告した.
  • 小林 克巳, 荒川 和久, 富澤 直樹, 安東 立正, 飯塚 賢一, 新井 弘隆, 高山 尚, 阿部 毅彦, 須納瀬 豊, 竹吉 泉
    2015 年 57 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の日本在住16年になるパキスタン国籍の男性.腹痛と発熱で当院を受診した.体温39.4℃.血液生化学所見でWBC,CRPの上昇,肝・胆管系酵素の上昇を認めた.CTで肝に多発膿瘍を認めた.抗生剤で治療を開始したが改善なく,第3病日に膿瘍を穿刺した.培養結果は陰性で,アメーバも検出しなかった.ドレナージ後は解熱し,血液所見も正常化した.大腸内視鏡検査で,右側結腸に小潰瘍が多発していた.このとき洗浄液から,ランブル鞭毛虫を検出したため,メトロニダゾールの内服を開始した.退院後のCTでは膿瘍の縮小を認め,大腸内視鏡検査では盲腸の潰瘍性病変は消失し,ランブル鞭毛虫は検出しなかった.
注目の画像
手技の解説
  • 佐々木 隆, 吉田 俊太郎, 伊佐山 浩通, 小池 和彦
    2015 年 57 巻 2 号 p. 172-184
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    悪性消化管閉塞に対する金属ステント治療は,近年幅広く施行されるようになってきた.透視下での食道ステント留置にはじまり,現在では内視鏡的消化管ステント留置術が胃十二指腸閉塞や大腸閉塞に対して多くの施設で行われるようになっている.そもそも消化管ステント留置は,全身状態が低下した進行癌患者に対して施行されることが多く,より安全な処置の施行が求められる.柔らかくて薄い腸管壁に対して金属のワイヤーでできたステントを留置するため,ステントの特性についても十分理解しておくことが求められる.今後新しいステントの登場も見込まれているが,現時点ではわが国で使用可能な消化管ステントはまだ限られている.そこで本稿では,胃十二指腸ステント・大腸ステントにしぼって,現在わが国で使用可能な消化管ステントの特性について触れるとともに,ステント種類別の留置について概説する.
資料
  • 佐藤 隆啓, 山崎 克, 赤池 淳
    2015 年 57 巻 2 号 p. 185-192
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    【背景,目的】肝疾患に認められた胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)の臨床的特徴と内視鏡治療の有用性について検討した.
    【方法】34例の特徴的な内視鏡所見を示したGAVEを対象とした.アルゴンプラズマ凝固療法(APC)を34例中22例に,内視鏡的結紮術(EBL)を12例に施行した.
    【結果】34例全例に鉄欠乏性貧血を認めこのうち,21例に黒色便が観察された.基礎疾患は肝硬変26例,肝癌合併肝硬変6例,特発性門脈圧亢進症2例であった.肝予備能はChild A 6例,Child B 21例,Child C 7例であった.内視鏡観察時,胃の蠕動運動亢進は34例全例で認められた.APCを施行した22例では観察期間中,15例(68.2%)に再発が認められた.7例は死亡し,このなかで出血関連死は2例であった.一方,EBLを12例に施行した.再発は12例中1例(8.3%)で2例が死亡しているが,出血関連死はなかった.
    【結論】肝疾患患者ではGAVEは門脈圧亢進症の程度が強い症例や肝予備能の不良例に多く認められた.APCは再発率が高く,EBLがGAVEの新たな治療法としての有用性が示唆された.
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