日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 11 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 加藤 勝章, 千葉 隆士, 島田 剛延, 渋谷 大助
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2251-2261
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    がん検診の目的は,無症状者に検査を実施して当該がんの早期発見・早期治療を図り,当該がん死亡率を減少させることにある.内視鏡検診の死亡率減少効果が証明されたことを受け,2016年より胃X線検診に加えて内視鏡検診も対策型検診として実施可能になった.

    2次予防対策としての内視鏡検診では,検診の質を担保するための正しい精度管理が求められる.検診の最終的なアウトカム評価は死亡率減少であるが,その効果が出るには時間がかかるため,検診が正しく行われているかをモニタリングするには「技術・体制的指標」と「プロセス指標」による評価が必要である.専門外の医師も多数参加する内視鏡検診では,重篤な合併症にも対応できる実施体制の整備と読影委員会による検診画像のダブルチェックは検診精度の維持は重要である.本稿では対策型胃がん内視鏡検診で求められるスクリーニング内視鏡検査の精度管理について概説する.

症例
  • 吉田 寿一郎, 山田 真也, 鈴木 隆裕, 藤井 秀樹, 戸祭 直也, 中村 英樹, 佐藤 秀樹, 奥山 祐右, 木村 浩之, 吉田 憲正
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2262-2267
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    症例は68歳男性.検診で便潜血検査が陽性であり,大腸内視鏡検査を施行すると,下行結腸~S状結腸に多発するポリープと憩室を認めた.EMRを8カ所施行.早期大腸癌が2病変あり,1病変は未分化成分を含み,またもう1病変は分割切除になったため,追加切除(腹腔鏡下S状結腸切除術+D1郭清)を施行.EMR後瘢痕の部位には腫瘍は認めなかったが,切除検体に含まれた憩室のうち3カ所の憩室内に大腸癌を認め,うち一つに漿膜下層への浸潤とリンパ節転移(no.241)を認め,T3N1M0(stageⅢb)と診断した.術後補助化学療法を12カ月施行し,現在経過観察中である.憩室内癌は内視鏡での発見が難しく,またそれが多発することは非常に稀であり,今回報告した.

  • 佐竹 美和, 三上 達也, 澤谷 学, 坂本 有希, 飯野 勢, 相原 智之, 山形 亮, 坂本 十一, 東野 博, 福田 眞作
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2268-2272
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    症例は67歳,男性.糖尿病のため通院中であった.横行結腸の腺腫に対するEMR目的に入院した.術中,明らかな偶発症なくEMRは終了したが,翌日,39℃台の発熱を認め,血液検査で炎症反応の上昇を認めた.腹部診察上は圧痛なく腸蠕動音も正常であったが,CTにて横行結腸の治療箇所近傍に形成された低吸収の腫瘤を中心としてtarget signを認め,腸重積と診断した.大腸内視鏡検査を施行し,腸重積は内視鏡的に整復された.CTでのほぼ均一な低吸収の液体貯留や血液検査所見,腫瘤からの生検で内部から膿汁の排出が見られたことから,粘膜下膿瘍と考えられた.前処置が悪い中での内視鏡治療,基礎疾患が膿瘍の形成に関与したと考えられた.

  • 中尾 栄祐, 淺井 哲, 加納 由貴, 竹下 宏太郎, 一ノ名 巧, 赤峰 瑛介, 藤本 直己, 小川 淳宏
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2273-2278
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    症例は84歳の女性.潰瘍性大腸炎に対して大腸亜全摘術を施行されている.腹部膨満感を主訴に近医を受診され,腸閉塞疑いで当院へ紹介搬送となった.来院時の腹部CT所見より小腸捻転症と診断し,UPD(Endoscope Position Detecting Unit:内視鏡挿入形状観察装置)補助下に内視鏡的整復術を施行した.約6週間後に再発するも,同様に内視鏡的整復術に成功し,以後,再発を来たしていない.今回,大腸亜全摘術後と特殊な症例ではあったが,UPDを用いることで安全に内視鏡的整復が可能であった小腸捻転症の1例を報告する.

