日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 7 号
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総説
  • 伊藤 謙, 五十嵐 良典, 三村 享彦, 岸本 有為, 原 精一, 宅間 健介, 岡野 直樹
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1457-1466
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎は主膵管の狭窄を伴うことで,膵管内圧の上昇に由来する慢性的な疼痛の原因となる難治性進行性疾患である.このような症例は膵管減圧により症状の改善を認める事が多く,約30年前に富士らによって内視鏡的膵管ステント留置術(endoscopic pancreatic stenting:EPS)が世界に発信された.以前は臨床研究であったが,本邦でもEPSが2012年4月より保険診療として認可されたことにより,広く普及するようになった.10Fr膵管ステントを長期留置し狭窄の改善に抵抗を示す症例に対しては複数本のステント留置も報告されている.また,超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-fine needle aspiration(FNA))を応用したEUSガイド下膵管ドレナージ(EUS-guided pancreatic duct drainage:EUS-PD)や,膵管ステントの治療効果を向上させるべく,強い拡張効果を持つ自己拡張化型金属ステントを用いた治療も報告されるようになっており,近年膵管ステントにおいても新たな展開を認めている.本稿では,膵管ステントの現状と展望について述べる.
原著
  • 久保 公利, 小野寺 学, 曽我部 進, 小田 寿, 宮城島 拓人, 高橋 達郎, 桒谷 将城
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1467-1476
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】縦隔病変に対するEUS-FNAは,この20年で診断におけるその有用性が報告されてきた.一方で,経気管支的肺生検(TBLB)も肺癌診断においてその役割を果たしてきた.われわれは,縦隔病変に対するEUS-FNAの有用性を再検証するとともに,肺癌診断におけるTBLBとの位置づけを明らかにすることを目的に本検討を行った.【方法】2010年5月から2012年3月までの間,当院においてEUS-FNAを施行した102病変・102症例(縦隔病変,52;膵病変,40;その他,10)のうち,縦隔病変を有する52例・52病変を対象とし,後方視的にTBLBの結果と合わせて解析をおこなった.【結果】全病変におけるEUS-FNAの診断率は100%(52/52),細胞採取率は100%(52/52),組織採取率は98%(51/52)であった.肺癌29例のうち,TBLB未施行4例を除いたTBLBの診断率は36%(9/25)と低かったが,EUS-FNAと相補的に施行することにより,100%の診断を得ることができた.【結論】EUS-FNAは,縦隔病変の診断に有用であり,特に肺癌の診断においてはTBLBとの相補的な施行により,診断の一層の向上が期待される.
症例
  • 佐々木 善浩, 五十嵐 佐智子, 上條 孟, 島田 祐輔, 原田 舞子, 林 昌武, 上市 英雄, 川村 紀夫, 森 和彦, 山内 治雄
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1477-1482
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    80歳,男性.吐血を認め救急外来受診となり,上部消化管内視鏡検査で,食道後壁左側寄りに粘膜下腫瘍様隆起と中心に凝血塊を伴う潰瘍を認めた.胸腹部造影CTで胸部下行大動脈に35mmの大動脈瘤と造影剤の漏出を認め,食道穿破と診断し,胸部ステントグラフト内挿術後に,二期的治療を施行した.大動脈瘤食道穿破は稀であるが,致命的であり,早期かつ適切な治療が必要な疾患である.今回われわれは救命できえた大動脈瘤食道穿破の一例を経験したので報告した.
  • 谷平 哲哉, 平岡 淳, 年森 明子, 三宅 はるか, 畔元 信明, 宮田 英樹, 二宮 朋之, 木藤 克己, 米湊 健, 道堯 浩二郎
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1483-1489
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    内視鏡像と各種画像所見の乖離がみられ診断に苦慮した横行結腸内分泌細胞癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)の1剖検例を経験した.症例は50歳代,男性.下痢,腹痛で近医を受診し,肝腫大・肝機能障害を指摘され当科紹介入院した.下部消化管内視鏡検査で横行結腸肝彎曲に約4~5cm大のIIa病変がみられ,早期大腸癌を疑い生検を施行したが結果はtubulovillous adenomaであった.
    PET-CTでは,肝にびまん性にFDGの集積がみられ,その他,横行結腸,近傍の腸間膜リンパ節にも集積がみられた.肝腫瘍生検ではNECの診断であった.急速に全身状態が悪化し入院後24日目に死亡した.剖検にてIIa病変の粘膜上皮の腺底部に腺癌からNECへの移行像がみられた.
  • 芹澤 昌史, 中山 淳, 川原林 伸昭
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1490-1495
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性.下部消化管内視鏡検査施行にて横行結腸に0-IIc+IIa病変を認めた.粘膜下層への癌の浸潤の可能性が否定できず,また内視鏡の操作性が悪い部位であったため外科的手術で治療する方針とした.しかし,その二カ月半後の手術前日に二回目の内視鏡検査を施行したところ,横行結腸には腫瘍の大部分が存在せず,自然退縮したと考えられた.予定通り手術を行ったが,粘膜の一部と粘膜下組織に小量の癌細胞を認めた.極めて稀な現象である自然退縮を示した結腸癌の一例を報告する.
