日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 12 号
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総説
原著
  • 進藤 浩子, 深澤 光晴, 飯嶋 哲也, 高野 伸一, 門倉 信, 高橋 英, 横田 雄大, 廣瀬 純穂, 佐藤 公, 榎本 信幸
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2389-2398
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    【目的】ベンゾジアゼピンを用いた従来のERCP鎮静ではしばしば脱抑制による体動を認める.安定した鎮静を得られる方法としてドロペリドール,フェンタニル,ケタミンを用いた静脈麻酔による鎮静法の安全性と有効性を評価した.

    【方法】対象はERCPの鎮静にミダゾラムとペンタゾシンを用いた従来法群42例とドロペリドール,フェンタニル,ケタミン(DFK法)群17例.評価項目は鎮静関連偶発症および鎮静効果とした.

    【結果】SpO2 90%未満を認めた症例は従来法で4例(10%),DFK法で1例(6%)と有意差は認めなかった.体動により処置継続に支障があった症例は従来法で8例(19%),DFK法で0例とDFK法で良好な鎮静効果を得られる傾向を認めた(p=0.09).

    鎮静困難ハイリスク症例である飲酒習慣を有する21例では,鎮静不良となる症例はDFK群で有意に少なかった(従来法 50% vs DFK法 0%,p=0.02).

    【結論】DFK法は従来法と比較して同等な安全性で施行可能であった.飲酒習慣を有する症例ではDKF法の方が有効な鎮静が得られた.

症例
  • 岡田 有史, 下山 克, 福田 眞作
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2399-2404
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    症例は84歳,女性.2年前から骨粗鬆症に対してミノドロン酸を内服していた.胸部不快感,胸部つかえ感の精査目的に上部消化管内視鏡検査を施行したところ,中部食道に憩室を認め,憩室下縁および,その肛門側に潰瘍を認めた.臨床経過および内視鏡所見よりミノドロン酸による食道潰瘍と考え,ランソプラゾール,アルギン酸ナトリウム内服で治療したところ改善し,現在まで再発を認めていない.ビスホスホネート製剤による食道潰瘍の報告は散見されるが,ミノドロン酸によるもの,食道憩室が関与した報告例はなく,貴重な症例と考えられた.

  • 大藤 和也, 大谷 昌弘, 松田 秀岳, 根本 朋幸, 平松 活志, 須藤 弘之, 大越 忠和, 今村 好章, 中本 安成
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2405-2411
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    症例は73歳,男性.筋力低下と口腔内乾燥症状あり,皮膚筋炎に合併した二次性Sjögren症候群と診断された.低蛋白血症を認めており,α1アンチトリプシンクリアランスと99mTc -human serum albuminシンチにより蛋白漏出性胃腸症と診断した.小腸内視鏡検査にて上部空腸にKerckringひだ上に配列する輪状の多発びらんを認めた.同部からの生検組織では間質浮腫と高度の単核球浸潤及び,空腸粘膜固有層を主体とする毛細血管壁への免疫グロブリンと補体C3の沈着を認めた.皮膚筋炎に合併した二次性Sjögren症候群に発症した蛋白漏出性胃腸症と診断し,約6カ月のステロイド治療により低蛋白血症の改善と空腸びらん面は改善した.小腸粘膜病変と,低蛋白血症の治癒過程を経時的に観察した貴重な症例と考えられたので報告する.

  • 島田 友香里, 吉田 裕幸, 安達 神奈, 井谷 智尚, 三村 純, 橋本 公夫
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2412-2417
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    症例は40歳男性.1カ月前から,食後の嘔吐が出現し改善しないため当科を紹介受診.上部消化管内視鏡で,十二指腸の上十二指腸角に全周性の狭窄を認めたが同部の生検では悪性細胞は証明されず,原因不明のまま他院にて腹腔鏡下胃空腸バイパス術を受けて経過観察としていた.術後3カ月目の内視鏡時に施行した生検で印環細胞癌を認めたため,びまん浸潤型の原発性十二指腸癌と診断した.原因不明の十二指腸狭窄の診療にあたっては,びまん浸潤型を呈する原発性十二指腸癌の存在を念頭におき頻回に生検を試みることやボーリング生検を行うなどして,より多くの組織を採取することが早期診断に繋げるために必要だと思われた.

  • 芹沢 ありさ, 井口 靖弘, 山田 博昭, 工藤 香菜, 井上 俊太郎, 西村 賢, 中山 昇典, 本橋 修, 亀田 陽一
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2418-2423
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    症例1は61歳,女性.右下腹部痛が出現し,CF上,上行結腸に浮腫状に肥厚した粘膜を区域性に認め,送気によっても拡張不良であった.生検にてMALTリンパ腫と診断し,R-CHOP療法を施行し完全奏効となった.

    症例2は66歳,女性.腹痛,下痢が出現し,上行結腸とS状結腸の2カ所に症例1と同様の内視鏡所見,病理結果を示し,R-CHOP療法を施行し部分奏効となった.

    びまん浸潤様大腸原発悪性リンパ腫の内視鏡像は①区域性拡張不良と②びらんを伴う浮腫状粘膜であり,十分な送気と鎮痙剤の使用が病変の拾い上げに有用と考える.

  • 中沢 和之, 太田 有紀, 前北 隆雄, 新垣 直樹, 文野 真樹, 一瀬 雅夫
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2424-2429
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    症例は75歳,男性.便秘で近医を通院中,70歳時,潰瘍性大腸炎と診断され,メサラジンの服用で寛解維持.5年後,再燃を疑い大腸内視鏡検査を施行予定,大腸内視鏡検査前処置服用後に腹痛と腹部膨満を認め,腹部単純レントゲン検査,CT検査でS状結腸捻転症と診断.内視鏡的に整復術を施行した.大腸内視鏡検査前処置服用後にS状結腸捻転症を発症した症例は,これまでになくまれな症例と思われるので報告する.

