日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 3 号
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総説
  • 鴫田 賢次郎, 田中 信治, 林 奈那, 岡 志郎, 茶山 一彰
    2016 年 58 巻 3 号 p. 153-162
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    工藤らにより大腸側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor:LST)の概念が提唱されてから20年以上経過し,その臨床的重要性は世界的にも認められている.2013年7月には,『大腸癌取扱い規約第8版』にその定義が掲載されたが,肉眼型とは異なるニックネーミングであることがポイントである.LSTは,その形態から顆粒型granular typeと非顆粒型non-granular typeに分類され,さらに顆粒型は顆粒均一型homogeneous typeと結節混在型nodular mixed typeに,非顆粒型は平坦隆起型flat elevated typeと偽陥凹型pseudo-depressed typeに亜分類されるが,亜分類ごとに臨床病理学的にも分子病理学的にも差異を認め,治療方針の決定に関わる重要な分類である.しかし,亜分類,特にLST-Gの亜分類が施設間・内視鏡医間で一致しないことも多い.今回,文献をreviewしその現状を明らかにするとともに,結節・顆粒の具体的な大きさによるLST-G亜分類の臨床的意義について,当科のデータを踏まえ解説した.
症例
  • 福居 顕文, 玄 泰行, 橋本 光, 福井 勇人, 稲田 裕, 西村 健, 堅田 和弘, 高木 智久, 内藤 裕二, 伊藤 義人
    2016 年 58 巻 3 号 p. 163-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.胃癌に対しcircular staplerを用いた器械吻合によるRoux-en-Y(以下R-Y)再建術を伴う胃切除後2年目に肝障害が出現し,腹部造影CTで輸入脚の拡張を認めた.ダブルバルーン小腸鏡でR-Y吻合部に閉塞を認め,吻合部閉塞による輸入脚症候群と診断し,内視鏡的バルーン拡張術により閉塞を解除した.器械吻合によるR-Y再建術後吻合部閉塞による輸入脚症候群は慢性的な経過と特徴的な内視鏡所見を認め,また,内視鏡により一期的に閉塞を解除しえた報告は非常に少なく,症例報告する.
  • 細谷 和也, 占野 尚人, 谷口 洋平, 福島 政司, 和田 将弥, 井上 聡子, 鄭 浩柄, 杉之下 与志樹, 猪熊 哲朗, 今井 幸弘
    2016 年 58 巻 3 号 p. 170-175
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.血便を主訴に受診し,大腸内視鏡検査で精査したところ,直腸Rbに2型進行癌,上行結腸に30mm大のlaterally spreading tumor(以下LST)を認めた.直腸癌術前に上行結腸LST病変をESDする方針となり,ESDのため内視鏡で観察した.上行結腸LST病変は著明に肥厚しており,病変の中心部にアニサキスの刺入を認めた.ESD開始するも,線維化著明で,剥離困難であり,中止とした.直腸癌手術とあわせ,回盲部切除術を施行した.病理組織ではLST病変は腺腫であり,粘膜下層の線維化部位には好酸球浸潤が目立ち,アニサキスによる変化と考えられた.
    アニサキス刺入による形態変化が観察された極めて稀な大腸腺腫の1例を経験したので,報告する.
  • 佐々木 綾香, 阿部 晶平, 木下 雅登, 山田 恭孝, 田中 克英, 吉江 智郎, 堀 順子, 佐貫 毅, 黒田 大介, 神澤 真紀
    2016 年 58 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.健診異常に対する精査目的で施行した下部消化管内視鏡検査で,上行結腸に約35mm大の粘膜下腫瘍を認めた.CTで不均一な造影パターンを示し,FDG-PETでは集積亢進を呈したため,GISTなどの腫瘍を疑った.腫瘍に対してボーリング生検を行ったが,病理組織学的診断は得られなかった.今回われわれはスライディングチューブおよびガイドワイヤ補助下に前方斜視型コンベックス型超音波内視鏡を上行結腸に挿入し,粘膜下腫瘍に対しEUS-FNAを施行した.EUS-FNAにて術前診断しえた上行結腸Schwannomaの1例を経験したため報告する.
