目的:病理学的な胃粘膜萎縮状態は胃がん発生母地として知られている.それゆえ,胃粘膜萎縮を診断することは,胃がん発生を予測するために重要である.今回の研究において,われわれは内視鏡的に萎縮性胃炎を診断するための所見を確立したので報告する.
方法:24施設において,前向き試験を実施した.275人の患者が内視鏡検査を受診し,びまん性発赤,胃小区浮腫,胃粘膜浮腫などの15の内視鏡的所見に関し評価された.アップデイテッドシドニーシステムに基づき,5カ所より生検を行い,一人の病理医によって評価した.それぞれの所見の組織学的萎縮に対する感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,Receiver Operating Characteristics Curve(受信者操作特性曲線)下方面積(AUC/ROC)を計算した.これらの患者の血清ペプシノゲン値も測定し,内視鏡的所見と比較した.
結果:組織学的萎縮と非常によく相関する単一の内視鏡所見は存在しなかった.体部においては,血管透見とインジゴカルミン散布法(IC法)による胃小区浮腫が最も高いAUC/ROC(0.83)を示した.前庭部においては,血管透見と粘膜浮腫が最も高いAUC/ROC(0.70)を示した.これら内視鏡的所見はペプシノゲンI/II比に非常によく相関した.
結論:内視鏡的所見の組み合わせ,とくに胃小区浮腫や胃粘膜浮腫などの新しい内視鏡的所見を用いることにより萎縮の診断は向上した.
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