日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 6 号
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総説
  • 小原 勝敏
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1347-1360
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤の治療法として,保存的治療(薬物療法,バルーンタンポナーデ法),内視鏡的治療(EIS,EVL),外科的治療が施行されてきたが,本邦における出血例に対する第一選択の治療法はEVLであり,待期・予防例ではEISやEVLが一般的に施行されている.しかしながら,待期・予防例を安全かつ効果的に治療するためには,食道・胃静脈瘤の内視鏡所見記載基準の知識,治療適応および禁忌例の把握,使用する各種硬化剤の作用機序の熟知,患者の病態および門脈血行動態(特にEUSおよび3D-CT)からみた適切な治療法の選択,各種治療手技の習得,起こり得る合併症とその防止対策,治療後の定期的な経過観察といった総合的な知識力や各種手技の習得が必要である.ここでは,EBMに基づいた国外での食道静脈瘤治療を含め,本邦の食道静脈瘤患者に適した最良の治療戦略について述べる.
症例
  • 赤穂 宗一郎, 竹中 龍太, 山崎 泰史, 河合 大介, 竹本 浩二, 平良 明彦, 柘野 浩史, 藤木 茂篤
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1361-1366
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.黒色吐物を主訴に当院を受診した.胸部単純レントゲンにて左横隔膜が胸腔側へ挙上し,腹部CTでは腹腔内で著明に拡張した胃が腸間膜軸性に捻転していた.胃軸捻転症と診断し上部消化管内視鏡による整復術を試みた.上部消化管内視鏡では有効長が足りず整復困難であったが,バルーン内視鏡に変更すると十二指腸水平部まで挿入可能となり先端バルーンを膨らますことで腸管へスコープを固定し整復が可能となった.胃軸捻転を内視鏡的に整復できない場合には外科的に整復しなければならないが,本症例のようにバルーン内視鏡を用いることによって外科的整復を回避できる可能性があり貴重な症例と考え報告する.
  • 田辺 利朗, 黒田 雅昭, 川端 利博, 新井 正弘, 今井 昭人, 小池 浩志, 中田 雅支, 渡邉 侑奈, 岸本 光夫, 柳沢 昭夫
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1367-1372
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.上部消化管内視鏡にて胃角部小弯に進行胃癌を認めた.腹部造影CT検査にて胃小弯リンパ節が数個腫大していたが,遠隔転移は認めなかった.膵尾部近傍に嚢胞性病変を指摘されたため造影MRI,EUS含め,精査を施行した.cT3N2M0,StageIIIaおよび,膵嚢胞性病変の術前診断にてD2郭清を伴う幽門側胃切除術が施行された.術後の病理診断で膵嚢胞は胃癌のリンパ節転移であった.
  • 草永 真志, 有留 玄太郎, 林 海輝, 太幡 敬洋, 渡邊 龍之, 久米 恵一郎, 原田 大
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1373-1377
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.排便時に突然血便を認めたため夜間救急外来を受診した.1年前より発作性心房細動に対して,ダビガトラン内服が開始された.当院での初回大腸内視鏡検査で,S状結腸に茎様の構成成分を伴う粘膜下血腫を認めたため,同部位が出血源と考え入院後ダビガトランを中止し,絶食・補液管理にて経過観察とした.その後血便はなく,保存的加療のみで軽快した.心房細動に対してはダビガトラン中止のままピルシカイニド塩酸塩の内服を開始し,その後再出血なく病変は治癒した.新規抗凝固薬であるダビガトラン内服による大腸粘膜下血腫は本例が初めてであり,貴重な症例と考えられた.
  • 田村 次朗, 熱海 恵理子, 島袋 耕平, 金城 徹, 武嶋 恵理子, 金城 渚, 外間 昭, 加藤 誠也, 大島 孝一, 藤田 次郎
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1378-1384
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性.平成25年10月に下痢,腹鳴,腹部膨満感の精査目的に当科入院となった.大腸内視鏡検査(colonoscopy以下CS)で肝弯曲部に広範囲にわたる粘膜の浮腫状変化・微細顆粒状変化を認めた.S状結腸に汚い壊死物質の付着した全周性の潰瘍を認めた.また直腸に7mmのIsp型ポリープを認めた.ポリープのEMR検体の病理像から大腸原発腸管症関連T細胞リンパ腫と診断した.当院血液内科にて化学療法施行し,完全寛解となった.診断から13カ月経過した現在も完全寛解を維持している.