経験
  • 馬場 洋一郎, 田中 宏樹, 磯野 功明, 向 克巳, 齋藤 知規, 岡野 宏, 佐瀬 友博, 松崎 晋平, 村田 哲也
    2016 年 58 巻 3 号 p. 182-188
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】鉗子形状の違いが組織標本や組織診断に与える影響は明らかではないため,組織学的に良悪性診断困難とされた異型上皮検体においてこれらを検討した.【対象・方法】対象は良悪性診断困難異型上皮と診断された鰐口型を使用した33検体と標準型鉗子を使用した28検体.組織標本の質を面積,挫滅,方向で検討し,診断への影響は経過を追う中で癌との診断に至った検体を比較した.【結果】鰐口型鉗子を使用した組織標本は組織面積が大きく,組織挫滅が少なく,方向が維持され,初回組織診断で癌との診断が困難であった検体は減少した.【結論】生検鉗子形状の違いは組織標本の質や組織診断に影響すると考えられた.
注目の画像
手技の解説
  • 八田 和久, 小池 智幸, 浅野 直喜, 下瀬川 徹
    2016 年 58 巻 3 号 p. 191-200
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    2010年WHO分類が改定され,従来カルチノイドと呼ばれていた病変は,神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)に相当し,大部分がG1に分類される.十二指腸NETは稀な疾患であるが,その診断には,その内視鏡的生理学的特徴の理解とともに,見逃しをしない検査手技の精度が求められる.また,十二指腸NETの治療方針は,ガストリノーマ,乳頭部NETでは外科切除が推奨されるが,それ以外では腫瘍径によるとされている.しかし,20mm以下の非乳頭部NETの治療法選択に関しては,いまだ一定のコンセンサスはない.本稿では,十二指腸NETの現状を述べるとともに,観察手技,診断のポイント,治療について述べる.
資料
  • 平山 慈子, 小田島 慎也, 後藤 修, 山道 信毅, 小野 敏嗣, 新美 惠子, 望月 暁, 今野 真己, 松田 梨恵, 皆月 ちひろ, ...
    2016 年 58 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    <背景>内視鏡による早期胃癌の範囲診断を行う際に,範囲を同定するのが非常に難しい症例が存在する.本研究では,内視鏡的な範囲診断の誤診に寄与する早期胃癌の臨床病理学的特性を明らかにすることを目的とした.
    <対象と方法>当院で内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)を施行した分化型早期胃癌431病変を対象とした.切除標本にて,病変周囲のマーキングと組織学的な腫瘍境界の位置関係を比較することでESD直前の内視鏡的な範囲診断の正誤を判定し,性別,年齢,腫瘍径,腫瘍の局在,周在,深達度,潰瘍瘢痕(UL)の有無,肉眼型,随伴0-IIb成分の有無,優位組織型,未分化癌の混在の有無,組織混在型か否か,NBI拡大観察併用の有無,を解析因子として,範囲診断の誤診寄与因子を解析した.また範囲診断を誤診した症例の内視鏡写真,プレパラートを見直し,誤診の要因について考察した.
    <結果>全体での範囲診断の誤診率は7.4%(32/431病変)だった.多変量解析にて範囲診断の誤診に寄与する因子を解析すると,随伴0-IIb病変,大型病変,組織学的に中分化型腺癌優位な病変が有意な因子として抽出された.プレパラートにて誤診部位を見直すと,32病変中28病変(87.5%)では腫瘍辺縁が平坦だった.32病変中14病変(43.8%)では腫瘍辺縁は中分化型腺癌から成っていた.
    <結論>ESD適応となるような早期胃癌において,随伴0-IIb病変,大型病変,中分化型腺癌は側方進展範囲を誤りやすい.
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