  • 鎌田 和明, 末松 聡史, 河本 亜美, 山本 満千, 吉田 玲子, 矢内 常人, 小野 千尋, 天野 与稔, 渡辺 守
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1496-1501
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性.通常内視鏡観察で,粘膜下腫瘍上に陥凹性病変を認め,生検結果でgroup4と診断され,粘膜下腫瘍様の深部浸潤大腸癌が疑われ当科へ紹介となった.前医画像や,当科で施行した通常内視鏡・拡大内視鏡評価にて大腸脂肪腫上に発症したIIc型早期大腸癌と診断した.粘膜下腫瘍上に早期大腸癌が存在すること自体が稀であるが,さらに陥凹型腫瘍の場合は,腫瘍が小さくてもSM浸潤癌であることもあり,内視鏡による深達度診断に一層の注意が必要である.
  • 石井 達也, 三長 孝輔, 岩上 裕吉, 幡丸 景一, 中谷 泰樹, 赤松 拓司, 瀬田 剛史, 浦井 俊二, 上野山 義人, 山下 幸孝
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1502-1508
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    われわれは胆管金属ステント(CMS)留置後の胆嚢炎に対し,経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行後,内瘻化する目的で超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ術(EUS-GBD)を施行した2例を経験した.症例1は75歳,女性.胆管細胞癌による上部胆管狭窄に対してCMS留置後,急性胆嚢炎を発症,経皮経肝胆嚢穿刺吸引術で一時軽快するも再燃あり,PTGBDを施行後にEUS-GBDを施行.症例2は64歳,女性.膵頭部癌でCMSを留置したが急性胆嚢炎を発症しPTGBDを施行後,EUS-GBDを施行.両症例ともPTGBDは抜去可能で胆嚢炎の再発も認めなかった.EUS-GBDによる内瘻化はQOL維持に有用と考えられた.
経験
  • 木下 幾晴, 木下 真樹子, 上畠 寧子, 田端 宏尭, 藤田 洋一, 小澤 悟, 中谷 佳弘, 岡 正巳, 安岡 弘直
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1509-1515
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    GIST(gastrointestinal stromal tumor)は免疫染色によって病理組織学的な診断がなされる疾患である.ガイドラインでは病理組織学的検索にはEUS-FNAB(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration biopsy)による精査が推奨されているが,2cm未満の胃粘膜下腫瘍に対しては診断能が低下することが問題である.粘膜切開直視下生検法は腫瘍を確実に露出させ生検するため,2cm未満の病変でも病理組織診断に必要十分な組織を得る事ができる.当院ではこれまで6例の20mm未満の胃粘膜下腫瘍に対し粘膜切開直視下生検法を施行した.3例がGISTであり,平均腫瘍径は13.4mm,全例で診断に必要な免疫染色が可能で,生検標本と手術標本のKi-67 labeling indexは同等であった.粘膜切開直視下生検法はEUS-FNABが不得意とする2cm未満の胃粘膜下腫瘍の診断において特に有用であると考える.
注目の画像
手技の解説
  • 相浦 浩一
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1518-1531
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    選択的胆管挿管困難例に対するプレカット法は,使用するナイフによりneedle knifeと通常型papillotomeとに大別され,標準化された方法はない.その中で膵管ガイドワイヤー補助下に膵管口を切開するプレカット法は,膵管ガイドワイヤー留置法から引き続きガイドワイヤーを利用して通常型papillotomeを挿入し,膵管口から胆管方向に11時から12時へ滑らかな弧を描くように膵管胆管合流部をOddi筋ごと削り切るようなイメージで行い,鉢巻ひだを越えるか越えても数mm(全長5~8mm程度)の切開とする.その目的を胆管口の露出だけとするのではなく,膵管ガイドワイヤー留置法を応用して胆管口へのアプローチをより容易にすることを第一義とする.切開方向と深度のコントロールは柔らかいガイドワイヤーを使用することでより可能となる.解剖と方法論を理解することがより安全で確実な手技の習得につながると考える.
  • 宮脇 哲丸, 佐藤 徹
    2015 年 57 巻 7 号 p. 1532-1544
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡の軟性部には直線化しようとする性質がある.スコープが撓んだ状態でアングルノブ操作を行うと内部のケーブルが牽引されて軟性部に弾撥力が生じスコープは直線化しようとする.同時にスコープの先端部は前進する.その弾撥力を利用してスコープを挿入する手技がFlick法である.
    換言すれば,Flick法は,左手のアングルノブ操作でスコープを前進させて挿入する方法である.その手技を習得するためには瞬時に自分の思う方向へスコープを操作する左手第1指と第4指の訓練が必要である.右手の役割はあくまでも左手の補助である.
    スコープの進行方向は無名溝を参考にする.無名溝の垂直方向にアングルノブ操作を行うとスコープは自然と管腔内を進んでゆく.その際,腸管内にあるガスは極力脱気して腸管は虚脱させる.回盲部への到達率は96.1%で平均到達時間は6分06秒,出血穿孔例はない.鎮静剤や鎮痛剤は一切使用せず,検査は被検者と楽しい会話をしながら行う.
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