  • 間島 行則, 廣岡 知臣, 久松 美友紀, 平位 暢康, 上田 栄寿, 土細 工利夫, 廣岡 大司, 内間 恭武, 原田 博史, 川野 潔
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1385-1391
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.血便精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行したところ,下部直腸に茶褐色調の亜有茎性ポリープを認めた.悪性黒色腫の可能性も考慮し,全生検による診断目的にEMRを施行した.免疫組織化学を含む病理組織学的検査で悪性黒色腫と診断された.転移病巣を認めないことを確認した後,EMRから2週間後には腹会陰式直腸切断術を行った.手術標本に腫瘍遺残,リンパ節転移は認めなかった.術後2年6カ月経過した現在も無再発生存中である.直腸肛門部悪性黒色腫は頻度が低く,診療指針の標準化が未だ行われておらず,本報告を含め症例の蓄積が期待される.
  • 原田 英明, 勝山 泰志, 清水 貴徳, 末廣 聡士, 長野 青史, 早坂 健司
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1392-1397
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.心房細動の外来治療中に無症候性の総胆管結石を指摘され除去目的に入院となりERCPを施行した.十二指腸主乳頭は傍乳頭憩室内の左側辺縁に位置しており,十二指腸主乳頭は背側方向に向いていたため胆管挿管は不可能であった.十二指腸主乳頭の右側上方にヒアルロン酸ナトリウムを粘膜下局注したところ,十二指腸主乳頭を背側方向から内視鏡画面の正面視方向へと偏位させることが可能となった.そのためERCPを完遂することが可能となった.本方法でERCPを施行し得た症例の報告はなく,本邦初の報告となる.傍乳頭憩室を持つ乳頭正面視が困難な症例すべてに応用できるわけではないが,本症例のような憩室辺縁開口症例に対しては一つの有効な選択肢になると考えられた.
手技の解説
  • 今津 博雄, 田尻 久雄
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1398-1410
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    低音圧系超音波造影剤の開発により,超音波内視鏡を用いてハーモニック法による造影EUS(CE-EUS)が可能となった.CE-EUSでは病変の血管構築および動態をリアルタイムに描出することが可能で,膵癌の診断に関しては,メタアナリシスにおいて高い感度,特異度,診断精度が報告されており,hypoenhancementで不均一な造影パターンが膵癌のCE-EUSの典型的な所見である.また,胆嚢ポリープ,胆嚢壁肥厚の鑑別診断においても,CE-EUSの可能性に関する報告がみられ,不均一な造影パターンが悪性胆嚢病変を示唆する所見である.さらにCE-EUSの所見を定量化するソフトウェアも開発され,未だ普及しているとは言えない検査手技であるが,今後,CE-EUSは胆膵疾患の診断モダリティーの一つとして不可欠な検査手技になり得ると思われる.
資料
  • 藤城 光弘, 田中 信治, 斎藤 豊, 新保 卓郎, 石川 秀樹, 上村 直実, 飯石 浩康, 芳野 純治, 小原 勝敏, 上西 紀夫, 田 ...
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1411-1426
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
  • 野村 幸世, 井田 和徳, 寺尾 秀一, 足立 経一, 加藤 隆弘, 渡辺 英伸, 新保 卓郎, 慢性胃炎の内視鏡診断確立のための研究会
    2015 年 57 巻 6 号 p. 1427-1440
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    目的:病理学的な胃粘膜萎縮状態は胃がん発生母地として知られている.それゆえ,胃粘膜萎縮を診断することは,胃がん発生を予測するために重要である.今回の研究において,われわれは内視鏡的に萎縮性胃炎を診断するための所見を確立したので報告する.
    方法:24施設において,前向き試験を実施した.275人の患者が内視鏡検査を受診し,びまん性発赤,胃小区浮腫,胃粘膜浮腫などの15の内視鏡的所見に関し評価された.アップデイテッドシドニーシステムに基づき,5カ所より生検を行い,一人の病理医によって評価した.それぞれの所見の組織学的萎縮に対する感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,Receiver Operating Characteristics Curve(受信者操作特性曲線)下方面積(AUC/ROC)を計算した.これらの患者の血清ペプシノゲン値も測定し,内視鏡的所見と比較した.
    結果:組織学的萎縮と非常によく相関する単一の内視鏡所見は存在しなかった.体部においては,血管透見とインジゴカルミン散布法(IC法)による胃小区浮腫が最も高いAUC/ROC(0.83)を示した.前庭部においては,血管透見と粘膜浮腫が最も高いAUC/ROC(0.70)を示した.これら内視鏡的所見はペプシノゲンI/II比に非常によく相関した.
    結論:内視鏡的所見の組み合わせ,とくに胃小区浮腫や胃粘膜浮腫などの新しい内視鏡的所見を用いることにより萎縮の診断は向上した.
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