日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 4 号
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総説
  • 鎌田 健太郎, 糸井 隆夫, 森安 史典
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1135-1149
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    胆道鏡の発展の歴史,現在使用可能な胆道鏡の種類,胆道鏡を用いた診断,治療,今後の展望について解説した.胆道鏡は経口胆道鏡と経皮経肝胆道鏡がある.経口胆道鏡は二人の術者により行われる十二指腸内視鏡から電子胆道鏡を挿入する従来の親子式に加え,一人の術者で施行可能な胆道鏡が開発された.さらに細径上部内視鏡を経口的に直接胆管挿管する経口直接胆道鏡が注目されている.胆道鏡を用いた診断,治療法が各種報告されているが,主に診断では胆管狭窄や腫瘍性病変を直接観察しNBIや直視下生検を追加することで正確な診断が可能と報告されている.治療では除石困難な総胆管結石症に対し胆道鏡で結石を確認しながら砕石を行う有用性が報告されている.術後腸管患者でも直接経口胆道鏡が小腸内視鏡などを用いて行われている.今後,胆道鏡や処置具の開発が進み,さらなる診断能や治療成績の向上,新たな治療法の開発が期待される.
原著
  • 竹川 佳孝, 鷹尾 俊達, 小野 裕之
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1150-1157
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    【目的】ESD後潰瘍をフィブリン糊とポリグリコール酸シート(PGAシート)で被覆する手技が,偶発症予防に期待されている.本研究では,当該手技を実施するにあたり,良好な被覆を達成するための条件を検討した.
    【方法】ブタ摘出胃で作成した潰瘍からPGAシートを引き剥がす際の最大抗張力を測定した.接着の手順,臨床上曝される可能性のある液体へのPGAシートの曝露,接着対象を変えて検討した.
    【結果】標準的な貼付法として設定した第1群の平均抗張力は1.78Nであった.一方,PGAシートがゼリー,胃粘液,唾液に曝された第5,6,7群では0.36N,0.32N,0.53Nと有意に低値であった(p<0.05).また,粘膜上皮に接着させた第8群でも0.19Nと有意に低値であった(P<0.01).
    【結論】当該手技においてはPGAシートを粘性の高い液体に曝さず,被覆範囲を潰瘍内に留めることが重要であることが示された.
症例
  • 松尾 拓, 中村 由紀子, 鈴木 恒治, 王 玉来, 平田 慎也, 大江 倫太郎, 刑部 光正
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1158-1163
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性.腹痛と貧血の精査のため入院.検査の結果,胃から直腸の消化管ほぼ全域にわたり多発する赤色から暗赤色調の扁平隆起性病変を認め,十二指腸からの生検で血管肉腫と診断した.すでに多発性骨転移とリンパ節転移があり,全身状態不良であったため十分な治療はできなかった.消化管に発生する血管肉腫は転移性,原発性ともに非常に稀であり,今後の早期診断と治療を考える上で示唆に富む症例と思われ,報告する.
  • 森崎 智仁, 白石 良介, 澤瀬 寛典, 行元 崇浩, 樋口 徹, 今村 祥子, 有尾 啓介, 綱田 誠司, 田場 充, 内藤 愼二
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1164-1169
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.生来健康であったが,食事の際に嚥下障害を自覚するようになった.徐々に食事摂取ができなくなり当院を受診.内視鏡検査にて下咽頭左梨状陥凹に黄色調で3cmほどの粘膜下腫瘍様腫瘤を認めた.MRI検査ではT1/T2強調像にて均一の高信号を呈する腫瘤であることから脂肪腫を最も疑った.耳鼻咽喉科協力のもと,全身麻酔下に彎曲型咽喉頭直達鏡を用いて喉頭展開しESDを行い一括切除した.病変は35×32×27mmであった.病理結果は脂肪腫であった.術後経過は良好で症状は消失した.咽頭脂肪腫はまれな疾患であるが,内視鏡検査時に遭遇する可能性がある.治療においてESDが有用であった.