  • 森田 慎一, 薛 徹, 星 隆洋, 兼藤 努, 小林 正明, 須田 剛士, 寺井 崇二
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2279-2286
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    70歳女性.膵胆管合流異常にて肝外胆管切除,胆管空腸吻合術施行.1年後に急性胆管炎を発症し経皮経肝胆道ドレナージを施行した.その後に内瘻化を企図したが高度の吻合部狭窄にて通過困難であった.経皮経路より気管支内視鏡を用いた観察にて吻合部にpin hole状の瘢痕狭窄を認め,同部をガイドワイヤーで通過し内外瘻チューブを留置しえた.その後,狭窄部にフルカバー金属ステントを留置した.拡張は良好であり,留置4カ月後に抜去した.造影検査でも吻合部は良好に開存しており外瘻チューブも抜去した.フルカバー金属ステントは持続的に狭窄部を拡張し抜去も可能である.本法は良性胆道狭窄に対し有効で実行可能な治療法と考える.

  • 飯塚 泰弘, 間野 真也, 小林 克誠, 古本 洋平, 淺野 徹, 堀内 亮郎, 佐﨑 なほ子, 忠願寺 義通, 藤木 和彦
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2287-2293
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    症例は53歳女性.重症胆石性膵炎の加療後に膵仮性嚢胞を認め,主膵管の狭窄も認めたため7Fr 7cmストレート型プラスティックステント(以下PS)を留置したが経過中にPSの迷入を認めた.PS乳頭側端は膵頭部分枝膵管に迷入したと考えられ,バスケットカテーテルやバルーンカテーテルでは回収することができなかった.膵尾側のフラップからガイドワイヤー(以下GW)を挿入し,GWを介してPS用プッシャーで尾側へ押しこむことで乳頭側端を主膵管に戻し,ステントリトリーバーを用いて回収することができた.膵頭部分枝膵管への迷入のため外科的手術に回収が必要であった報告もあり,同様の症例に対して本症例が参考になると考えここに報告する.

注目の画像
手技の解説
  • 岩下 拓司, 上村 真也, 安田 一朗, 清水 雅仁
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2296-2304
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA,endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration)は,消化管周囲や消化管壁内の病変より病理検体を採取する安全で確実な方法として,広く一般臨床で使用されている.今回は,EUS-FNAにおける組織採取率向上のコツとして,穿刺針の選択,穿刺テクニック,検体処理方法を,evidence基づきながら,われわれ自身の経験も交えて概説する.

  • 細江 直樹, 緒方 晴彦, 金井 隆典
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2305-2313
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    ダブルバルーン小腸内視鏡(Double-balloon enteroscopy:DBE)が発表された後,シングルバルーン小腸内視鏡(Single-balloon enteroscopy:SBE),スパイラル小腸内視鏡(Spiral enteroscopy)が報告され,これらの小腸内視鏡を総称し,Device-assisted enteroscopy:DAEというカテゴリーの内視鏡として現在では取り扱われている.本邦においては,DBEを導入している施設と,既存の内視鏡ビデオスコープシステムに合わせてSBEが導入されている施設が混在している.今回は,DBEとの相違を踏まえ,SBEを用いた一人法挿入に絞って解説する.バルーン内視鏡を深部挿入するには,スライディングチューブ(ST)のバルーンを一歩ずつ深部に挿入する必要がある.したがって,スコープバルーンのないSBEを用いる場合はSTを押し進める際に注意が必要である.

資料
  • 斎藤 豊, 松田 尚久, 中島 健, 坂本 琢, 山田 真善, 斎藤 彰一, 池松 弘朗, 和田 祥城, 岡 志郎, 河野 弘志, 佐野 寧 ...
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2314-2322
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    現時点で日本から提唱されている大腸NBI拡大分類(佐野分類,広島分類,昭和分類,慈恵分類)の臨床研究の結果から,大腸病変における質的・量的診断に対して,NBI拡大観察の有用性が数多く報告されている.また欧米と日本の共同グループから非拡大でも使用可能な分類としてNICE分類が提唱された.学会・研究会で討論を重ねるに従い,ⅰ)同一類似所見に対して複数の定義呼称が存在する,ⅱ)拡大内視鏡分類におけるSurface patternの必要性の有無,ⅲ)隆起型,表面型病変におけるNBI所見の相違などの問題点が議論されるようになった.2011年,この問題を解決するべく,大腸拡大NBI統一分類作成を目的とするThe Japan NBI Expert Team(JNET)が吉田茂昭先生の声かけのもと結成され,国立がん研究センターのがん研究開発費の班会議で検討が行われた.まずワーキンググループが結成され,JNET分類の元となるスケールが形成され,会議で了承を得た.このJNETスケールを元にWeb-baseでVessel pattern, Surface patternの診断精度を検討し,単変量・多変量解析の結果を基に議論を重ねたのち,2014年6月大腸拡大NBI統一分類がmodified Delphi methodによるコンセンサスを得て提唱されるに至った.

