日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 2 号
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症例
  • 小原 佳子, 下立 雄一, 毛利 裕一, 松枝 和宏, 山本 博, 能登原 憲司
    2016 年 58 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.タール便と貧血精査の上部消化管内視鏡にて,胃体上部小彎に4cm大の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.一部で発赤調の不整な陥凹領域を認め,NBI拡大内視鏡観察では表面構造及び微小血管構造にわずかに不整を認めた.超音波内視鏡では固有筋層への浸潤が疑われた.粘膜下腫瘍様の形態を呈する進行胃癌を疑ったが,生検,超音波内視鏡下吸引生検,粘膜切開生検で癌の確診が得られなかった.しかし胃癌の可能性が否定できないこと,出血のリスクが高いことから手術を施行した.病理診断は漿膜下層に至る超高分化型の進行胃癌であった.粘膜下腫瘍様の形態を呈した超高分化型胃癌は報告例がいまだ少なく,貴重な症例と考え報告する.
  • 藤田 欣也, 岡本 安生, 森田 須美春
    2016 年 58 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST,endoscopic sphincterotomy)後の止血が困難であったが,直視鏡によるクリッピング止血術が奏功したEST後出血の2例を経験した.2症例とも総胆管結石除去目的にESTを施行したが,切開後の乳頭より出血を認めた.側視鏡下にスフィンクテロトームによる凝固焼灼術,採石バルーンによる圧迫止血術およびエピネフリンやエタノールの散布・局注による止血術を施行したが,止血困難であった.そこで直視鏡下にクリッピング止血術を施行し止血を得ることに成功した.従来の方法で止血困難なEST後出血に対して,直視鏡によるクリッピング止血術が有効であり,その有用性と問題点を考察した.
  • 工藤 浩, 佐藤 悠太, 中村 香代子, 林 弘賢, 黒木 嘉人
    2016 年 58 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.ERCPで総胆管結石と下部胆管に狭窄像を認め,良性胆管狭窄を合併した総胆管結石症と診断した.胆管狭窄部拡張および総胆管結石治療が必要と判断し,まずplastic stent計3本を経乳頭的に総胆管に留置し,胆管拡張した.約2カ月後にplastic stentを抜去し,狭窄部の拡張を確認後,内視鏡的総胆管結石除去術を施行した.良性胆管狭窄を合併した総胆管結石症に対して複数本のplastic stent留置は,安全な胆管拡張と結石除去術を可能とし有用である.
  • 藤本 崇聡, 田村 公二, 大塚 隆生, 伊達 健治朗, 木村 英世, 松永 壮人, 深浦 啓太, 森 泰寿, 田中 雅夫, 中村 雅史
    2016 年 58 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性.2010年8月に膵頭部膵管内乳頭粘液性腫瘍に対し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術,Child変法再建術を施行した.術後4年目に食後の心窩部痛を認め,当科を受診した.血液生化学検査でアミラーゼ値,リパーゼ値の上昇を認めた.また造影CT検査で残膵の腫大と周囲の脂肪織混濁を認め,急性膵炎(CT Grade1)の診断で緊急入院となった.その際,残膵主膵管内に膵石を認め,さらに手術時に膵空腸吻合部に留置した脱落型膵管チューブが残膵尾側膵管深部に迷入していた.これらに対しショートタイプのダブルバルーン内視鏡を使用し治療を試みた.膵管空腸吻合部の狭窄は認めず,拡張術は行わなかった.バスケット鉗子を用いて膵石の除去ならびにチューブ摘出を完遂しえた.ダブルバルーン内視鏡下での膵石除去と迷入チューブ摘出を同時に完遂できた症例は本邦で初めてであり,文献的考察を加えて報告する.
経験
  • 石井 達也, 三長 孝輔, 小川 智, 多木 未央, 籔内 洋平, 松本 久和, 赤松 拓司, 瀬田 剛史, 上野山 義人, 山下 幸孝
    2016 年 58 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌に対してNiti-S大腸用ステント18mm径6cm長を用いてbridge to surgery(BTS)目的に留置した症例をretrospectiveに検討した.連続12例に施行し,全例で手技成功および臨床症状改善が得られ,経口摂取可能となり手術前後含めて合併症を認めなかった.これまで18mm径Niti-Sステントに関する報告はなく,当院での22mm径Niti-Sステント6cm長を留置した症例(21例)と比較しても有意な差は認めなかった.Niti-Sステントは低Axial Forceのため腸管への負担が少ないが,中でも18mm径は有用性を下げることなく腸管負担をさらに軽減でき,かつ安全である可能性が考えられた.
注目の画像
資料
  • 西澤 俊宏, 鈴木 秀和, 松崎 潤太郎, 金井 隆典, 矢作 直久
    2016 年 58 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】プロポフォールは内視鏡検査においてベンゾジアゼピンに比較して優れた鎮静効果を有する可能性が示唆されている.今回われわれは,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)におけるプロポフォールによる鎮静の安全性と有効性に関するシステマティックレビューを行った.
    【方法】PubMed,Cochrane Library,医学中央雑誌において論文検索を行い,その中から適切な無作為化比較試験を精選した.選択基準を満たした研究データから治療中断を要する体動,ESD1時間後の完全覚醒,低酸素血症および血圧低下の発生率における統合オッズ比を算出した.
    【結果】無作為化比較試験3件(ESD患者298名)が採択された.従来型鎮静剤群に比較して,プロポフォール群の体動発生率とESD1時間後の完全覚醒率の統合オッズ比はそれぞれ0.41(95%信頼区間 0.21-0.81),8.59(95%信頼区間4.29-17.2)で,各研究間の異質性も認めなかった.低酸素血症と血圧低下に関しては,従来型鎮静剤群に比較してプロポフォール群の統合オッズ比は1.13(95%信頼区間0.58-2.21)および0.92(95% CI 0.25-3.41)と両群間に有意差を認めなかった.
    【結論】ESDにおけるプロポフォールによる鎮静はベンゾジアゼピンに比較し,より有効で,合併症リスクは同等であった.
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