  • 畔元 信明, 二宮 朋之, 中原 弘雅, 山子 泰加, 須賀 義文, 平岡 淳, 宮田 英樹, 道堯 浩二郎, 二宮 恵子, 木藤 克己
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1170-1176
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性.上部消化管内視鏡検査による生検にて中分化型腺癌と診断されたため,当科紹介となった.当院での検査では粘膜下層深層以深への浸潤と考え,当院外科にて腹腔鏡下幽門側胃切除術を行った.術後の病理結果は間質に著明なリンパ球浸潤を伴う早期胃内分泌細胞癌であった.前医での生検組織では,粘膜内に内分泌細胞癌の胞巣とごく少量の管状腺癌がみられた.本症例はリンパ球浸潤を伴った胃内分泌細胞癌であり過去の報告はなく,腺癌から内分泌細胞癌に脱分化される過渡期を捉えた貴重な症例と考えられる.術前診断のためには,内視鏡検査時に鑑別診断として神経内分泌癌を念頭におくことが重要である.
  • 松原 悠, 齋藤 博哉, 網塚 久人, 巽 亮二, 好崎 浩司, 坂本 淳, 佐藤 龍, 前本 篤男, 木村 圭介, 太田 智之
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1177-1183
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.胃癌のため幽門側胃切除及び胆嚢摘出術を施行しRoux-en-Y吻合で再建を行ったが,退院1カ月目に急性胆管炎を発症し再入院となった.腹部エコーで肝門部と左右肝内胆管内に不整形な高エコー像を認め,またMRCPでも同部位に不整形な陰影欠損像を認めた.術後再建のため内視鏡的ドレナージが不能であり,経皮経肝的にドレナージを施行した.経皮経肝胆道鏡では,胆管内に黒色粘稠組織の充満を認めた.その後胆道鏡で内容物の除去を行ったが,内容物はビリルビンやcollagen tissueを含む慢性炎症組織が混在したものであり,胃癌術後に発症したbiliary cast syndromeと診断した.肝移植に伴わないbiliary cast syndromeという稀な症例を経験したので報告する.
  • 細野 智子, 鳥居 惠雄, 黒住 真由美, 中村 一貴, 山東 剛裕, 見島 裕之, 松本 直也, 傍島 淳子
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1184-1190
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性.膵頭部癌による閉塞性黄疸に対して,他院でpartially-covered SEMSを留置された.留置後約170日でステント閉塞され,fully-covered SEMSをstent-in-stentで留置,当院緩和ケア科へ転院となった.約4カ月後に胆管炎で当科紹介となった.ステントは乳頭から逸脱し,対側十二指腸壁に埋没しており,APCにてステントを約半周焼灼切断,把持鉗子で愛護的に牽引抜去することが可能であった.stent-in-stentで留置されたSEMSの逸脱例において,逸脱部が長く,抜去が困難・危険な場合に,APCによるステント切断は有用である可能性が示唆された.
  • 鋳谷 成弘, 原 順一, 山村 匡史, 平田 直人, 真下 勝行, 河内屋 友宏, 山上 博一, 藤原 靖弘, 荒川 哲男
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1191-1196
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.関節リウマチに対してサラゾスルファピリジン内服加療中に,食思不振と水様便が出現した.消化管内視鏡検査で十二指腸とS状結腸から直腸に顆粒状粘膜を認めた.十二指腸からの生検により関節リウマチに伴う消化管アミロイドーシスと診断した.中心静脈栄養を施行したが効果は認めず,抗インターロイキン-6受容体抗体トシリズマブを投与したところ臨床症状は軽快し,内視鏡・病理所見も改善した.RAに続発した消化管アミロイドーシスに対して,トシリズマブ投与によって内視鏡所見の著明な改善を確認している報告は稀であり,貴重な症例と考えられた.
  • 上田 通雅, 足立 靖, 中村 眞一, 野田 昌男, 山田 貴裕, 竹中 淳雄, 生田 亮子, 小中 義禎, 池原 進
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1197-1202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.便潜血陽性のため下部消化管内視鏡検査が施行され,S状結腸に径約8mmのIIa様形態のポリープが存在したため内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)が行われた.粘膜固有層内において,核が卵円型~紡錘形で境界不明瞭な紡錘形の腫瘍細胞の増生を認め,これらの細胞は免疫染色において,vimentin陽性,CD34一部で弱陽性,CD117(KIT)陰性,αSMA陰性,S100陰性であったためbenign fibroblastic polyp(良性線維芽細胞性ポリープ)と診断した.