    JNET大腸拡大NBI分類はVessel pattern, Surface patternのカテゴリーからなるType 1,2A,2B,3の4分類に分類される.Type 1は過形成性ポリープ,Type 2Aは腺腫~低異型度癌(Tis),Type 2Bは高異型度癌(Tis/T1a),Type 3は高異型度癌(T1b~)の病理所見に相関する.

    所見の目合わせに関して現在班会議,日本消化器内視鏡学会附置研究会において議論を重ねている段階である.

  • 前畠 裕司, 江﨑 幹宏, 中村 昌太郎, 平橋 美奈子, 植木 隆, 飯田 三雄, 北園 孝成, 松本 主之
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2323-2331
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    目的:家族性大腸腺腫症における結腸全摘・回腸直腸吻合術後の長期的な残存直腸癌発生の危険性を評価することを目的とした.

    方法:結腸全摘・回腸直腸吻合術が行われた自験家族性大腸腺腫症患者27例において,残存直腸癌の累積発生率と臨床病理学的特徴を遡及的に検討した.

    結果:3.0~35.0年(中央値 21.1年)の追跡期間中に残存直腸癌が10例で確認され,30年後の累積発生率は57%と見積もられた.10例中5例で転移を認め,そのうち3例は残存直腸癌の術後再発によって死亡していた.残存直腸癌の発生率は小腸腺腫や網膜色素上皮過形成を有する患者で高い傾向を認めた.また,多変量解析では網膜色素上皮過形成が残存直腸癌発生の有意な危険因子として抽出された.

    結語:結腸全摘・回腸直腸吻合術は家族性大腸腺腫症に対する予防的大腸切除術として妥当ではないと考えられた.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 阿部 雅則
    2016 年 58 巻 11 号 p. 2342
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
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    【背景】世界中で大腸癌の患者数や死亡率が増加しており,予防のための新しい対策が求められている.経口糖尿病薬であるメトホルミンには大腸癌を含む癌の化学予防効果の可能性があるが,メトホルミンを用いた大腸癌の化学予防についての臨床試験は報告されていない.本研究では,腺腫再発のリスクの高い患者におけるメトホルミンの安全性と大腸がん化学予防効果(腺腫・ポリープの再発で評価)について1年間の臨床試験を行った.

    【方法】本研究は多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化第3相試験として行われた.日本の5病院において大腸ポリープまたは腺腫を内視鏡下で切除された非糖尿病成人を対象とした.メトホルミン(250mg/日)投与群もしくはプラセボ投与群に無作為に割り付け,試験開始1年後に大腸内視鏡検査を施行し,腺腫・ポリープの数と発生頻度を解析した.

    【結果】2011年9月1日から2014年12月30日までに大腸腺腫・ポリープに対して内視鏡下切除を行った498人のうち,151人にランダム化を行った(メトホルミン群 79例,プラセボ群 72例).メトホルミン群の71例,プラセボ群の62例が1年後の大腸内視鏡検査を施行した.全ポリープおよび腺腫の発生率はメトホルミン群でプラセボ群に比し有意に低かった.(全ポリープ:メトホルミン群 27/71[38.0%:95%CI 26.7-49.3],プラセボ群 35/62[56.5%:95%CI 44.1-68.8];p=0.034,リスク比0.67[95%CI 0.47-0.97];腺腫:メトホルミン群 22/71[30.6%:95%CI 19.9-41.2],プラセボ群 32/62[51.6%:95%CI 39.2-64.1];p=0.016,リスク比 0.60[95%CI 0.39-0.92]).ポリープ数の中央値はメトホルミン群で0(IQR 0-1),プラセボ群で1(IQR 0-1)であった(p=0.041).腺腫数の中央値はメトホルミン群で0(0-1),プラセボ群0(0-1)であった(p=0.037).有害事象は15例(11%)にみられたが,すべてgrade 1であった.1年間の試験期間中に重篤な有害事象はみられなかった.

    【結論】非糖尿病患者における1年間の低用量メトホルミン投与は安全に行うことができた.低用量メトホルミンはポリペクトミー後の異時性腺腫・ポリープの発生頻度・個数を減少させたことから,メトホルミンは大腸癌の化学予防に有用である可能性が示された.しかし,最終的な結論を得るためにはさらに大規模な長期間の臨床試験が必要である.

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