【背景,目的】肝疾患に認められた胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)の臨床的特徴と内視鏡治療の有用性について検討した.
【方法】34例の特徴的な内視鏡所見を示したGAVEを対象とした.アルゴンプラズマ凝固療法(APC)を34例中22例に,内視鏡的結紮術(EBL)を12例に施行した.
【結果】34例全例に鉄欠乏性貧血を認めこのうち,21例に黒色便が観察された.基礎疾患は肝硬変26例,肝癌合併肝硬変6例,特発性門脈圧亢進症2例であった.肝予備能はChild A 6例,Child B 21例,Child C 7例であった.内視鏡観察時,胃の蠕動運動亢進は34例全例で認められた.APCを施行した22例では観察期間中,15例(68.2%)に再発が認められた.7例は死亡し,このなかで出血関連死は2例であった.一方,EBLを12例に施行した.再発は12例中1例(8.3%)で2例が死亡しているが,出血関連死はなかった.
【結論】肝疾患患者ではGAVEは門脈圧亢進症の程度が強い症例や肝予備能の不良例に多く認められた.APCは再発率が高く,EBLがGAVEの新たな治療法としての有用性が示唆された.
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