  • 樋高 秀憲, 坂田 資尚, 上松 一永, 下田 良, 藤本 一眞, 岩切 龍一
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1203-1209
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は28歳女性.周期性腹痛,発熱で受診.内視鏡検査で虫垂入口部付近の区域性腸炎を認め,区域性大腸炎型潰瘍性大腸炎として加療したが効果なく,遺伝子検査の結果家族性地中海熱(FMF)と診断し,コルヒチン内服加療で症状は改善した.FMFは炎症性腸疾患類似の区域性腸炎を合併することもある.周期的腹痛,発熱のある原因不明の腸炎では炎症性腸疾患以外にFMFを疑い遺伝子検査を行うことが重要である.
手技の解説
  • 八木 一芳, 坂 暁子, 野澤 優次郎, 中村 厚夫, 二村 聡
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1210-1218
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    除菌後発見胃癌の特徴は以下の3つである.まず胃炎様の粘膜模様を有し,範囲が不明瞭なことが多いことである.次に一見胃炎様であるが背景粘膜とは異なる模様を有する部分が領域を持って存在することである.すなわち領域を示す,という癌の特徴は観察できる.3つ目はNBI拡大内視鏡観察で軽微ながらも「形状不均一」と「方向性不同」を示すwhite zoneによる粘膜模様領域を観察できる点である.除菌により背景粘膜はより規則的な模様と配列を呈する傾向がある.それらと比較すると「形状不均一」と「方向性不同」を示す領域は癌と比較的容易に診断できる.以上の3つの特徴をつかんで内視鏡観察を行うのが範囲診断を含めての診断のコツである.
資料
  • 福田 信宏, 井田 和徳, 加藤 隆弘, 上堂 文也, 安藤 貴志, 渡辺 英伸, 新保 卓郎, 共同研究者
    2015 年 57 巻 4 号 p. 1219-1229
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/28
    ジャーナル フリー
    【背景】胃粘膜の腸上皮化生(IM)は,胃癌の発生に関与する病変として以前から注目されてきた.他方,IMの内視鏡診断は長い間,暗中模索の状態であったが,近年メチレンブルー染色法やNBIを用いた拡大内視鏡観察によって臨床的に診断が可能になった.しかし,われわれは内視鏡診断の基本であるconventional methodおよびIndigo carmine contrast method(IC method)を応用した簡便なIM診断が必要と考え研究を行った.
    【方法】本研究は,10施設が参加した多施設前向き無作為比較共同研究である.IMの所見は,電子スコープを用いてconventional methodかIC methodにより観察し,ランダム割り付けを行った.生検組織におけるIMの有無をgold standardとして,各観察法別にそれぞれの内視鏡診断を比較検討した.
    【結果】解析対象は163名で観察法別には,conventional method 87名,IC method 76名であった.前庭部におけるIMの内視鏡診断成績は,conventional methodでは,感度94.6%,特異度69.1%,ROC/AUC 0.818.IC methodでは,それぞれ78.4%,57.9%,0.681であり,前庭部ではconventional methodの方が,IC methodより診断能が高かった.しかし両者間に有意差は認められなかった.体部においてconventional methodは,感度86.1%,特異度65.9%,ROC/AUC 0.760.IC methodでは,それぞれ86.0%,82.6%,0.843であり,IC methodの診断成績が良好であった.しかし検査法間に有意差は認められなかった.IMの各診断指標のROC/AUCは,前庭部におけるconventional methodでは,絨毛様所見が0.800ともっとも良好であり,ついで白色調粘膜,粘膜の粗糙・凹凸が0.752,IC methodでも絨毛様所見が0.770と良好であった.体部ではconventional methodによる絨毛様所見が0.703であり,IC methodでは,小区型が各所見のなかで最も高く0.895であった.
    【結論】Conventional method とIC methodの比較ではIMの診断成績に有意差はみられなかった.IMの内視鏡診断の指標として,絨毛様所見,粘膜の白色調,粗糙・凹凸とIC methodによる胃小区型が有用であった.これらの診断指標を用いることによって,IMの良好な内視鏡診断成績が得られた.
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