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手技の解説
  • 安田 一朗, 土井 晋平, 馬淵 正敏, 岩下 拓司, 向井 強
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2432-2438
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    良性胆管狭窄に対する治療は,現在,内視鏡治療が第一選択として広く行われている.従来,狭窄部のバルーン拡張及びプラスチックステント留置が標準的な手技として行われてきたが,難治例に対するcovered self-expandable metallic stent留置の有用性が最近数多く報告され,注目されている.良性胆管狭窄に対するCSEMS留置の適応,手技の実際について解説するとともに,治療成績に関する最近の報告について紹介する.

  • 山本 智支, 乾 和郎, 片野 義明, 三好 広尚
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2439-2448
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    慢性膵炎膵石症例における副乳頭からの治療適応は,頭部主膵管狭窄例,頭部主膵管の高度屈曲による治療困難例,副膵管領域の結石治療が必要な症例,膵管癒合不全などである.内視鏡的副乳頭切開術は,副乳頭を12時~1時方向に副乳頭隆起上縁までを目安に切開する.偶発症としては出血,急性膵炎,穿孔などがあげられる.内視鏡的膵石除去術は,ESWLで膵石が5~6mm大になるまで破砕したものに対して,ガイドワイヤー誘導下にバスケットカテーテルを挿入し,膵管壁を傷つけない程度に軽く開き,愛護的に除去する.偶発症として急性膵炎,バスケット嵌頓,副乳頭浮腫に伴う膵液流出障害などがある.膵管プラスチックステント留置術は,副乳頭切開術未実施例では5Fr,実施例では5Fr~7Frのステントをガイドワイヤー誘導下に留置する.偶発症として,ステント閉塞やステント迷入,膵管の変形などがある.これらの手技について,自験例を中心に解説した.

資料
  • 吉田 尚弘, 土山 寿志, 中西 宏佳, 辻 国広, 冨永 桂, 松永 和大, 辻 重継, 竹村 健一, 山田 真也, 津山 翔, 片柳 和 ...
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2449-2457
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    背景:白色球状外観(white globe appearance;WGA)は,狭帯域光観察併用拡大内視鏡検査(magnifying endoscopy with narrow-band imaging;M-NBI)で認識されることのある小さな白色球状物のことである.WGAは胃癌と低異型度腺腫を鑑別することのできる新しい内視鏡的マーカーであることが報告されている.しかし,胃癌と胃炎を含む非癌病変との鑑別にWGAが有用であるかどうかは不明である.

    方法:胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度を比較するために,内視鏡検査を受ける予定の患者994人を対象とした前向き研究を計画した.すべての患者に対して白色光観察で胃癌が疑われる標的病変の有無を評価し,標的病変を認めた場合にはさらにWGAの有無をM-NBIで評価した.すべての標的病変に対して生検または切除を行い,病理学的に評価した.主要評価項目は胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度,副次評価項目はWGAの胃癌診断における診断能とした.

    結果:標的病変として188病変(156人)が最終的に解析され,70病変が胃癌で118病変が非癌病変であった.WGAの頻度は,胃癌で21.4%(15/70),非癌病変で2.5%(3/118)であり,有意に胃癌で高かった(P<0.001).WGAの胃癌診断における正診割合は69.1%,感度は21.4%,特異度は97.5%であった.

    結論:胃癌におけるWGAの頻度は非癌病変のものに比べて有意に高かった.胃癌診断におけるWGAの特異度は高く,WGAの存在は胃癌診断に有用である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 伊佐山 浩通
    2016 年 58 巻 12 号 p. 2470
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
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    【背景と目的】経皮的胆道ドレナージ(PTBD)は悪性胆道閉塞に対するが失敗した後の標準的な治療であるが,近年では超音波内視鏡ガイド胆道ドレナージ(EUS-BD)が増加しつつある.EUS-BDとPTBDの無作為化比較試験を行った.

    【対象と方法】切除不能中下部悪性胆道閉塞に対するERCP失敗,乳頭到達不能症例を,PTBDとEUS-BDに無作為に割り付けた(EUS-BD34例,PTBD32例)でEUS-BDはAll-in-oneのデバイスを用いてPartially-covered self-expandable metallic stent (C-SEMS)を留置した.韓国の4施設で,2014年10月から2015年3月まで行った.主要評価項目は手技的成功率で非劣性を検証した.副次的評価項目は臨床的成功率,手技関連偶発症,再処置率,患者QOLであった.

    【結果】EUS-BD群とPTBD群の比較では,手技的成功率はで94.1,96.9%であり,非劣性(P =0.008;片側検定97.5%信頼区間-12.7%,非劣性マージン15%)が証明された. 臨床的成功率は87.5,87.1%, (P = 1.00),偶発症発生率は8.8,31.2% (P = 0.022),平均再処置回数は0.34,0.93(P = 0.02)であり,QOLは同等であった.

    【結論】EUS-BDとPTBDは非切除中下部悪性胆道閉塞症例でERCP失敗または乳頭到達不能例において手技的,臨床的成功率,患者QOLにおいて同等の効果を示した.しかしながらEUS-BDは手技関連偶発症率と再処置率がPTBDよりも有意に低かった.Clinical trial registration no: cris.nih.go.kr/KCT0001370.

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